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ACTとCBTの違いとは ― 職場の人材育成における使い分けを考える 

ACTとCBTの違いとは ― 職場の人材育成における使い分けを考える 

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著者

稲里 拓都

著者

稲里 拓都

大学卒業後、大手国内メーカーに入社し、人事業務全般に従事。その後、人材系企業2社で営業マネージャーおよび人事マネージャーを歴任。2024年に株式会社NEWONEに入社し、現在は研修を中心に、人材育成・組織開発のHRパートナーとして活動。新入社員の育成体系構築から管理職主導の組織開発まで幅広く支援。

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CBTは「考え方を整える」、ACTは「感情を抱えながら行動を選ぶ」

社員の成長支援において、不安やストレス、失敗への恐れ、対人関係の悩みなど、ネガティブな感情をどのように扱うかは重要なテーマです。 

こうした感情へのアプローチとして代表的なものに、CBTとACTがあります。CBTは、認知行動療法と呼ばれ、出来事の受け止め方や考え方に着目し、非現実的・非適応的な認知を見直すことで、感情や行動の変化を促す考え方です。 

一方、ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)は、従来の認知行動療法、いわゆるCBTの流れを汲む新しい心理療法であり、第三世代の認知行動療法の一つとされています。ACTでは、不安や迷いを無理に消すことよりも、それらを抱えながら、自分にとって大切な行動を選ぶことを重視します。 

たとえば、CBTでは「一度失敗したら評価が下がる」と考えている社員に対して、「本当にそう言い切れるのか」「別の見方はないか」と考えを整理することで、不安を和らげ、行動しやすくすることを目指します。 

一方、ACTでは、「失敗したらどうしよう」という不安があること自体を否定せず、その不安を抱えながらも、「自分はどのような姿勢で仕事に向き合いたいのか」「まずどの一歩を選ぶのか」を考えていきます。 

つまり、CBTが「考え方を整えることで感情や行動を変える」アプローチだとすれば、ACTは「感情や思考を抱えたまま、価値に沿った行動を選ぶ」アプローチと言えます。 

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使い分けのポイントは、社員がどこで止まっているかを見ること 

CBTとACTのどちらが優れているというよりも、職場の人材育成では、社員がどこで行動を止めているのかによって使い分けることが重要です。 

CBTが有効なのは、社員の中に極端な思い込みや認知の偏りがあり、それによって不安や行動の停滞が起きている場合です。たとえば、「上司に相談するのは迷惑だ」「完璧にできなければ意味がない」「一度注意されたら期待されていない」といった考え方が強い場合には、その考えを一度見直すことが有効です。 

この場合は、「本当にそうだろうか」「他の可能性はないか」「過去に例外はなかったか」と問いかけることで、本人の視野を広げ、より現実的な捉え方を持てるよう支援します。 

一方で、ACTが有効なのは、考え方を整理してもなお、不安や緊張が残る場面です。たとえば、大事な商談、上司への報告、初めてのリーダー経験などでは、どれだけ前向きに捉え直しても不安が消えないことがあります。 

そのような場合に、「不安をなくしてから行動する」のではなく、「不安があるままでも、自分は何を大切にして、どのような一歩を選ぶのか」を考えることがACT的な支援です。 

人事・上司に求められるのは、捉え直しと行動支援を組み合わせること 

職場の育成においては、CBTとACTを対立的に捉える必要はありません。ACTもCBTの流れを汲むアプローチであるため、両者はまったく別物というよりも、社員の状態や支援場面に応じて使い分けるものとして捉えるとよいでしょう。 

たとえば、若手社員が「自分にはこの仕事は無理です」と感じている場合、まずはCBT的に、「本当に無理と言い切れるのか」「どの部分ならできそうか」と考えを整理することができます。 

そのうえで、それでも不安が残る場合には、ACT的に、「不安があること自体は自然だとしたら、その中でも自分が大切にしたい行動は何か」「まずどの一歩なら踏み出せるか」と問いかけることができます。 

人事・育成担当者に求められるのは、社員をただ前向きにさせることではありません。考え方の偏りを整える支援と、ネガティブな感情を抱えながらも行動を選ぶ支援を、状況に応じて使い分けることです。 

正解が見えにくく、変化の大きい時代においては、常に不安をなくしてから行動できるわけではありません。だからこそ、認知を整えるCBTの視点と、感情を抱えながら行動するACTの視点を組み合わせることが、社員の主体性や挑戦を支える重要な土台になるのではないでしょうか。