
株式会社NEWONEの上林です。
最近、お客様とやり取りをする中で、少し変化を感じることがあります。
係長研修、課長代理研修、主任研修など、いわゆる「管理職手前」の層に対する育成ニーズが増えてきていることです。 なぜだろうと考えてみると、企業側に、 「管理職になってからマネジメントを学ぶのでは遅い」 という問題意識が強くなっているのではないかと思います。
今回は、これからの管理職育成について考えてみたいと思います。
管理職への昇格は、大きなトランジションである
立教大学の中原淳教授は、管理職への移行について、それまで個人として成果を出してきた人が、管理する側では「初心者」になるという大きな転換として捉えています。
これは非常に重要な視点だと思います。
営業でトップだった人も、エンジニアとして高い専門性を持つ人も、管理職になれば新しい役割に向き合うことになります。
自分で成果を出すことと、人を通じて成果を出すことは、全く違うからです。
その変化に対して、以前は、課長に昇格した後に「新任管理職研修」を行い、目標管理、部下育成、評価、1on1などを学ぶ形が一般的でした。
しかし、私はこの順番自体を見直す時期に来ていると感じています。
マネジャーの難易度は、確実に上がっている
その背景には、マネジメント環境の変化があります。
コンプライアンスやハラスメントへの意識は高まり、人材不足が続き、転職も一般化しました。
メンバーの価値観やキャリア観も多様になっています。
さらにAIが浸透し、業務の進め方そのものも大きく変わろうとしています。
こうした環境では、「自分が一番仕事ができるから、そのやり方を教える」というマネジメントだけでは通用しません。
一人ひとりの考えを理解しながら、方向性を示し、任せ、育て、チームとして成果を出す。
企業競争力を左右する存在として、現場のマネジャーの重要性はむしろ高まっていると思います。
だからこそ、任命してから育てるのではなく、任命する前から準備する必要があるのです。
管理職手前から、「他者を通じて成果を出す」経験をつくる
管理職手前の層に求められる役割は、企業によって様々です。
「現場の最前線でチームを率い、業績向上と人材育成の両立を実現するリーダー」
「マネジャーを補佐しながら現場運営を支え、チーム成果の最大化を担う実行責任者」
といった定義もあります。
共通しているのは、自分の仕事だけを完遂するのではなく、徐々に「周囲を通じて成果を出す」役割へ移っていることです。
私は、この時期にマネジメント力の土台をつくることが非常に重要だと考えています。
・後輩に仕事を任せてみる
・チームの目標についてメンバーと対話する
・意見の違う人を巻き込みながら仕事を進める
小さくてもよいので、管理職になる前から「他者を通じて物事を成し遂げる」経験を持つ。
これが、その後の管理職への移行を大きく変えるのではないでしょうか。
ただし、「先に教える」だけではうまくいかない
一方で、管理職手前の育成には難しさもあります。
管理職になった後であれば、
「部下に任せられない」
「1on1で何を話せばよいか分からない」
「メンバーをどう動機づければよいか分からない」
など、本人にも具体的な悩みがあります。
だから、学ぶ必要性を感じやすい。
しかし、まだ管理職ではない人に「将来必要だから学びましょう」と言っても、なかなか自分事にはなりません。
ここで重要なのが、体感と内省です。
・実際の職場に近いケースで判断してみる
・メンバー役との対話を経験してみる
・チームを動かそうとして、思ったようにいかない経験をしてみる
そのうえで、「なぜうまくいかなかったのか」「自分はどういうリーダーでありたいのか」を考える。
知識を先取りするだけではなく、マネジメントの難しさと面白さを先に体験することが重要だと思います。
「管理職になりたくない」を変える可能性もある
こうした育成には、もう一つ大きな意味があります。
それは、管理職という仕事への解像度が上がることです。
「管理職は大変そう」
「責任ばかり増えそう」
「自分の仕事ができなくなりそう」
という漠然としたイメージだけでは、管理職になりたいと思いにくいのも当然です。
しかし、実際にリーダーシップを発揮し、周囲を巻き込み、自分一人では出せない成果をつくる経験をすると、見え方が変わります。
「人を通じて成果を出すのは面白い」
「自分にもできるかもしれない」
という手応えが生まれるからです。
さらに、他者を巻き込む力、対話する力、意味づける力、意思決定する力は、AI時代において、より人に求められる能力でもあります。
管理職になるためだけのスキルではなく、これからのビジネスパーソンに必要な力として捉えることができれば、学ぶ意味も変わってくると思います。
管理職になってから育成する時代は終わる
管理職になったその日から、部下はいます。
目標を設定し、仕事を任せ、時には厳しいことも伝えながら、チームとして成果を出すことを求められます。
そこから初めてマネジメントを学ぶのでは、本人にとっても、部下にとっても負荷が大きい。
だからこそ、これからは、
「管理職になったから育てる」のではなく、「管理職になる前から、マネジメントを経験する」 という発想が必要なのではないでしょうか。
「最近の若者は管理職になりたがらない」と嘆く前に、考えたいことがあります。
皆さまの会社では、管理職になる前の人材に、マネジメントのリアルを体験する機会を提供できているでしょうか。
そして、「自分にもできそうだ」「人を通じて成果を出すことは面白い」と、手応えをつかむ機会をつくれているでしょうか。
将来の組織を担うマネジャーを、いつから育て始めるのか。
あらためて、自社の育成について考えてみてはいかがでしょうか。
上林 周平" width="104" height="104">