事例概要
- 課題
- 会社統合時に構築した人事制度を約15年運用し続けたことで、実態との乖離が顕在化していた。
- 事業拡大やM&Aにより多様化が進み、制度と各事業・職種の実態との間にギャップが生じていた。
- 多様な事業・職種の視点を踏まえ、全社最適で制度を設計・合意形成していく必要があった。
- 効果
- 等級・評価・報酬制度に加え育成体系・キャリア設計を再構築し、全社最適の制度設計を実現。
- 第三者の客観的な視点を取り入れることで、制度の妥当性に確信を持ち、説明力が向上した。
- 実績
サービス
人事制度
育成体系
キャリア設計対象
人事
実施概要
2011年の統合時に構築した人事制度を見直し、事業多様化による不整合を解消すべく、等級・評価・報酬制度の刷新に加え、育成体系・キャリア設計を再構築。全社最適と納得感の両立を目指し、戦略人事(HRBP)への転換を見据えた制度・仕組みづくりを支援。
スピーカー
株式会社ローソンエンタテイメント
理事執行役員
コーポレートサービスグループ
人事戦略本部 本部長
兼 HR戦略室 室長
幡山 聡一 様株式会社NEWONE
コンサルティング事業部
マネージャー
芹澤 加奈- 担当者の
こだわり -
本プロジェクトでは、制度としての整合性はもちろんのこと、社員一人ひとりが制度に納得感を持ち、「この会社で成長したい」と思える状態を実現できる仕組みになっているのか、ということにこだわりました。 また、幡山さんをはじめプロジェクトメンバーの皆様が「社員のために」という軸を持ち続け、難しいトレードオフにも真摯に向き合いながら議論を重ねたことで、ローソンエンタテインメント様らしい制度になったと思います。 制度は時代とともに変化していくものですが、今回の設計には現時点での最善と思想を込めています。今後、これらを土台とし、使いながらよりよい制度・仕組みに進化させ続けていただきたいです。
― 人事制度の改定・育成体系、キャリア設計のご支援をさせていただきましたが、これらを見直そうと思われたきっかけや背景について教えてください。
幡山様:当社は2011年に、チケット(プレイガイド)事業の旧ローソンエンターメディア社に、音楽映像ソフトを中心としたエンタメ物販サービス事業の旧HMVジャパン社が合併して誕生した会社です。現在の人事制度は、その合併時のPMI(ポスト・マージ・インテグレーション)において設計されたものを、約15年にわたり運用してきました。
その中で、制度全体に歪みや綻びが生じてきており、現状に適合しきれていないという課題感がありました。特に、事業の拡大やM&Aに伴い、当社の事業ポートフォリオは多様化してきていますが、人事制度は一つの枠組みで運用され続けてきたため、各事業の実態との間にギャップが生まれていました。
本来であれば、業種ごとに報酬水準や評価の考え方は異なるものですが、単一の制度で括っていることで、ある事業にはフィットしていても、別の事業では競合他社と比較した際に報酬水準に差が生じるなど、不整合が見られるようになっていました。こうした点を抜本的に是正したいというのが、大きな背景にありました。
また、毎年のように行われる法改正への対応も重要な要素でした。労働環境や処遇に対する社会的要請は年々高まっており、こうした変化に適切に対応しながら、現代の人事制度として機能するものへと作り替える必要性を感じていました。
― 今回の取り組みで、どのような状態になることを期待していましたか?
幡山様:当社は単一事業ではなく、複数の事業を展開しており、働き方も多様です。そのため人事としては、個別最適ではなく全社最適の視点で制度を設計する必要があります。
さまざまな働き方をしている社員が、それぞれの立場から見ても納得感を持てるような、総合的に満足度の高い制度を目指しました。
今回の改定を通じて、全社員が「自分のこともきちんと見てもらえている」と実感できるような仕組みになればと考えています。

プロジェクトを前に進める推進力と、制度への客観的な担保
― 実際にコンサルティング支援を受けてみた率直なご感想や、感じられた効果があれば教えてください。
幡山様:一番大きかったのは、プロジェクトのペースメイキングをしっかりリードしていただいた点だと思います。人事の事務局メンバーだけで進めていた場合、おそらく最後までやり切ることは難しかったのではないかと感じています。
毎週・毎月のタームで区切りながら、「いつまでに何をやるのか」を明確にしていただき、進捗状況や次に取り組むべきことが常に可視化された状態で進めることができました。議論の中で多少の遅延が発生する場面もありましたが、全体としては確実に前に進んでいるという実感を持ちながら取り組めた点は、大きな効果だったと感じています。
もう一つは、制度そのものに対するアシュアランス(客観的な保証)を得られたことです。設計した人事制度を経営層に説明したり、社員に周知していく際に、「世の中の一般的な水準や制度事例と比較しても見劣りしない内容である」という確信を持てたことは非常に大きかったです。自社だけでは、その妥当性を客観的に証明することは難しい部分もありますが、第三者の視点でしっかりと見ていただき、お墨付きを得られたことで、経営陣や社員に対しても自信を持って説明できるようになりました。この点は非常にありがたかったと感じています。
多様な事業・職種を束ねる“報酬設計”の難しさ
― プロジェクトを進める中で、難しかった点や苦労したことなど、何か印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
幡山様:全体としては比較的スムーズに進んだという感覚がありますが、その中でも特に難しかったのは、やはり報酬制度の設計です。当社は非常に多様な事業・職種を抱えており、営業や物流、旅行代理店事業、店舗運営、商品企画・開発、エンジニア、IT運用など、それぞれ求められる役割や市場水準が異なります。
そうした中で、全社として整合性の取れた報酬水準を設計することは非常に難易度が高く、特に各職種に対してどこまでフィットさせられるかという点については、かなり神経を使いました。プロジェクトメンバーとも時間をかけて議論を重ねながら進めた部分であり、印象に残っています。
また、社内の合意形成については、自分の役割として強く意識していました。私は人事領域の経験が長いわけではないのですが、その分、経営層との調整や社内のコンセンサスを取ることを期待されて現職にアサインされたと認識しています。
毎週毎週、経営幹部と協議しながら課題やタスクをひとつずつ消化していく作業は長い道のりではありましたが、当社はもともと現場発信の提案を受け入れるボトムアップの文化があり、経営もそれに耳を傾ける姿勢があるため、特別な苦労をせずとも合意形成が進みやすい土壌があったことも大きかったと感じています。
芹澤:今回のプロジェクトでは、等級・評価・報酬の人事主要三制度をすべて見直しており、特に報酬の設計については難易度の高い取り組みだったと感じています。全等級を対象に見直しを行ったこともあり、時間をかけてディスカッションを重ねながら進めさせていただきました。
一方で、難易度の高いプロジェクトでありながら他社と比較しても非常にスムーズに進んだという印象があります。その大きな要因は、幡山様をはじめとしたプロジェクトメンバーの推進力と、組織として同じ方向を向いて進めていこうとする姿勢にあったと感じています。
今回のプロジェクトは特に、社内での合意形成や意思決定が非常に重要になります。その点で、幡山様が中心となって経営層との調整や社内の合意形成を進めてくださったことで、非常に進めやすい環境をつくっていただきました。
また、管理職向けの説明会にも参加させていただいたのですが、皆さんから多くの質問が出ていたことも印象的でした。制度は与えられるものとして過ぎ去っていきがちですが、そこにしっかり向き合おうとしてくださる方が多かったのは、作った側としてとてもうれしかったです。
御社は変化に対する適応力が高く、意思決定のスピードも速いという点も印象的でした。こうした組織文化があったからこそ、大きな制度改定でありながらも、スピード感を持って前に進めることができたのだと思います。

人事は“クリエイティブな仕事”である
― これまで様々なご経験をされる中で、人事という役割の面白さや価値をどのように感じていらっしゃいますか?
幡山様:これまで社内でいくつかの職種を経験してきましたが、振り返ると、今の人事の仕事が一番面白いと感じています。自分でも意外なのですが(笑)。正直に言うと、人事に関わる前は、どちらかというとこの仕事は、事務的で手続き中心の仕事という印象を持っていたのですが、実際に携わってみるとまったく違っていました。
人事は、制度や仕組みを通じて組織の在り方を設計していく、非常にクリエイティブな仕事だと感じています。既存のものを粛々と運用するというよりも、組織や人の状態に向き合いながら「どうあるべきか」を考え、ゼロからつくり上げていく側面が強く、そこに面白さがあります。
また、これまで経験してきた業務がすべて活かせるという感覚もあります。店舗運営や商品開発など、さまざまな現場を経験してきたからこそ、それぞれの立場や実態を踏まえて制度を考えることができる。そうした意味で、人事はこれまでのキャリアの集大成のような役割だと感じています。
今回の制度改定のプロジェクトにおいても、「ここまで変えていいのか」と思うほど自由度がありましたが、それだけ人事は組織に大きな影響を与えることができる領域でもあります。この会社だからこそ実現できた部分もあると思いますが、改めて人事という仕事の奥深さと可能性を実感しています。
組織に深く入り込み、最適解をともに設計するパートナー
― 今回、NEWONEにコンサルティングサービスをご依頼いただいた理由や決め手、またご継続いただいている理由について教えてください。
幡山様:最初のきっかけは、総務部長が展示会のイベントで御社を知ったことでした。そこから情報収集を進める中で、NEWONEさんと接点を持たせていただいたのが始まりです。
実際に最初にご一緒したのは、2024年の秋頃に実施したエンゲージメントサーベイでした。その際に印象的だったのは、表面的な提案ではなく、当社の中にしっかり入り込んでいただき、経営陣とのセッションの機会も設けながら、組織の実態を深く理解しようとしてくださった点です。
そのうえで、既存の型を当てはめるのではなく、当社の状況に合わせてゼロから組み立てていこうとされている姿勢を強く感じました。「これは単なるパッケージの提案ではない」と感じられたことが、大きな決め手だったと思います。
そうしたプロセスを経て、「NEWONEさんにお任せすれば大丈夫だろう」と自然に思えるようになり、今回のコンサルティングのご依頼、そして継続的なご支援につながっています。
― 今回導入いただいたコンサルティングサービスは、どのような組織にお勧めしたいですか?
幡山様:事業構造や組織が比較的シンプルな企業であれば、ある程度は自社内で制度や仕組みを設計・運用できるケースも多いと思います。一方で、当社のように事業や職種が多岐にわたる、いわゆる複雑性の高い組織ほど、外部の支援を受ける意義は大きいのではないかと感じています。
組織が複雑になるほど、どうしても議論が各論に寄りやすくなり、「この事業はこうあるべき」「この職種はこうでなければならない」といった個別最適の主張が強くなりがちです。その結果、全体としての最適解を見出すことが難しくなる場面も多いと思います。
そうした中で、第三者の立場から一歩引いて全体を俯瞰し、客観的に整理していただけたことは非常に価値のあるご支援だったと感じています。その視点があったからこそ、最終的には全体としての納得感や合意形成につながり、制度として形にすることができたのだと思います。
人事の本部化とHRBP機能で進める“戦略人事”への転換
― 今後、取り組んでいきたいことや注力していきたい取り組みについて教えてください。
幡山様:3月から組織体制を見直しており、今期はまずその体制づくりに注力していきたいと考えています。人事機能を本部化し、独立した組織として再編するとともに、新たにHR戦略室(HRBP機能)を立ち上げました。
今後は、各事業に対してより踏み込んだ「戦略人事」を実行できる体制を整え、人的資本経営の実践に向けた第一歩となる1年にしたいと考えています。この点については、引き続きご支援もいただきながら進めていきたいです。
また、人事の在り方としても、特定の部門や意思に引っ張られるのではなく、客観的かつ第三者的な視点で組織全体に価値を提供していくことが重要だと考えています。内部統制の観点からも、人事が独立性を持ちながら機能していくことが、企業経営において重要だと感じています。
加えて、人事部門で働くメンバーのキャリア形成にも力を入れていきたいと考えています。今回の組織再編により、これまで以上に多様なポジションが生まれており、人事としての専門性を高めながら上位等級を目指せる環境が整ってきました。
さらに、HRBPとして事業と深く関わる中で、将来的に事業側へのキャリア展開も視野に入れることができるなど、キャリアの選択肢も広がっています。こうした可能性をしっかりと伝え、メンバー一人ひとりが成長実感を持ちながら働くことができる組織にしていきたいと考えています。
― 本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。今後とも何卒よろしくお願いします。