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還暦を過ぎたベテラン社員が、若手社員にAIの使い方を教えてもらっている——。
先日、そんな話を耳にしました。ミドルシニア世代の方々からも、「今の若手の感覚は、自分たちとは本当に違う」という声をよく耳にします。育ってきた時代背景が違うのだから当然といえば当然なのですが、この話を聞いたとき、なんとも言えない感覚を覚えました。
これまで管理職は、経験と勘、そして背中を見せることで部下を育ててきました。しかし今、部下の方が先にAIを使いこなし、それっぽいアウトプットを先に出してしまう場面が、当たり前のように起こり始めています。「教える立場」だったはずの管理職が、教わる側に回る瞬間が増えているのです。
本記事では、AI時代に管理職育成の前提そのものがどう揺らいでいるのかを整理したうえで、それでも管理職にしか担えない役割は何かを、考えていきます。
そもそも「管理職育成」とは何か
管理職育成とは、プレイヤーとして成果を出す力ではなく、部下を通じて成果を出す力、すなわちマネジメント力を育てる取り組みを指します。
従来、この力は主にOJTによって培われてきました。自分自身が現場で積み上げてきた経験値や感覚値を、部下に伝え、背中を見せながら育てる。上司の方が経験も情報量も多いという前提のうえに、この育成モデルは成り立っていました。
しかし今、この前提そのものが静かに崩れ始めているのではないかと感じています。
「教える立場」が崩れる、AI時代特有の歪み
正直に言うと、これからの管理職は「部下の方が先に、それっぽいアウトプットを出してしまう」という現実と向き合わなければなりません。
文章も、資料も、企画のたたき台も、AIを使いこなす部下であれば、驚くほどのスピードで形にしてしまいます。管理職が長年かけて培ってきた「経験に基づく勘所」を、部下がAIというアシスタントを介して先回りしてしまう。これは、これまでの上下関係の前提を揺さぶる出来事です。
その結果、管理職はこれまで以上に難しい仕事を求められることになります。それは、経験値や感覚値のような「人間にしかない良さ」を、言語化して教えなければならないという難しさです。感覚で分かっていたことを、あえて言葉にして伝える。この作業は、従来の背中を見せるだけの育成よりも、はるかに骨が折れます。
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それでも管理職にしか教えられないもの
とはいえ、管理職の存在価値がなくなったわけでは決してありません。
新人や若手であっても、実質的には「AIという最強のアシスタント、あるいはパートナーを持った部下」を抱えていると捉えてみてはどうでしょうか。この場合、管理職に求められる役割も、自然と姿を変えていきます。
それっぽいアウトプットは、AIを使えば誰でも出せる時代になりました。しかし、そのアウトプットを「より良い仕事」に変えるための、仕事の進め方や振り方、優先順位のつけ方、周囲を巻き込む力といった観点では、管理職が教えるべきこと、管理すべきことはまだいくらでも残っています。AIが出す「それっぽい答え」を、実務で通用する「使える答え」に磨き上げる過程にこそ、管理職の経験値が生きてきます。
「アウトプットの精度」から「人としての成長支援」へ
もう一つ、見落としてはならない視点があります。それは、アウトプットの精度ではなく、人としての成長を支えるという役割です。
AIは、それっぽいアウトプットを出すことはできても、部下のスタンスを育てたり、人としての成長を支えたりすることはできません。仕事への向き合い方、困難への向き合い方、人との関わり方——こうした人間的な成長のサポートは、人間にしかできない領域です。
つまり、管理職のバリューの発揮どころは、なくなったのではなく、より明確になり、深化していると捉えることもできるのではないでしょうか。「アウトプットを教える人」から「人を育てる人」へ。この転換を意識できるかどうかが、これからの管理職育成の分かれ目になりそうです。
まとめ
AI時代の管理職が直面しているのは、「部下に抜かれる」という単純な焦りだけではありません。経験に基づく育成モデルの前提が崩れ、これまで感覚で伝えてきたことを言語化する難しさに直面しながらも、仕事の進め方や人としての成長支援という、人間にしか担えない役割が、むしろ明確に浮かび上がってきているのです。
だからこそ今必要なのは、部下より先にAIを使いこなそうと焦ることではなく、「AIというパートナーを持った部下を、どう育てるか」という視点への転換です。管理職育成のあり方も、この転換を前提に見直す時期に来ているのかもしれません。
弊社では、こうした問題意識をもとに、管理職向けの育成プログラムを提供しております。AIとの向き合い方だけでなく、仕事の進め方や部下の成長支援といった、これからの管理職に求められる役割にフォーカスしたプログラムです。
福田 真理奈" width="104" height="104">