
中堅社員に対してキャリア研修を実施すると、研修当日は前向きになり、自分の強みや将来について真剣に語り合う姿が見られます。
しかし、職場に戻ると、研修で決めたアクションが日々の忙しさの中に埋もれてしまう。人事として、「良い時間だったはずなのに、なぜ行動が続かないのか」と感じたことはないでしょうか。
本記事では、中堅社員のキャリア研修が現場での行動につながりにくい理由を、「本人の意識不足」ではなく「行動する余白がない」という構造から捉え直します。
そのうえで、キャリア研修を“やって終わり”にせず、日常の行動変容につなげるための3つの設計視点をメソッドとしてご紹介します。
本記事は、特に以下のような方におすすめです。
・中堅社員向けのキャリア研修を検討・見直しされている人事様
・次期リーダー/管理職候補の育成に課題を感じているご担当者様
本記事における中堅社員とは、若手期を終えてプレイヤーとして一定の経験と成果を出しており、次期リーダー・管理職候補として期待され始める非管理職層(概ね入社4年目以降〜30代半ば)を想定しています。
※本内容は、2026年8月27日実施セミナー「中堅社員向けキャリア研修の限界」の内容をまとめたものです。
なぜ、中堅社員は“キャリアの踊り場”に陥りやすいのか

中堅層は、プレイヤーとして脂が乗る時期であると同時に、これまでの蓄積で対応できる仕事が増えていくため、「前にもやったことがある」という既視感が積み重なりやすくなります。
経験が増えるほど業務をうまく回せるようになり、その既視感がやがて停滞感につながりやすくなっています。成果は出せているものの、成長実感や将来への期待を持ちにくくなっている状態が、「キャリアの踊り場」です。
さらに、この停滞は構造的にも生まれやすくなっています。上司からは「安心して任せられるから」と仕事が集中し、後輩からは「頼りになるから」と相談が集まる。
頼られること自体は喜ばしい一方で、役割や依頼が集中してできる仕事が増えるほど、新しく挑戦する仕事は減っていくという構図に陥りやすいのです。
忙しく走り続けながらも、将来の可能性を描きにくくなる。
これが、多くの中堅社員が抱える“キャリアの踊り場”に陥る正体だと考えられます。
キャリア研修が“行動”につながらない本当の理由
こうした中堅社員に対して、経験の棚卸しやWill・Can・Mustの整理、同年代同士での対話といったキャリア研修を実施すること自体は、決して間違いではありません。

実際、研修当日は本音で語り合い、多くの受講者が前向きな気持ちで会場を後にします。
それにもかかわらず、人事の皆様からは「研修直後は意欲が高まるのに、その後が続かない」という声が多く聞かれます。
ここでよくある解釈が、「本人のキャリアに対する意欲が低いから行動しないのだ」というものです。しかし、私たちが着目したいのはそこではありません。
本当の要因は、キャリアについて考えて行動するための“余白”が、そもそも職場にないという点にあります。研修で決めた新しいアクションは、多くの場合「重要だが緊急ではない」領域に位置づけられます。
日々、期限の迫った仕事や急な依頼に追われる中堅社員にとって、この“重要だが緊急でない”行動は、いつまでも後回しにされてしまうのです。つまり、意欲の問題である以上に、物理的に取り組む余白がないという構造的な問題が横たわっています。
だからこそ、キャリア研修をより効果的なものにするためには、本人のキャリア意欲を高めるだけでなく、「行動が続く仕組み」まで含めて設計することが欠かせません。
では、具体的にはどう設計していけばいいのでしょうか。
研修設計で押さえたい「3つの視点」
本記事では、中堅社員のキャリア研修を“行動”につなげるために、私たちが重要だと考える3つの視点をご紹介します。
1. 余白をつくる視点
キャリアに関する行動を「重要だが緊急でない」まま放置しないために、まずは自分の業務を棚卸しし、
何を減らし、何を変えるのかを考える時間を研修の中に組み込みます。
ありたいキャリアの姿を描いたうえで、「やること」だけでなく「やめること・手放すこと」を自ら決める。
この“決断”のプロセスこそが、キャリア行動に取り組む余白を生み出します。
2. 日常に埋め込む視点
キャリア行動は、まとまった時間を確保して行う特別なものばかりではありません。
まとまった余白が必要なもの(内省や上司との対話など)と、日常業務の中に埋め込めるものの2種類に分けて
捉えることが大切です。
今の仕事の意味を捉え直す、自分の強みを意識して活かすといった行動は、大きな時間を新たに確保しなくても
実践できます。
担当業務そのものは変えられなくても、その“捉え方”や“進め方”を工夫する経験は、
日常の中で十分にキャリア開発につながっていきます。
3. 本人だけに任せない視点
本人の意識が変わり、日常に落とし込む工夫ができたとしても、最後のピースになるのが上司の関わりです。
せっかく生み出した余白に、上司が理解のないまま新たな仕事を積み増してしまっては、
再び元の忙しさに埋もれてしまいかねません。
したがって、1on1や日々の業務支援を通じて、上司が継続的に伴走できる状態をつくることが重要になります。
そして、行動がどれだけ変わったかを可視化し、振り返り続ける仕組みを持つこと、放置して本人任せにしない
ことが、行動の定着を大きく左右します。
まとめ
私たち人事が提供すべきなのは、キャリアを考える“きっかけ”としての単発のイベントではなく、中堅社員が自ら考
え、行動し続けられる環境そのものだと考えます。
研修の中身をどう磨くかはもちろん、「余白を生む業務整理を組み込む、研修前後で行動の変化を測る、上司を巻き込み一緒に伴走する」こうした環境づくりの一環として、研修を位置づけていくことが重要です。
今回ご紹介した3つの視点について、具体的なワーク例や研修プログラムの設計方法、他社事例などもご紹介しております。中堅社員のキャリア施策の見直しにご関心のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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登壇者コメント
人材投資がより効果を求められる中で、「中堅向け」の「キャリア研修」については、その特性ゆえに難しい領域だと感じます。若手ほどまっさらではなく、シニアほど差し迫ってはいない。業務スキル研修ほど得るものが明確ではなく、登用研修ほどわかりやすいメッセージではない。
とはいえ、キャリアプラトーから一歩踏み出して、組織の中核人材として活躍してほしい。そんな意図をもってキャリア研修を行っても行動に繋がりづらいという切なさは、人事の皆様なら感じたことがあるかもしれません。
今回提示した「余白」はあくまでも一つの切り口に過ぎません。従来のキャリア研修では行き詰まりを感じている方、ぜひ一緒に良い方法を探していきましょう。
