最終更新日:

変化に強い人材とは? ACT理論に学ぶ「心理的柔軟性」の鍛え方

変化に強い人材とは? ACT理論に学ぶ「心理的柔軟性」の鍛え方

<a href=稲里 拓都" width="104" height="104">

著者

稲里 拓都

著者

稲里 拓都

大学卒業後、大手国内メーカーに入社し、人事業務全般に従事。その後、人材系企業2社で営業マネージャーおよび人事マネージャーを歴任。2024年に株式会社NEWONEに入社し、現在は研修を中心に、人材育成・組織開発のHRパートナーとして活動。新入社員の育成体系構築から管理職主導の組織開発まで幅広く支援。

NEWONEでは、あらゆる企業のご希望やお悩みにあわせた
多種多様な研修を取り扱っております。

どんな研修があるか見てみる

心理的柔軟性は、ネガティブな感情をなくす力ではない 

変化が激しく、正解が見えにくい時代において、社員には主体的に考え、状況に応じて行動を選択する力が求められています。一方で、実際の職場では、不安や迷い、失敗への恐れなど、ネガティブな感情を抱えながら働いている社員も少なくありません。 

これからの育成において重要なのは、「ネガティブな気持ちをなくすこと」ではなく、「ネガティブな気持ちを抱えながらも、自分にとって大切な行動を選べること」です。 

この考え方は、ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)における「心理的柔軟性」の考え方と重なります。心理的柔軟性とは、不安や緊張、落ち込みなどの感情を無理に消そうとするのではなく、それらを抱えたまま、状況に応じて必要な行動を選択できる力です。 

NEWONEでは、エンゲージメント向上をはじめとした
人・組織の課題解決のヒントとなるセミナーを開催しています。

開催中のセミナーを見てみる

心理的柔軟性を高める6つの要素 

ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)における心理的柔軟性を高めるための6つの観点は、以下の通りです。

  • アクセプタンス
    不安や緊張などの感情を、無理に抑え込んだり消し去ろうとしたりするのではなく、「今、自分の中にそうした感情がある」とありのままに受け止めることです。感情に抵抗すればするほど、かえってその感情に振り回されやすくなるため、まずは存在を認めることが出発点になります。
  • 脱フュージョン
    「自分には無理だ」「失敗したら評価が下がる」といった考えを、動かしがたい事実としてそのまま受け取るのではなく、「今、自分はそう考えている」と一歩引いて捉えることです。思考と自分自身を切り離して眺めることで、思考に支配されずに行動を選べるようになります。
  • 今この瞬間との接触
    過去の失敗や未来への不安に意識を奪われすぎず、今この瞬間に起きていることや、今の自分にできることに注意を向けることです。意識を「今、ここ」に戻すことで、目の前の状況に応じた的確な判断や行動がしやすくなります。
  • 文脈としての自己
    不安や迷いを感じている自分に気づきながらも、それらの感情や思考が自分のすべてではないと捉える視点です。「不安な自分」を、より広い視点から見つめるもう一人の自分がいる、というイメージに近く、感情に飲み込まれにくくなります。
  • 価値
    自分が何を大切にして働きたいのか、どのような姿勢で仕事や人と関わっていきたいのかを明確にすることです。価値は目標とは異なり、常に立ち返ることができる「方向性」であり、行動の拠り所となります。
  • コミットされた行為
    自分にとって大切な価値に沿って、上司に相談する、会議で発言する、顧客に確認するといった具体的な行動を、たとえ不安があっても起こし続けることです。価値に基づいた小さな行動の積み重ねが、心理的柔軟性を実際の成果へとつなげていきます。

人事・上司に求められるのは、感情を扱いながら行動を支えること 

心理的柔軟性の6つの要素は、社員が不安や葛藤を抱えながらも、学び、挑戦し、周囲と関わり続けるための力として捉えることができます。 

だからこそ、人事・育成担当者には、社員を単にポジティブにすることだけでなく、ネガティブな感情との付き合い方を学べる機会を設計することが求められます。 

研修や1on1の中では、「不安を感じること自体は自然である」と扱いながら、「そのうえで、どのような行動を選ぶことが本人の成長や仕事の目的につながるのか」を考える対話が重要です。 

ネガティブな気持ちをなくすことを目指すのではなく、ネガティブな気持ちと共に働ける力を育てること。これからの人材育成において、心理的柔軟性を高める関わりは、社員の主体性や挑戦を支える重要な土台になるのではないでしょうか。