大手部品メーカーZ社様の事例紹介

理念は、人生を前向きに、仕事にやりがいを持って働くための指標20年後も変わらない技(わざ)と義(こころ)の伝承を

大手部品メーカーZ社様

※写真(左から)設備技術センター 川島様 瀬戸様 (株)NEWONE 取締役 葛西 健一郎  代表取締役社長 上林 周平

[導入サービス]
ビジョン浸透プログラム

[実施概要]
所長を含む役職者メンバーで決めた理念・ビジョンを部門全体に浸透することを目的に、午前・午後にパートを分けてビジョン浸透プログラムを実施。午前は、主任、分区長(チームリーダークラス)の25名、午後は、所長、グループリーダー、マネジャーの役職者8名。組織の現状について対話し、個人が大事にしいているポリシーや価値観を共有することで相互理解を深める。また、組織をジブンゴト化し理念・ビジョンについての理解、納得を深める。

理念づくりは、仲間を想う強い信念と意志表明


− 本日はどうぞよろしくお願いします。改めてとなりますが、今回ワークショップを実施させていただいた部門はどのような組織で、どのようなことを行っているのかお伺いできればと思います。

瀬戸様:人数は、だいたい120名程度です。業務内容は、工場内の生産設備・装置の保全、修理、改善や、新設備の導入など設計から立上げをやっている部門になります。また、ユーティリティ供給の運転管理と保全なども行っています。

− 今回、弊社を知ったきっかけを教えてください。

瀬戸様:数年前から、部署内で意識改革的な事を実施していました。しかし、なかなか思うように進まず、「やる気」「前向き」「成長」などのキーワードで、ネット検索で情報収集をする中で、上林さんの記事(http://mag.executive.itmedia.co.jp/executive/series/1337/)に出会い、内容がわかりやすく、すんなりと入って来て、まさに「これやん」と思ったのがきっかけでした。

川島様:今の私たちの組織の状況や、私たちが感じている問題意識である「もっと一人ひとりが自律的に、主体的に行動してもらいたい」という課題に対して、職場でどうすればよいのか、その解決策についてわかりやすく書かれてありました。過去、何度か人材育成のセミナーを受けてみたことはあるのですが、抽象的なお話が多いなと感じました。しかし、上林さんの書いた記事は、自分たちが思っている問題に対して、現場に近い視点で具体的に、かつ一番的確に書かれてあり、インターネット上ではありますが、助言いただけたことが非常に大きかったです。

− ありがとうございます。以前から、意識改革に取り組んでいたとのことですが、今回、理念・ビジョンをつくり、浸透しようとした理由や、背景にはどんな課題があったのでしょうか?

瀬戸様:5、6年くらい前になりますが、世の中の情勢が厳しい状況だったこともあり、コストや人員、工数削減が求められ、少ない人数で業務を回すことが必要でした。そこで、どうやったら少ない人数で、同じパフォーマンスを出せるのかといった話し合いや意識改革をしてきました。最近では景気も回復しいろんな施策も増え人が足りない状況になっています。世の中の情勢や人が変わることにより方針や目標が中期的に変化します。そんな変化があったとしても、「ブレない」何かが必要と考えました。その「ブレない」何かをいろいろ考え議論した結果「将来、強い設技センターをつくっていきたい」「今よりも強くしたい」という想いが明確になり、そして、そうなるためには、マインド的なところを強くして、技(わざ)と合体していくこと。また、ほっといても人が育っていくような風土をつくっていきたいということを話し合い 理念・ビジョンを決めることになりました。 正直、振り回されている感が自分の中ではあり、そんな状況で意識改革はできない、どんな状況になっても変わらない、ブレないものが欲しいという強い想いがあったことが、理念にこだわってきた理由の一つです。

川島様:景気が悪くなると人員削減され、新卒採用も減ったりします。人手が足りない苦しい中で仕事をすることになる。そうなると、我々は設備技術を専門としているが、年齢バランスが崩れ人材育成の環境にも悪影響が出てきます。そんな中でも、その人たちが将来、仕事にやりがいを持って、モチベーション高く仕事をしてもらいたいと思っています。そういう仲間意識が、元々我々にはあり、景気に左右されたり、会社に振り回されないためにも、我々の信念を打ち出して、意志を表明するということが、理念をつくる元々の始まりになります。大きな変化があろうが、人生を最後まで前向きに生きられるという想いで、この理念をつくりました。

− この「一人ひとりが技(わざ)と義(こころ)を磨き、たのしみ続ける集団」という理念は、瀬戸様、川島様を中心に、どんな人たちで、どのようにつくられたのでしょうか?

川島様:午後のワークショップに参加した、所長、グループリーダー、マネジャーの役職者8名でつくりました。期間は、だいたい昨年の9月から年末くらいにかけて約3ヶ月かかりました。やり方は、まず理念をつくる目的でもある“強い設技センター”とは、どんな姿なのかという発散から始まりました。次に、具体的にこれから海外の仕事も増えるので、こういう仕事、こんな人間が必要だろうというようなことから入っていきました。議論が進むと、だんだん形ができてきて、行きついたところは、「人の考え方」とか、「仕事に対する向き合い方」に着地していきました。では、その仕事の向き合い方とは、具体的にどんな人間なのかをさらに掘り下げていき、道徳心であったり、損得勘定なしに与えられた使命を遂行できる人であったりと、より具体的にしていくことで、フレーズがどんどん出てきて、「一人ひとりが技(わざ)と義(こころ)を磨き、たのしみ続ける集団」という理念が生まれました。
技(わざ)は、技術のこと。義(こころ)は、普通ハートの心(こころ)を書きますが、あえて「義」と書かせていただいています。これは、先程道徳という言葉もありましたが、正義の「義」なんです。今の世の中、コンプライアンスがすごく大切だと思っています。ウソとかごまかしというのは、我々の中では絶対あってはいけないし、心の持ち方として正しくないと思っています。「たのしみ」という言葉は、最初、違和感あったのですが、固い理念だけ打ち出しても、現場の人たちの心には伝わらないのではないか、希望や夢のような将来の明るいニュアンスがあった方がいいのではないかと思いました。「たのしみ」という言葉があることで、分区員が希望を持てるんじゃないかと思い、「たのしみ」という言葉を込めさせていただきました。

瀬戸様:言葉には、一つひとつこだわってつくりました。「集団」という言葉は、あまりいい表現ではないのかもしれません。「組織」という言い方もありますが、そうすると、我々の中ではどうしても固くなる印象があり、「集団」の方がしっくり来たので、「たのしみ続ける集団」という言葉にしました。8名のメンバーで意見を出しながらつくっていったのですが、言葉へのこだわりもあり、漢字の意味を調べたり、時にはもめながら(笑)この理念をつくっていきました。

理念浸透の難しさとは?


− 理念ができてから、今回のワークショップの実施に至るまでには、どのようなやり取りがあったのでしょうか?

瀬戸様:先程もお話しましたが、インターネットで上林さんの記事を見つけて、すぐに所長の大野に見せました。いいね!とは言ってもらえたものの、すぐに何かお願いするという段階でもなかったのです。

川島様:実は、理念ができて、まずは各現場に説明に行きました。説明に行って、みんながやっと納得してくれたと思ったのですが、アンケートを取ったら、びっくりするような回答が出てきました。理念よりも、もっと深い問題があることが、だんだんわかってきたのです。その意見を、すぐに吸い上げたとしても、我々が変わらなければ何も変わらないということに気づいていたので、すぐに現場に行動指針を出しました。それに対して、またアンケートを取らせていただき、若干、満足度が上がってきて、次の手をどうするかという段階になり、NEWONEさんに、理念浸透のワークショップをお願いさせていただきました。
また、第三者から客観的に我々を見ていただき、これまでやってきたことが本当に正しかったのかを確かめたかったことと、さらに一歩、足を前に踏み出すきっかけになればと思い、お願いさせていただきました。

− ありがとうございます。今回、リーダークラスと理念をつくった役職者を含めて、午前と午後に分けてワークショップを行ったのはなぜでしょうか?

瀬戸様:いろいろ我々の中でも意見が分かれ、現場のリーダーとなる主任、分区長だけでもいいという話もあったのですが、私は、役職者もなんとなくバラバラ感があり違和感を感じていて、役職者も参加してもらう流れになりました。

川島様:丸1日や2日間、もしくは3ヶ月程の時間をかけてやる方法もあるのですが、我々が本気を出して、前に進めなければならないことなので、他人任せにならないよう、1日に集中させていただきました。例えば、3ヶ月でお願いした場合、“また、3ヶ月後にNEWONEさんに来てもらいやっていただける”と思った途端、他人任せになり気が緩むことを、私自身も気にしていたことでもあったため、このような形にさせていただきました。

− なるほど。当事者意識を自分たちは持ち続けるという意志を、今回はすごく大事にされたということですね。ワークショップを実施してみて、いかがでしたでしょうか?先程、終えたばかりですが、率直な感想をお聞かせください。

瀬戸様:私と川島も受講者として参加しましたので、実施するまでどんな内容かはわかりませんでした。打ち合わせでは、上林さんと葛西さんにこちらの想いをお伝えさせていただき、内容に関してはお任せしました。これまで他に色々な研修を受けてきましたが、満足のいく内容だったと感じています。結構、「ガツン」と言ってもらえたということが印象的で、当事者間ではなかなか言えないことを言っていただけたことが良かったなと思っています。半日に凝縮したこともあり、時間が足りず、もう少し議論したいワークもありましたが、総じて良かったと思っています。

川島様:私は課題が見えたことが良かったと思っています。我々の問題がわかったことは、大きいです。役職者がバラバラなのではないかというお言葉をいただき、改めて考えを共有する事が大切だと痛感しました。

− 課題が明確になったとのことですが、これから、職場に戻り理念浸透を進めていく上で、難しいと感じる点は何でしょうか?

瀬戸様:役職者の中で言うと、8名全員が同じスタンスを取るということが難しいなと思っています。これから、理念を具体的な行動に落とし込んでいくことをやっていかなければならないのですが、それをやったところで、8名がぐっと一つになるのかというと、まだそういうイメージがわいていないことです。

川島様:これから進めていくことで、バラバラだったところから距離は近づいていくと思いますが、満足のいくところまで到達するかどうかは正直、今のところはわからないです。特に職人畑というか、技術畑で長年やってきた我々にとっては、急に人を動かしたり、マインドを育成するということは、難しいのではないかと思っています。

瀬戸様:20〜30年先の将来を見ている活動なので、先の少ない我々には時間があまりありません。焦りもあるかもしれない。ただ少しでも将来の姿に近づけるために何かを残していきたい、後輩たちに何かを託していきたいという想いで、今もがいています。意識改革を進めていくにあたり、所長は我々の想いを感じてくれているのか、自身の想いなのか、結構後押ししてくれます。後ろ盾があるという安心感や心強さがあります。所長の存在がなかったら、我々もここまで動けたかはわからないです。

− なるほど。変革推進していく上では、トップのコミットメントと後押しが、とても大事なポイントになりますね。

川島様:一般職と総合職とでは、見ている方向が全然違います。総合職の方は、ここにずっといる訳ではなく、転勤をしながら上にあがっていく人たちなので、この理念の話が、なかなか自分事につながらない、という難しさがあります。

瀬戸様:上の役職者たちを気にせず、我々だけでやろうと言っても誰も話を聞かないし、ついてきません。上がああなのに、何で俺らだけ?となる。そういう意味で、役職者には、変革していく気概を持って欲しいなと思っています。


※写真(左)設備技術センター 所長 大野様

技術伝承に本当に必要なこととは?


− 今回実施した理念浸透のワークショップを、他の組織とか会社に紹介するとしたら、どんな組織にお勧めしたいですか?

川島様:資格取得や技能教育はある程度までは育成に効果があります、しかし中堅クラス以上の人材が伸び悩んでいるような会社さんなどは人の価値観やモチベーションなどを大事にして、そこから技術をつなげていくような事が大切ではないかと思っています。技術は教えているけど中々伝わらないとか、伝承がうまくできていない会社ですかね。

− おっしゃる通り、技術伝承に課題を抱えている企業は多いです。これまでのご経験から、技術伝承には、仕事への向き合い方など、人のマインドだったりスタンスだったりが大事だと思われたわけですね。

川島様:最近、わかったことなのですが、理念とか信念、技術もそうですが、ある程度年齢構成のバランスが取れてないと、うまく伝わらないんですよね。50歳の人と20歳の人とでは、物理的に物を教えることは可能ですが、気持ちの部分でつながらない面があったりします。技術の面でも、ギャップがあり過ぎると、背中が遠すぎて見えないということがあります。我々の部門も、最近は、新卒の方も毎年入ってくるようになりましたが、以前は10年くらい入ってこない時もあり、年齢層にバラつきがあります。入社してから2、3年は、教育システムで人が育つのですが、3年目以降は、複合的に物事を考える力が必要になってきます。そうした時、マニュアルだけでは対応しきれなくなる。仕事に対する向き合い方とか、マインドの部分がとても大事になってきます。そこがあって技術の面がついてくる。そこをやらないで、技術だけやってもうまくいかないです。

− 今後の組織の方向性や、このような取り組みを行っていきたいなど、今後の展望について教えてください。

瀬戸様:しばらくは、「一人ひとりが技(わざ)と義(こころ)を磨き、たのしみ続ける集団」という理念を各々が腹落ちし、行動に移すということに精いっぱいになるかなと思います。今取り組んでいることは、3年後、5年後に効果が出るという話ではなく、20年後や30年後に入ってきた新入社員が、職場の雰囲気に引っ張られ、自然に当たり前のようにこの理念が腹落ちし、このような状態になっていることを目指しています。

川島様:理念である「一人ひとりが技(わざ)と義(こころ)を磨き、たのしみ続ける集団」と目的である「強い設技センター」を目指し、各個が自分の理念に落とし込み行動に移せる環境をつくっていきたいと思います。

− NEWONEも、貴社の発展に貢献できるよう邁進していきたいと思っています。今後ともよろしくお願いいたします。本日は、貴重なお話をお伺いさせていただき、ありがとうございました。

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