事例概要
- 会社名
-
カゴメ株式会社
https://www.kagome.co.jp/ - 業界
- 食品・農林水産・印刷・紙メーカー
- 従業員規模
- 2,500~4,999名
課題 | ・チームの心理的安全性を高めるために効果的な手法を見出したい ・組織体制が変更となったため、相互理解を深めたい |
効果 | ・チームの関係性に課題を感じているチームが参加し、「対話」のきっかけをつかむことが出来た ・チームメンバーがお互いを理解したうえでチーム運営に取り組めるようになった |
[サービス]
・対話実践プログラム
[対象]
・手挙げ式
[実施概要]
エンゲージメントの高い職場をつくるために、現場の心理的安全性を高める具体策として「よりよいチームづくりのための対話実践プログラム」を手挙げ式で実施。チームの状況に合わせて初級編と中級編に分け、1開催半年間のプログラム(初回説明会、中間フォロー、職場実践)を実施。
[スピーカー]
カゴメ株式会社
東京本社人事部
大原 麻友美様
茨城工場品質管理課
木野 裕子様
財務経理部IRグループ
谷口 弘晃様
株式会社NEWONE
HRパートナー
井手口 理緒
※上記所属部署はインタビュー当時(2024年2月)のものです
― 今回、主にリーダークラスの方々を対象に、よりよいチームづくりのための対話実践プログラムを実施しようと思った背景、理由について教えてください。
大原様:当社では数年前から、「組織に心理的安全性が浸透していること」が大切であることを、経営のトップから繰り返しお伝えしてきました。そのため、従業員の多くは心理的安全性という言葉は認識している状態にありました。一方で、心理的安全性の実感値について従業員アンケートを取ったところ、管理職以上は心理的安全性が高いと感じているものの、担当職層はそこまで高いと感じておらず、心理的安全性を感じる度合いにギャップがあることが見えてきました。人事部としては、誰もが心理的安全性が高いと感じられる組織を目指していきたい、そしてその先に「挑戦する風土」をつくりたいという想いがありました。しかしながら、各組織の職場では「心理的安全性」を高めるために具体的に何をすれば良いのか明確なアイディアがない状態なのではないか、と感じていました。
そこで、チームをより良くするために一人ひとりが何をすべきか、何ができるのかを職場の皆で考えながら実践するプログラムとしてYTJ(よりよいチームづくりのための対話実践プログラム)を企画しました。まずは職場での対話のきっかけをつくりたいという想いが強くありました。当初、このプログラムは管理職向けに企画しようとしたのですが、チームのために何かしたいと思う方なら誰でも参加できるように管理職・担当職関係なく、誰でもリーダーにとして手を挙げて参加できる形式で実施しました。
職場で対話型のコミュニケーションができることを目指した
― 本プログラムを通じて、組織がどのような状態になることを期待されましたか?
大原様:現場のチーム内で「対話」が行われていることを目指しました。普段、業務を進める中で、議論して共通点を見つけ収束していくことには慣れている方が多いかと思います。一方、「対話」は、お互いの考えや背景を共有し、必ずしも収束に至らないかもしれませんが、怖がらずに自分の意見をその場に出し、違いを認め合うコミュニケーションです。このような対話を通じて、チームメンバーがお互いの価値観に興味を持ち、認め合うことでよりよいチームづくりができればと思いました。対話を促進することが、心理的安全性を高め、最終的にはイノベーションや成果創出につながると考えています。まずは、「対話っておもしろい」と感じていただき、仕事を楽しくするためのきっかけになればと思いました。特にチームリーダーとなる方々には、組織風土をより良くする観点で学びが得られる機会にしたいと思いました。
プログラムが終わっても、チームで「対話」を継続している
― 2022年からこれまで半年のプログラムを計3回、職場での実践に注力して実施してきましたが、率直なご感想や感じられた効果があれば教えてください。
大原様:当初はプログラムに参加したいと思って手を挙げてくださる方が少ないのではないかと心配していたのですが、実際は1回目のプログラム実施時には50チームほどから手が挙がり、現在では全社の約20%のチームが参加したことがある状態になっています。私が思っていた以上に、よりよいチームづくりについて興味関心がある方や問題意識を持っている方がたくさんいることがわかり、それがポジティブな気づきとなり励みになりました。また、一口によりよいチームづくりをしようと言っても、チームの置かれている状況や課題がそれぞれ違うことが見えてきました。例えば、対話しようと言うと、「いいね、おもしろいね」とスムーズに進むチームもあれば、「何それ、やる意味あるの?時間がないよ」というチームもあり、そもそも対話を始めることにハードルがあるチームもあります。リーダーが躓くポイントも違いますし、チームによって課題が異なるとわかったことが良い気づきになりました。
効果としては、サーベイの結果がすべてではないですが、このプログラムに参加したチームのエンゲージメントサーベイのスコアは上がっていることが多いです。プログラムが終わった後も継続して週次のミーティングで対話を行っているチームもあり、エンゲージメントが高まっている実感が得られているチームが増えていると感じます。このプログラムを通じて、対話型のコミュニケーションを継続しているチームがあることが効果の一つだと思います。
ツールがあることで、うまく最初の一歩を踏み出せた
― 本プログラムを実際に木野さんと谷口さんに受講いただき、職場実践もやっていただきましたが、受けてみた感想につい教えてください。
木野様:私たちの職場は日頃のコミュニケーションは取れているのですが、これまで職場全体の課題やよりよい姿について話し合う機会がほとんどありませんでした。シャイな方も多く対話がうまくできるか不安もありましたが、女性も多いことから「オバケ」という対話ツールのイラストを見て乗り気になる方もいました。また、「キックオフ」では、職場の理想をゼロから考えるのは難しいと思うのですが、まずは昔の良かったチームや職場について話し合い、選択式でどれが良いか選ぶというやり方が、チームづくりの初心者にとってはすごく自然に入っていけるので非常に進めやすかったです。
谷口様:私が所属するIRグループは少人数で3人の部署となります。昨年の10月に1名メンバーの入れ替わりがありました。3人のチームだと1名入れ替わっただけでも影響が大きいので、お互いをよく知りコミュニケーションを良くしていこうという背景で初級編のプログラムに参加しました。まずは、対話のきっかけをつくることが目的だったのですが、こういったプログラムがありツールを活用することで、うまく最初の一歩を踏み出すことができました。
意見を言わない人の声を拾うことができた
― 実際に職場で実践してみて良かったことや難しかったこと、チームの変化など印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
木野様:私たちのチームは8名いるのですが、日頃あまり自分の意見を言わない方の声を拾えたということが一番良かったことです。仕事が忙しい時に、誰に頼んで良いのかわからないといった声が出てきたのですが、こういった対話の機会がなければ気づかず過ごしていたと思います。忙しい時は遠慮しないで頼んでいいよという雰囲気がチーム内に出てきて、仕事が頼みやすくなったとおっしゃっていたので、対話を実践して本当に良かったです。また、担当や役割がしっかり決まっていたのですが、それを柔軟に変えていこうよという意見が出てから、以前よりお互いの状況をよく見られるようになったという変化も出てきています。
難しかった点というか今後の課題として、一人ひとり違って良いという違いを認めることはできたのですが、違いがある中で同じチームとしてどのように進めていこうかなと模索しているところです。私自身の課題としては、もっとファシリテーションのスキルを身につけたいと感じました。メンバーが話すエピソードをどう広げていくのかが、うまくできたりできなかったりするので本を読んで学んでいます。実践を経て自身の課題や目標が得られたことは良かったです。
谷口様:私は初級コースなので、「カルテ」の診断結果をもとに対話を行いました。その中で、これまでの人生で印象に残っていることを3つか4つ挙げて、なぜそれを選んだかを話すという課題がすごく良かったです。初回の対話をやる直前にメンバーにお願いしたのですが、直前だったことが良かったと思っています。というのも、前もって時間があると考え込み過ぎてしまい無難になってしまいますが、ファーストインプレッションで書いたものを持ち寄ると、人によっては業務中心だったり、逆にプライベート寄りだったりと違いが出やすいと思いました。どちらが望ましいというわけではなく、なぜそれを取り上げたのか、背景を聞くと対話が広がり相互理解が深まったと思います。お互いの背景を知ることで今後何か行動を起こした時に、何を大切にしている人なのかがわかるのでコミュニケ-ションは取りやすくなると思います。
お互いの背景や考えを共有できる「場」があること
― 今回取り組んでみて、チームづくりやエンゲージメント向上において、何が一番重要なポイントだと思われましたか?
木野様:思っていることをオープンにできる場があることです。淡々と業務をこなしているだけでは見えてこない背景や考えを理解できる場が重要だと思います。1on1の個別でもチーム全体でも自分の思っていることを出せる場があることが大事だと思います。
谷口様:チームが目指している方向性の共通認識を持つことです。私のチームのIRであれば投資家や株主とのコミュニケーションが役割になってくるのですが、コミュニケーションを通して相手や社会にどういった価値を提供するのかという認識が揃っていることです。その上で、お互いの“違い”を理解することがすごく大事になってきます。人それぞれ個性や強みがあるので、その持ち味を認め合い活かすことが重要なポイントだと思います。
大原様:リーダーが主体的であることが重要なポイントだと思っています。小さな一歩で構わないので、リーダーがチームのために想いを持って行動することです。人事としては、そういったリーダーの想いの火種を消さずに応援することが大切だと思います。また、事務局である私自身が本音で本気で向き合い推進していくことが大事だと思っています。
― 今回、NEWONEにお任せ頂いた理由、決め手について教えてください。
大原様:NEWONEさんには、これまで当社の研修を数年に渡ってお願いしている経緯もあり、カゴメの課題感を理解していただいています。今回のプログラムで活用したツールについては、まず人事部で体験させていただいたのですが、非常にわかりやすく職場での実践イメージが持てました。また、私たちの課題感や何を提供したいのかをしっかり聞いていただいたうえで、プログラムを柔軟に設計いただける点もご依頼するにあたって重要な決め手となりました。
― 本プログラムはどのような組織・チームにお勧めしたいですか?
大原様:3つありまして、1つ目が組織体制やメンバーが変更になったチーム、2つ目が組織やチームの課題、方向性について本音で話し合いたいと考えているチーム、3つ目が仕事を楽しく自分らしくやりたいと思っている人がいるチームです。
木野様:私が所属している部門は、工場で出来上がった製品の分析を行っています。昔からある部門で、これからも大きく役割は変わらないため、ややマンネリを感じやすい傾向があります。そういった環境の中で、もっとやりがいを持って働きたいと思っている人がいるチーム、メンバーにやりがいを持ってほしいと思っているリーダーにはお勧めだと思います。
谷口様:先程大原さんも挙げていましたが、私が所属しているチームのようにメンバーが変更になったチームには良いと思います。自分のことを伝えるきっかけにもなるし、お互いの背景や大切にしていることを知って、円滑なコミュニケーションにつなげることができると思います。
好事例を集め、カゴメ全体の「知」として共有していきたい
― 今後、貴社が注力していきたいことや取り組でいきたいことについて教えてください。
大原様:人事部としては各部門やチームに、さらに寄り添って伴走していきたいと思っています。そもそもどのプログラムを選んだら良いのかわからない、自分のチームの状況が良いのか悪いのか判断できないなど、現場のお困りごとがあれば課題の特定やプログラムの選び方など、一緒に考えるところから支援していきたいです。また、今回実施したプログラムも継続して実施していきたいと思っています。現在手挙げ型で感度の高いリーダーの方に参加していただいていますが、今後は各職場の方ともっとコミュニケーションを取って、職場に応じた課題解決のお役に立ちたいと考えています。うまくいった事例を集めて、カゴメ全体の知として共有していきたいと思っています。
― 本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。今後とも何卒よろしくお願いします。
◆ブログラムの全体像
◆受講者アンケート(一部抜粋)
・相互理解につながり、職場の問題点にも気づき、施策を皆で立てやすかった。ひいては活発な意見交換ができ、結果的に心理的安全性のある職場に近づくと思った
・普段の仕事の中では話しづらい個人の考え方や仕事への気持ちを知ることができ、グループの一体感につながった
・元々お互い理解し合える関係性であったが、改めてツールを使って意見を聞くことで、新たな一面も知ることが出来たしコミュニケーションも活性化した
・わかっているつもりでも「カルテ」をやってみることで、その人の考え方やアプローチの仕方がわかるため相互理解につながった
・最後の「キックオフ」では、自分たちの理想とするチームのスローガンを決定でき、1ヶ月経過した現在も、そのことを意識した行動を各自がとれていると感じます
・「オバケ」では、チームの抱える問題について、みんなで共通認識を持つことができた
・各メンバーの根っこにある価値観を語り合うことができ非常に良かった