事例概要
- 課題
会社規模が大きくなり、受け入れる側の社員が教えたら良いと思うことと、中途入社者が知りたいと思うことにギャップが生まれてきていた。現場任せのオンボーディングに限界を感じており、会社としてオンボーディングプログラムを作り指針を示す必要があった。
- 効果
現場の選抜メンバーとともに課題を議論してオンボーディング施策を決めていく形を取ることで、現場の納得感が高いプログラムが作れた。
- 実績
導入サービス
コンサルティング
(中途採用者オンボーディングプログラムプロジェクト)実施概要
中途入社者のエンゲージメントを高めることを目的に、オンボーディングプログラム設計のプロジェクトを開始。選抜されたプロジェクトメンバーと共に、約3ヶ月計6回のミーティングを行い、オンボーディングプログラム設計のコンサルティングを提供。
― 今回、中途入社者を対象にオンボーディングプログラムを作成しようと思った背景、理由について教えてください。
香野様:私が当社に入社した2012年は、まだ30名規模の会社だったので、新しい社員が入社すると、明文化されていないカルチャーについて丁寧に教えてくれる人がいました。そのおかげで、ベンチャー企業ならではの大変さはあったものの、スムーズに会社に馴染んでいくことができました。しかし、今では会社が成長し、社員数も150名程度に増え、業務内容も細分化しています。その結果、新しい社員が入社しても会社全体を把握することが難しくなっています。何をどこまで教えればうまく馴染んでいけるのか、受け入れる側が教えたら良いと思うことと、入社してきた方が本当に知りたいことにギャップが生じていると感じています。わからないことがあった時に誰に聞けば良いのか、他部署に相談して良いのかなど、業務マニュアルには書かれていないことを知りたいケースが多いです。会社の規模が大きくなると情報伝達が難しくなり、さらにコロナ禍で在宅勤務が定着したことで、コミュニケーションの難易度が高まりました。この状況下で、新たに入社した方が自然に会社に馴染んで、一緒に成果を出していこうという状態になることは困難です。
そこで、今回具体的な施策を導入していきたいと思い、経営陣と協議を行って中途入社者のオンボーディングプログラムを作成することになりました。
武藤様:人事部門として、中途の方が入社した時に事務的な説明や研修を提供しています。しかし、職場への配属後は、現場にお任せで十分なフォローアップができていない課題がありました。今回、オンボーディングプログラムを作成し定着させることで、社を挙げて中途入社者を支援する取り組みができればと思いプロジェクトを立ち上げました。
オンボーディングの重要性について理解が深まった
― 約3ヶ月間、計6回に渡ってコンサルティングを実施させていただき、オンボーディングプログラムの企画を一緒に作成させていただきましたが、実際にやってみた率直なご感想について教えてください。
香野様:プロジェクトが始まった当初は、そもそもオンボーディングとは何か、その重要性について関係者全員が十分理解しているわけではありませんでした。オンボーディングプログラムの作成に、人や時間を投資する必要があるのかと疑問や不安がある人もいる中でスタートしました。しかし、このプロジェクトを通じて、我々がこれまで中途入社者のオンボーディングをあまり意識しなくとも受け入れをうまくやってこられたこと、そして、これから先同じやり方で本当に良いのだろうか?について議論できたことは非常に有意義でした。会社としてオンボーディングの必要性について、改めて理解を深める機会になったと思います。森さんの気づかせる姿勢とファシリテーションも、私たちにとって大いに助けとなりました。
また、今回のプロジェクトは私と武藤と他4人の選抜メンバーがいて、計6人でオンボーディングプログラム作成に取り組みました。森さんが、毎回プロジェクトメンバーと事務局双方向けの会議を設け、予想される課題や論点になりそうな箇所を事前に整理してくださいました。それが非常にやりやすかったですし、良い経験になりました。毎回、入念に準備してくださったおかげで、スムーズに進行できたことは非常に評価できる点だと思います。
武藤様:はじめは意見が分かれる箇所や、うまく着地しない部分が出てくると予想していました。ですが、事前の事務局とのミーティングで具体的な懸念点をまとめていただけたおかげで、プロジェクトはスムーズに進んでいきました。また、各回の終わりに次回に向けた課題を出してくださったことで、メンバー全員が課題に向き合い、解決策を考えることに非常に役立ちました。森さんの人柄や、その穏やかなファシリテーションスタイルも、プロジェクトが円滑に進んだ一因だと感じています。最初は不安を抱いていたメンバーもいたと思いますが、私は徐々にプロジェクトチームの一体感が生まれていったように感じました。
森:ありがとうございます。ご評価いただけて大変うれしいです。毎回事務局の作戦会議の中で、香野さん武藤さんにご意見を持ってきていただきご協力をいただきました。忌憚なく話し合いができたおかけで、私も事前準備ができたので毎回のプロジェクトミーティングが良い場になった感覚があります。本当にお二方と一緒にやらせていただけたことに感謝しています。
第三者の視点が入ることで最適なプログラムを構築できた
― NEWONEが支援することで得られたこと、自社のみで企画を作成した場合との違いがあれば教えてください。
香野様:最も大きな違いは、第三者の視点をNEWONEさんから得ることで、よりフラットな視点で企画を進められたことです。社内の人間である私が進めると、どうしても私個人に対するバイアスが入ってしまいます。しかし、第三者であるNEWONEさんが我々の課題を整理し、ミーティングのファシリテーションを担当することで、プロジェクトメンバーも議論がしやすかったと思っています。自社だけでこのプロジェクトを手がけていたら、恐らく半年で終わらなかったと思いますが、期間内に効率的に進めることができました。
武藤様:私はまだ社歴が浅いのですが、前職では、中途入社された方に対して手厚くサポートを行っていました。そのため、オンボーディングとはこうするものだという一定の認識は持っていました。しかし、NEWONEさんの支援を受けることで、さまざまな知見や視点を吸収し、オンボーディングについて新たに理解を深めることができました。また、第三者の視点から私たちの組織に最適化されたオンボーディングプログラムを一緒に考えていただけたことは、大変価値があることだと思っています。この先、実際にプログラムを運用していく中で、状況が変わっていくこともあると思いますが、初めにしっかりとした土台をNEWONEさんの支援により構築できたことは、自社だけでプログラムを作るよりも非常に良いものになったと思っています。
入社してくれた方に感謝の気持ちや歓迎の意を示すこと
― 人材流動化の時代において、中途入社者のオンボーディングに悩まれている企業様が多いですが、今回企画を作成していく中で、中途入社者のオンボーディングにおいて何が一番重要なポイントだと思われましたか?
香野様:現代の社会では、企業と従業員の関係性は大きく変化しています。人材市場が売り手市場となり、従業員の自己実現や人生設計の多様性が増している中、福利厚生の提供や高い給与だけで人を惹きつける時代は終わりつつあります。重要なのは、どのようにして企業と従業員が互いにマッチするかということです。当社では「相互尊重」という言葉を掲げています。これがキーポイントの1つであり、新たに入社してくれた人達に対する感謝の気持ちや歓迎の意を示すことが大切だと思っています。既存の社員が新たなメンバーと共に一体感を持ち、共に成果を出していけるような環境が必要です。言葉にすると平易ですが、実際に実現するのは難しく常に問い続ける課題であると感じています。
武藤様:私が大切だと感じているポイントの1つは、中途入社者への関わりをどれくらいの期間行うのか、ということです。具体的には、1ヶ月後や3ヶ月後にどのような状態になっているのかを想定し、彼らが業務に馴染むまでどれくらいの時間が必要なのか、そしてどのくらいサポートがあれば満足度高く職場に馴染んでいけるのかを考えることが重要です。こちらから押しつけるのではなく、彼ら自身から馴染んでいくことに気づかせてあげることが必要だと思います。今回、オンボーディングプログラムを一緒に設計する中で、この視点の重要性を改めて感じました。
― 今回、NEWONEにコンサルティングをお任せ頂いた理由について教えてください。
武藤様:NEWONEさんに依頼を決めた一番の理由は、設計フェーズから積極的に関わっていただけるという点でした。以前、階層別研修をご依頼させていただいた際に、自社に本当にフィットする内容や、やるべきことまで含めて考えてくださるというのは、NEWONEさんが初めてでした。今回、オンボーディングのプログラムの設計においても、一緒に課題を解決し、アプローチを考えてくださると思い、ぜひ、NEWONEさんにお願いしたいと思いました。
香野様:今回、オンボーディングプログラムの設計において、実は他社さんにもお声がけをさせていただきました。どの会社にご依頼したとしても、オンボーディングプログラムの具体的な内容は、我々が議論して決めていかなければなりません。NEWONEさんなら、既存のフレームワークに落とし込んでいくのではなく、当社の状況を踏まえながら一緒にプログラム作成に取り組むことができると思えたので、ご依頼させていただきました。
― 今回のオンボーディングプログラムを他社にお勧めするとしたら、どんな組織にお勧めしたいですか?
香野様:どんな企業にもお勧めしたいです。特に、組織が急拡大したことで創業メンバーと直近入社者とで仕事に対してのモチベーションやロイヤルティにギャップがある企業と、組織が細分化されたことによって組織間の交流が乏しくなってしまった大企業の2つですね。
オンボーディングプログラムを策定することによって、プログラム自体も、プログラムを作成する過程で生まれる既存社員の意識改革という意味でも、非常に有効だと思っています。
武藤様:オンボーディングプログラムの存在については、実際に入社してみなければわからないことが多いと思います。しかし、それを入社前に知ることができれば非常に有益ではないかと思います。特に採用に苦労されている組織にとっては、オンボーディングプログラムがあることを周知することが、新たな採用戦略として役立つのではないかと思います。
「この会社に入って良かった」と感じてもらえるよう定着させたい
― 今後、取り組んでいきたいことや注力していきたいことについて教えてください。
武藤様:今回新たに作成したオンボーディングプログラムを、まずはしっかり定着させることです。プログラムの設計が終わったら終了ではなく、中途入社者が「この会社に入って良かった」と感じられるよう、プログラムを継続的に発展させていければと思っています。
香野様:オンボーディングの前段階、つまり採用時のマッチングが非常に重要だと思います。入社希望者がスキルセットや報酬以外の要素で、何にエンゲージメントしてくれるのかを明確にする必要があると考えています。当社では2年前に会社のミッション、ビジョン、バリューを設定したのですが、それに共鳴した人達に入社してもらいたいと思っています。そうすることで、入社前の期待と入社後の実感とのギャップが縮まると思っています。会社として外部に適切に発信するためにやれることはたくさん残されていますし、採用面接の際にもしっかり確認できる仕組みを整えていきたいと思っています。
― 本日はお忙し中、貴重なお話をありがとうございました。引き続きよろしくお願いします。
NEWONE担当からの一言
森 啓亮
コンサルティング事業部
コメント
中途入社者目線(カカクコム・インシュアランス様の現場で中途入社者が求めていること)と受け入れ側目線(現場の皆様が、中途入社者の早期活躍を実現する上で必要だと思っていること)の双方を意識しながら、プロジェクトメンバーの皆様と議論を重ね、オンボーディングプログラムの完成に至りました。異なる部署の選抜メンバーの皆様が部署の垣根を超えて議論を重ね、どの部署でも適応できるオンボーディングプログラムを作ることで、部署間の一体感も醸成することができたと思います。オンボーディングの取り組み改善に留まらず、組織風土変革に繋がるプロジェクトをご一緒させていただき有難うございました。