事例概要
- 課題
・エンゲージメントサーベイで「ビジョンの浸透」に関するスコアが、役職が下がるほど低くなり、役職者とメンバー層との意識のギャップ、「伝える」ということに課題があった
- 効果
・理念の必要性に対する共通認識が、ライン長層以上で醸成された
・自組織のパーパスやビジョンを自ら描き、自分の言葉で語る力を育むことで、組織を牽引するリーダーシップが強化された
・理想論にとどまらず、理念の実現を阻む要因(不文律など)を明確にし、乗り越えるための具体的なアクションへとつなげられた
- 実績
サービス
パーパス・ビション研修
※上記はこちらのサービスをカスタマイズしています
対象
・管理職(事業部長、部長、ライン長)
実施概要
2024にパーパスが新たに制定され、その浸透施策の一環として、パーパス・ビジョンを「自分事」として捉え、自組織に落とし込むことを通じて、エンゲージメント向上と組織の実行力強化を目的に「パーパス・ビジョン研修」を実施。事業部長(約60名)、部長(約180名)、ライン長(約490名)を対象に、約3ヶ月間(全21回)にわたって開催。
― 今回、ライン長層以上に「パーパス・ビション研修」を実施しようと思った背景や理由について教えてください。
神山様:本研修を実施したのは2024年度ですが、一番のきっかけは、同年1月にパーパスが制定されたことでした。実は、2023年度に実施したエンゲージメントサーベイで「ビジョンの浸透」に関するスコアが全体的に低く、特に役職が下がるほどスコアが低下する傾向が見られました。ライン長以上の層は「理念は浸透している」と感じている一方で、メンバークラスでは「浸透していない」と感じているという、意識のギャップが浮き彫りになったのです。
また、当社の事業はワイヤーハーネスをはじめとした自動車内部の部品を製造するBtoB領域で、製品が一般消費者の目に触れる機会が少ないこともあり、事業の社会的な意義や従業員のやりがい創出、また人材獲得(採用)に課題がありました。
こうした背景からパーパスを制定し、その浸透施策の一環として、ライン長以上を対象に、パーパス・ビジョンを「自分事」として捉え、自組織へ落とし込むことで、エンゲージメント向上と組織の実行力を高めることを目的に本研修を実施することになりました。
自組織のパーパス・ビジョンを自ら描き、自分の言葉で語る
― 今回の研修によって、ライン長以上の方々がどうなることを期待していましたか?
神山様:本研修のゴールは3点あります。1つ目は、理念の必要性についてライン長以上が共通認識を持つこと。2つ目は、自組織のパーパスやビジョンを自ら描き、自分の言葉で語ることで組織を牽引するリーダーシップ力を醸成すること。3つ目が、理想論を語るだけではなく、理念浸透を阻害する要因、阻む壁を認識し、実現するためのアクションへつなげることです。
― 実際に3ヶ月間(全21回)に渡って、「パーパス・ビション研修」を実施してみた率直なご感想や、感じられた効果があれば教えて下さい。
神山様:今回の研修が、パーパスやビジョンを「自分事」として捉えるきっかけになったことは、非常に効果的だったと感じています。制定された理念を理解するだけではなく、それを自組織に落とし込み、組織の意義や理想像を言語化し、自分の言葉で部下に伝えていくことができる貴重な機会となりました。
私の肌感として、当社では「ビジョン=達成すべき業績目標」と捉える傾向が根強いと感じていました。そうした中で、ライン長が「自分たちはどうありたいか」という定性的な目標や夢を描き、部門を超えてライン長同士が対話をすることで、全社で共有できたことは貴重な機会だったと思います。ビジョンや夢を言葉にして部下へ伝えることの必要性に気づき、実際にアウトプットとして形にし、発信するまでを体験できたことは、研修を受けていない一般従業員にも良い影響を与えると感じました。
また、理想論にとどまらず、パーパス・ビジョン実現の障壁(不文律)を明確にし、それを乗り越えるための具体的な行動や次のアクションに落とし込めた点も、大きな成果でした。
パーパス実現に向けた使命感は、組織変化の大きな一歩
― 研修の中で印象的に残っているエピソードや、受講後の変化などがあれば教えてください。
神山様:これまでは「ビジョン=業績目標」という風潮が根強くありましたが、パーパスが制定されたことで、自組織のパーパスとして落とし込む視点を持った際に、「顧客への価値提供や、新しいモビリティ社会を自らの組織が主導して創っていきたい」といった非常に勢いのあるポジティブな言葉で語る方が多く見られました。「顧客であるカーメーカー様からの要求に応えるだけではなくて、顧客と共に、新しいモビリティ社会、新しい自動車のあり方を提案していくのが私たちの使命だよね」という声が多く出ていたことが印象に残っています。そのようなパーパスに部下の方も賛同し同じ想いを持って、実現するために行動ができたら、会社としても活気が出るだろうなと感じました。
また、理想論を語るだけでなく、理念の実現を阻む壁、不文律についての対話は、受講者から非常に好評でした。特に、スピード感が求められる現代においては、従来の慣習や文化がビジネスチャンスを逃す要因にもなり得ます。「必ずしもこれまでのやり方が良いとは限らない」「変えていかないと勝ち抜けない」という問題意識は、本当にどこの階層でも実際に行われていた議論でした。
特に印象的だったのは、「今、自分たちが時代に合わない文化を断ち切らなければ、次の世代はもっと苦しむ」「働きがいやエンゲージメント向上を阻むものを、自分たちが変えていくんだ」という強い使命感を語る声が多く聞かれたことです。
このように、パーパスやビジョンの実現に向けて、ライン長層の危機意識や変革マインドを醸成できたことは、組織変化に向けた大きな一歩となったと実感しています。
理念を「自分事」に捉えられる機会を継続的に創出する
― 理念を浸透させる際に、特に難しいと感じる点や重要なポイントについて教えてください。
神山様:理念に対して否定的な印象を持つ人はほとんどおらず、多くの人が「そうだ」と納得しています。ただ、それを本質的に理解し、心から共感し、自分の志と重ね合わせて捉えているかというと、必ずしもそうではないと感じています。理念を日常的に意識し続けるのは簡単なことではなく、何もしなければ意識から遠ざかってしまうのは自然なことです。だからこそ、繰り返し理念に触れる機会をつくり、内省を促すことで、少しずつ時間をかけて組織文化の中に馴染ませていくことが必要だと考えています。
とはいえ、これは非常に根気のいる取り組みであり、簡単ではありません。理念の浸透は「一度研修をやれば終わり」というものではなく、継続的な取り組みが不可欠です。そのうえで、一人ひとりが理念を「自分事」として捉えられるような機会をいかに創出するかが、最も重要なポイントだと思っています。
― 今回の研修は、事業部長(約60名)、部長(約180名)、ライン長(約490名)と、組織を巻き込んだプロジェクトになりましたが、運営面で大変だったことはありますか?
神山様:当社では新たにパーパスを制定したこともあり、タイムリーかつスピーディーに浸透させたいという想いから、外部の力を借りて、NEWONEさんに研修をお願いしました。研修の実施から当日の運営まで一貫してご対応いただけたため、私自身の工数はほとんどかかっていません。
一般的に、すでに理念が存在する企業で理念浸透を進める場合、「なぜ今やるのか」といった目的を最初にしっかり伝える必要があり、上位層や対象者に理解してもらうまでが一つのハードルになることもあると思います。
その点、当社はちょうどパーパス制定のタイミングでの実施だったため、位置づけも明確で、社内の抵抗も少なく、スムーズに取り組むことができました。
― 今回NEWONEにお任せ頂いた理由、決め手について教えてください。
神山様:以前、NEWONEさんに管理職研修でお世話になった際、講師のフランクでわかりやすい説明と人柄に強く魅力を感じました。今回ご提案いただいた研修は、当社の希望に沿って各階層との連動を意識した設計となっており、最終的にはライン長が一般の従業員 に向けて理念を伝えていくところまで、丁寧に全体をコーディネートしていただきました。また、理想論にとどまらず実現に向けた具体的なアプローチが工夫されている点を高く評価し、今回もお任せする決め手となりました。
「理念浸透」はキャリアや価値観のアップデートにも有効
― 貴社で実施した「パーパス・ビション研修」は、どのような組織にお勧めしたいですか?
神山様:理念は掲げているものの、額に飾られているだけで実態として浸透していない組織や、会社の風土変革を目指す企業には特に有効な施策だと考えています。理念を「形骸化」させず、組織の血肉として根付かせたいと願うすべての組織におすすめしたい研修です。
また、最近の若手従業員は、学生時代からキャリア教育を受けていることもあり、「自分は何を大事にして、どう働きたいか」を自分なりに考えている人が多く、働くことに対する価値観も大きく変化しています。そのため、今後は「自分の会社や組織が社会の中でどんな存在なのか」「そのビジョンに共感し、一緒に夢を描いて実現していけるか」が、エンゲージメントやキャリア形成において重要な要素となっています。今回の研修では、特にライン長以上の方々にその点を理解いただき、マインドチェンジを促すことを意識しました。
パーパス・ビジョン研修は、こうした価値観の変化や世代間ギャップに対応し、働き方への意識をアップデートしていきたいと考える組織にとっても、有効なアプローチになると思います。
理念を体現する風土づくりと多様なキャリアパスの開拓
― 今後、注力していきたいことや取り組んでいきたいことについて教えてください。
神山様:理念浸透において大切なのは、理念を「与えられるもの」として受け取るだけでなく、自分自身の価値観と重ね合わせて「自分事」として捉え、まずは自分なりに考えてみることだと考えています。上司から説明を受ける前に、「自分たちの組織は社会の中でどのような役割を果たしているのか」をメンバー自身が一度考えてみる。そのうえで説明を受けることで、納得感や共感度に大きな差が生まれるという実感があります。「自組織として何を果たすべきか」という視点と、「自分はどんなことをしたいのか」という視点、この二つを重ね合わせつなげていくことで、理念への本質的な共感が生まれるのだと思います。
今後は、この意識を長期的に醸成していくことが重要だと捉えており、考課者研修や階層別研修を通じて、組織全体で理念を体現していく風土づくりに取り組んでいきたいと考えています。
また、これからは個人のキャリア開発にも一層注力していく予定です。当社の場合、同じ本部・同じ職種に配属されると、そのまま異動の機会が少なく、キャリアが固定化されがちです。
しかし、「本当に多様なキャリアが描けないのか?」「他にも活躍できる道はあるのでは?」という問いを立て、そこにメスを入れていきたいと思っています。各組織が描く理念や、個人が実現したいことを起点に、社内で新たな可能性を見つけられるような環境をつくり、多様なキャリアパスを切り拓く企画に取り組んでいきたいと考えています。
― 本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。今後とも何卒よろしくお願いします。
全体像

受講者アンケート(一部抜粋)
- パーパスについて、これまで表面的だった理解が、自身の言葉で語る必要性として腹落ちした。
- 日常業務では向き合えない「理念」や「2030Vision」について考える有意義な時間になった。
- 中長期のあるべき姿を自部門の観点から捉える良い機会だった。
- 会社のパーパス・ビジョンを自部署レベルに落とし込むことの重要性と、自分の想いや方針を「自分の言葉」でわかりやすく伝えることの難しさを学んだ。
- ビジョンを「伝えたつもり」になっていたが、実際には伝わっていない可能性があることを認識した。
- 学びを職場に持ち帰り、実践につなげていきたいという前向きな意見を多く聞くことができ、具体的に自部署にどう展開するかを考える良いきっかけになった。
- 普段接点のない同職位の人たちと悩みや課題を共有できたことが、非常に有意義だった。
- 既存のやり方に縛られていたが、今回の研修で一歩踏み出す勇気を得られた。
- 異なる部門の方々とのディスカッションを通じて、多様な視点や取り組みを学べた。
- グループリーダーとして何をすべきか、自分の立場を再認識できた。
NEWONE担当からの一言
鏑木 亜紗実
組織・人材開発事業部
渡部 亮太
組織・人材開発事業部
コメント
「新しく制定されたPurposeをライン長以上が自分事として捉え、メンバーに伝えられるようになってほしい」という想いを伺い、企画をご一緒させていただきました。企画の際、管理職自身が、またメンバーがアクションを起こす上でも、それを阻む壁(組織の不文律)に向き合う場が必要だと感じ、ご提案させていただきましたが、研修当日、受講者の皆さんが口々に「自社にはこんな壁があるが、今自分たちこそがそれと向き合わないといけない」とおっしゃられていたのがすごく印象的でした。インタビューでもおっしゃられていたように、理念浸透は根気のいる取り組みだと思いますが、組織が変わる大きなきっかけになりうる取り組みですので、引き続きお役に立てると嬉しいです!