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「任意参加の研修を企画したものの、思ったように人が集まらない」
「参加者を募ると、いつも同じ社員ばかりが手を挙げる」
「本当は参加してほしい社員ほど、なかなか手を挙げてくれない」
手上げ式・公募型の研修を実施する際、このような悩みを感じることはないでしょうか。
こうした状況に直面すると、「社員の学習意欲が低いのではないか」「もっと魅力的な告知文にしたほうがいいのではないか」と考えてしまいがちです。
しかし、必ずしも「参加者が集まらない=社員に学習意欲がない」ではないと考えています。
なぜなら、どれほど効果的な内容の研修であっても、その価値が受講者本人に伝わり、「自分に必要だ」「参加してみたい」と思えなければ、参加という行動にはつながらないからです。
つまり手上げ研修では、研修当日のプログラムだけではなく、「参加してみよう」と思うところから研修を設計するという視点が重要になります。
「良い研修」であれば、人は集まるか?
研修企画側からすると、
「これから必要になるスキルだから、ぜひ学んでほしい」
「この内容なら、仕事にも役立つはず」
との思いで研修を企画されているはずです。
一方、研修企画側が感じている「この研修には価値がある」と、受講者が感じる「だから私は参加したい」は同じではありません。
特に、自身の課題が明確になっていない社員に対して、「今後必要になる能力だから」「キャリアに役立つから」と伝えるだけでは、自ら研修に申し込むところまで動いてもらうことは難しい場合があります。
だからこそ重要なのは、研修自体の価値を高めることに加えて、その価値を受講者自身の「課題意識や関心」と接続することです。
「研修への参加」そのものを行動としてとらえる
では、どうすれば「参加してみよう」と思ってもらえるのでしょうか。
一つのヒントになるのが、行動科学者B.J. Foggが提唱したフォッグ行動モデルです。
このモデルでは、人の行動が起こるためには、大きく次の3つの要素が必要だとされています。
- Motivation:行動したいと思えること
- Ability:その行動を実行できると思えること
- Prompt:行動するきっかけがあること
これを手上げ研修に置き換えてみると、
「この研修に参加してみたい」「これなら自分も参加できそう」「だったら今申し込もう」
という状態をつくることだと考えられます。
つまり、社員が研修を知ってから、実際に申し込むまでの「参加体験」を設計することが重要なのです。
では、具体的にはどのような設計が考えられるのでしょうか。
1.Motivation:「何を学ぶか」ではなく「参加するとどう変わるか」を伝える
例えば、コーチング研修の募集案内に、
“コーチングの基本となる傾聴・質問・フィードバックについて学びます”
と書かれていたとします。
研修内容としては合っているものの、コーチングに対して関心を持っている人でなければ、「自分が参加すべき研修だ」とは感じにくいかもしれません。
そこで、例えば、
“「つい自分で答えを言ってしまう」から卒業。後輩が自分で考え、動ける関わり方を身につける。”
と伝えたらどうでしょうか。
研修で扱う内容は同じでも、後者は「参加すると、自分や日々の仕事がどう変わるのか」が見えます。
これはマーケティング手法におけるベネフィット訴求と同様の考え方です。
研修案内でも、「何を教える研修なのか」から「参加した自分に何が起きるのか」へ視点を変えてみることが有効です。
2.Ability:「これは自分のための研修だ」と感じてもらう
もう一つ重要なのが、自分との関連性です。
例えば、「こんな悩みを持っている方におすすめです」として、
- 後輩に任せたいのに、つい自分でやってしまう
- 後輩へのフィードバックの仕方に迷う
- 「自分で考えて」と言っても、なかなか動いてもらえない
といった具体的な場面を示します。
すると受講者は、「これ、自分にもあるな」と、研修と自分を接続しやすくなります。
さらに、同じ立場の社員の受講コメントや先輩社員からの推薦などを紹介する方法も考えられます。
行動心理学によれば、他者の行動や評価(社会的証明、と表現されることがあります)は意思決定の参考にする傾向があります。
重要なのは、「自分と似た立場の人も、このテーマについて悩み、学んでいる」と認識できる材料をつくることです。
3.Prompt:「参加したいのに参加できない」を減らす
参加への意欲だけでなく、参加しやすさも重要です。
興味を持った研修であっても、
- 数時間仕事を空ける必要がある
- 上司に参加の相談をしなければならない
- 自分が対象者なのか自信が持てない
といった小さな障壁が積み重なれば、「今回はいいか」という判断につながります。
だからこそ、参加に伴う不安や負担を取り除く情報を伝えることも大切です。
場合によっては、人事から本人への案内だけでなく、上司に趣旨を伝え、メンバーが参加しやすい状態をつくることも必要かもしれません。
本当に必要なのは、募集の工夫だけではないかも
研修内容がすべて決まった後で、「この研修に人を集めるためには、どんな募集案内がいいでしょうか?」と考える場面も多いことと思います。
もちろん、その工夫の中で改善できることはあります。
しかし、本来考えたいのはもっと手前にある、「誰に、どのような変化を起こしたいのか」「その人は今、何に悩んでいるのか」「本人が『変わりたい』と思えるテーマになっているか」から研修を設計することです。
例えば「コーチング研修を実施する」と企画するのと、
“後輩を持つようになったものの、「どこまで教え、どこから任せればよいのかわからない」と感じている社員が、相手の主体性を引き出す関わり方を身につける“と企画するのでは、研修そのものの設計が変わります。
つまり、研修への集客と研修プログラムの設計は、本来別々のものではありません。
私たちは、「研修当日に何を教えるか」だけを考えるのではなく、どのような方にどのような行動変容を起こしたいのかを起点として研修を設計することを大切にしています。
そのため、手上げ研修であれば
- 誰に参加してほしいのか
- その人はどのような課題を持っているのか
- どんな言葉なら自分ごとになるのか
- どのような体験なら認知が変わるのか
- 研修後にどんな行動を取ってほしいのか
- その行動を職場でどう定着させるのか
までつなげて設計することが重要だと考えています。
手上げ研修に人が集まらないときは、
「社員の学習意欲が低いのかな」
「最近は集合研修へのニーズが下がっているのかな」
と考える前に、研修の企画・設計そのものから見直すことで打ち手が見えてくるかもしれません。
