事例概要
- 課題
- 職場ぐるみ育成を推進するためにOJTリーダーにどのような意識、行動が求められているか不明瞭だった
- OJTリーダーが育成に対して、自分自身だけで取り組んでしまう傾向が強く、うまく職場を巻き込むことができていなかった
- 効果
- 部署を越えたノウハウの共有を通して、職場ぐるみ育成を推進していくためにOJTリーダーに求められる意識や行動を考えることができた
- 「職場ぐるみ育成」が新人育成のキーワードとして社内に広まっていくきっかけとなった
- 実績
OJTリーダー研修
※上記はこちらのサービスをカスタマイズしています
― 今回OJTリーダー研修を実施させていただきましたが、貴社の若手育成の考え方や課題感、強化背景について教えてください。
磯貝様:これまで弊社で取り組んできた若手育成を、今一度見直そうと思った背景は、世の中の環境変化に伴って若手・職場の実態も大きく変わってきていると実感したからです。具体的に4つあり、まず1つ目が「就労感」の変化です。今の若手はキャリア意識がとても高い一方で、希望に合わない場合は早期に転職を検討する傾向があります。
2つ目は「世代間ギャップ」です。若手の価値観が多様化しており、今までの育て方では通用しないと感じている上司が増えています。例えば、注意をしても気づいてもらえなかったり、アドバイスしたつもりが、怒られたと受け取られてしまったり、ということがあります。
3つ目は「労働時間管理」が厳しくなっていることです。限られた時間の中で成果が求められ、育成にかけられる時間も少なくなるため、OJTリーダーが一人で育成することが非常に難しくなっています。
4つ目は「事業のポートフォリオ転換」です。組織の再編や製品の入れ替わりが激しく、職場でじっくり育てられない実情があります。その一方で、若手には早く一人前になってほしいという期待値が増しています。
こうした環境変化の中で、会社として若手社員の早期戦力化が必須だと考えました。
これまでのOFF-JTは、1年目から4年目まで単発で研修は行っていたものの、育成のありたい姿が明確ではなく、またOJTとの連動ができていないという課題がありました。職場育成もうまくいっている職場と悩んでいる職場が二極化していました。悩んでいる職場は、育成の難易度が上がる中、OJTリーダーが一人で抱え込んでいるケースが目立ちました。そこで人事部として、若手3年間のありたい姿を、「デンソーの若手が日本トップレベルに育っていること」と設定しました。また若手の育成は、従来型のOJTリーダーのみに任せる育成ではなく、上司や先輩、他の関係者も巻き込んだ“職場ぐるみ育成”に方針を変えました。こうした環境変化や若手育成強化の背景の中で、今回OJTリーダー研修をご依頼させていただきました。
“職場ぐるみ育成”のファシリテーター役として推進する
― この研修を通じて、OJTリーダー自身や組織全体がどうなることを期待していましたか?
川瀬様:最終ゴールとしては、“職場ぐるみ育成”ができる状態を目指しました。
今回の研修を通じて、OJTリーダーが中心となって、自職場(課)のタテ・ヨコ・ナナメ(上司、OJTリーダー、先輩)とのコミュニケーションと、職場外のプロや前後工程との繋がり・共創を通じて育成を推進できるようになることを期待しました。
具体的なOJTリーダーの役割は、自職場での職場ぐるみ育成というプロジェクトを推進していくファシリテーターです。OJTリーダーは、入社10年目前後の方が担うことが多いです。上司や先輩、他の社員を巻き込み、仕事の指導や専門知識のアドバイス、メンターに近い役割でメンタルケアを担当してもらうなど、職場全体で若手の育成にかかわってもらえるように推進していきます。そのために、スタートアップ研修では職場ぐるみの育成について理解を深め、基本的な知識やスキルをインプットします。またフォローアップ研修では、職場での実践を振り返り、次の職場実践につなげてもらうというサイクルを回し、“職場ぐるみ育成”を実践できるようになることを狙っています。
相互に学び合うことで、職場での実践力を高める
― 実際に本研修を実施してみた率直なご感想や、感じられた効果があれば教えてください。
川瀬様:受講者のアンケートは非常に高評価で、職場での実践度合も約9割が肯定回答でした。特に研修のグループワークからの気づき学びが好評で、各グループで出た課題や悩みに対して、ワールドカフェスタイルで他のグループを見て回ることで回答が得られたケースもありました。OJTリーダー同士の対話からヒントをもらい、実践につなげられるのは非常に効果的だと思います。
事務局の所感としては、“職場ぐるみ”というキーワードが浸透してきたと感じています。特にOJTリーダーに関しては、職場で実践しようとしたからこその悩みや課題が出てきており、職場ぐるみの育成が前に進んでいると感じます。もちろん、まだまだ道半ばなので、今後も継続していくことが必要だと考えています。
磯貝様:非常に良い研修をご提供いただけたと思っています。職場の巻き込みが難しいと感じて研修に参加する方も多いと思うのですが、グループワークの中で自分が悩んでいることや難しさを共有することで、うまくいっている人から工夫していることを教えてもらい、自分もやってみようというきっかけになるという、良いサイクルが回っていると感じました。研修を通じて相互に学び合うことで、職場での実践を促す内容になっており、非常に有効だと感じました。
職場と人事の関係性が変わり、情報が入りやすくなった
― 上司向けのガイダンスなども含め、OJTリーダーのスタートアップ研修とフォローアップ研修を数ヶ月に渡って実施してきましたが、受講者や組織の変化など、何か印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
川瀬様:上司と一緒に確認できるガイダンス動画を展開した際に、OJTリーダーの方から、「上司とOJTリーダーが一緒に説明を聞きながら、どうやって職場で育成を進めていこうか、誰を巻き込んでいこうかという、具体的なすり合わせができたことが非常に良かった」という感想をいただきました。OJTリーダーにとって、上司の巻き込みが職場ぐるみ育成の最初の第一歩となるので、そこに効果的な支援ができたことが良かったです。
磯貝様:組織の変化としては、事務局から職場に働きかけることが多くなったことで、職場から声が挙がりやすくなってきていると感じています。若手の職場での様子など、以前より情報が入ってきやすくなっています。あくまで肌感覚ですが、職場と人事の関係性が変わってきていると感じています。また、職場ぐるみの育成をテーマに打ち出してきたことで、以前よりOJTリーダー自身が一人で抱え込まず、上司や周りに相談しやすい環境に変わってきていると思っています。
職場で味方を増やし、若手と業務上の接点をつくる
― 職場ぐるみの育成を、うまく推進できているOJTリーダーにはどのような特徴があるのでしょうか?
川瀬様:職場や上司の特性にもよるのですが、上司の協力を得られている方、また上司だけではなく職場のキーマンにも働きかけ、少しずつ味方を増やしながらやっている方はうまく推進できていると感じます。また、いきなり育成をお願いするのではなく、まずは新人と業務上の接点をつくり、その後に育成観点の項目でも指導をお願いしますとお伝えすると、スムーズに進んだという事例がありました。
― 逆にうまく推進できない場合は、何か工夫されたことはありますか?
川瀬様:職場が忙しい場合、メンバーを巻き込むことに苦戦するという声がありました。OJTリーダーがより職場を巻き込みやすくなるよう、事務局としても部門長向けの説明会や上司・職場メンバーにも共有できるeラーニング動画、育成計画書といったツールを作成・展開し、職場ぐるみ育成の構築をサポートしています。
― 今回、NEWONEにお任せ頂いた理由、決め手について教えてください。
川瀬様: 2点あります。1点目は、2015年からOJTリーダー向けの研修をご担当頂いているため、弊社の育成の考え方や風土、社員の特徴についてよくご理解いただいていることへの信頼感です。
2点目は、若手育成の課題感を捉え、職場ぐるみの育成を強化していきたいという要望に合わせて柔軟にご対応いただける点です。今回もeラーニングの新規導入や既存研修の見直しなど、課題に合わせた手段や進め方について、渡部さんや井手口さんにサポートをいただき、ご依頼して本当に良かったと思っています。
若手が育つ職場は、職場ぐるみの育成ができている
― 今回実施した職場ぐるみの育成をテーマにしたOJTリーダー研修は、どのような組織にお勧めしたいですか?
川瀬様:弊社では、職場上司との対話の中で、若手が育つ職場では職場ぐるみの計画的な育成ができているということが分かっています。1対1の従来型の育成に限界を感じていたり、若手の価値観が多様化していたりしている中で、若手の早期戦力化に向けた課題を感じている組織にはお勧めです。以前と比べて、若手社員のケアもメンタル面やキャリアなど、意識することが増えています。1対多でフォローすることで、若手の成長を促進していきたいと考えている組織にはマッチすると思います。
個の対応とデータ活用で「人が育つ組織」をつくる
― 今後取り組んでいきたいことや、注力していきたいことについて教えてください。
川瀬様:現状、“職場ぐるみ育成”は組織の最小単位である「課」単位で進めているのですが、中長期の目標としては、社内全体で新人・若手を育成できるようになることを目指しています。そのために、課から室、部と巻き込みの範囲を広げていきたいと思っています。まずは現在の取り組みを地道に継続・改善し、育成の風土づくりを推進していきたいです。
磯貝様:一人ひとりに合わせた個の対応が必要だと考えています。全員は難しいですが、人事部として個に対するケアを職場と一体になって取り組むことが理想の姿です。そこに向けて、現在も職場との草の根対話とデータ活用を通じて、「育つ若手」の定量化、言語化に取り組んでいます。
職場との対話の中で、職場の現状や困りごと、育つ若手・伸び悩む若手の特徴といった生声を確認し、データを元に、育つ若手の特徴や必要な経験を分析し始めています。こうしたデータを職場活用に繋げることで、「人が育つ組織」をつくっていきたいと思っています。
◆プログラムの全体像
◆受講者アンケート(一部抜粋)
・OJTおよび職場ぐるみの育成の仕方について、言語化された形で学ぶことが出来たので、自分の引き出しとして活用していきたいと思った
・同じ境遇の方とディスカッションすることで、自分の考えの甘さや気づきがあり良い刺激になった
・他のOJTリーダーの考えや意見を聞けたことは非常に良かった。個々の環境に差異はあれ不安に思う内容は似たような状態なのだと安心した
・新入社員と目標・ゴールを合意することが重要であり、もっと具体的に育成計画を作りこむ必要があると認識することができた
・ワークはどれも自分が意識できておらず、気づきが得られる内容で、職場ぐるみに取り組めていないことに気づくことができた
・生々しい困りごとと、それに対してなるほどと思える回答を聞けたこが有意義でした
・コミュニケーションを図るうえで、実践的な参考情報をたくさん得ることができた
・具体的なアプローチや提案もあり、実践に直結できる内容だった
・一人で抱え込む必要は無いということが分かって良かった
NEWONE担当からの一言
渡部 亮太
組織・人材開発事業部
コメント
「OJTリーダーが」ではなく、「職場全員が」育成にかかわる文化づくりを、という想いを踏まえ、一緒に企画設計を行わせていただきました。職場ぐるみ育成が大事だ、という正論をただ押し付けるだけではなく、現場として「とはいえ」実践においては難しい壁があることに寄り添うことを大切にさせていただきました。デンソー様社内においても職場ぐるみ育成の好事例が生まれているとお聞きしています。より社内の好事例が増えていく一助となるよう今後もお役立ちできればと思います。