事例概要
- 課題
- サーベイを実施しただけでは意味がないので、組織開発力を身に着ける必要があった ・ソフト面ではコロナ禍以前から、コミュニケーションが希薄になっている
- VUCAの時代と言われる中、ユーザーの声に寄り添って問題を解決していく新しい形が求められている中で、これまでは強みだったはずの風土をさらに進化させていく必要もあり、今回エンゲージメントをテーマとして、「働きがい共創」という活動名で管理職層を対象に組織開発をスタートすることに至った
- 効果
- 技術的課題に対する解決は得意である中、いわゆる正解がない適応課題に対して答えを探していく際に、「対話の型」があるということを新たに知った
- メンバーの本音を聞くことの効果を感じている人は多く、対話の有効さや場の力というのを体感いただけた
- 現場から自分達でワークショップやるので相談に乗ってほしい、ビジョンをつくりたいのでファシリテーションをやりたいのですが、どのように進めれば良いですかという問合せが増えた。火種となる人達が複数の現場から出てくるようになった
- エンゲージメントという言葉が徐々に浸透してきて共通言語となりつつある。当たり前のように経営層からのメッセージに盛り込まれるようになり、成功事例も集まってきた
― 今回、貴社でエンゲージメントサーベイ(wevox)を導入し組織開発を実施しようと思った理由、背景について教えてください。
大塚様:これまで弊社では、各事業部や組織単位で従業員満足度調査などのサーベイを実施していました。今回ツールを統一することで、社員の負荷を減らすこともでき、異動があった際にも共通言語になるというメリットもあり統一しました。また、世の中の流れとしても「従業員満足度」から「エンゲージメントを高める」ことに考え方が変わっていることもあり、今回エンゲージメントを指標としたサーベイ(wevox)を全社で導入しました。
実は全社で取り組みを始める前に、以前私が所属していた事業本部の中でエンゲージメントサーベイ(wevox)を活用した組織開発を行っていました。それが上層部の目にとまり、現場で実績があるものを取り入れた方が全社に広めやすいということで、今回wevoxを導入し組織開発を実施することになりました。また、サーベイを実施しただけでは意味がないので、組織開発力を身に着ける必要があるということで、組織開発支援プログラムを導入することにしました。
正岡様:背景は2つあり、1つ目は2013年頃から社内で働き方改革の施策が動き出し、ハード面の整備は進んでいたのですが、ソフト面ではコロナ禍以前から、コミュニケーションが希薄になっているという課題がありました。そんな中、以前大塚が所属していた事業本部で、組織開発の取り組みで高い実績を上げていました。そういった流れもあり、全社的にサーベイを活用した組織開発に取り組んでいくことになりました。
2つ目は、VUCAの時代と言われる中、ユーザーの声に寄り添って問題を解決していく新しい形が求められています。これまでは強みだったはずの風土をさらに進化させていく必要もあり、今回エンゲージメントをテーマとして、「働きがい共創」という活動名で組織開発をスタートしました。
― 組織開発支援プログラムを、管理職とリーダー層を対象に手上げ式で実施された理由について教えてください。
大塚様:弊社の組織構造は縦割りですので、管理職が現場の中で一番影響力のある存在だと感じています。組織開発の取り組みを実施していくためには、メンバーを巻き込んでいく必要がありますので、キーマンとなる管理職が推進をしていく必要があります。そこで、まずは管理職層を対象にしました。手上げ式にしたのは、以前私が本部で実施した時の成功事例を参考にしました。トップから「あなたの部署はスコアが低いので研修に出てください」と言われても、本人が納得していない限り、うまくメンバーを巻き込むこともできませんし組織開発をやるのは難しいです。スコアが良い悪いではなく、推進者となる管理職本人が自組織を良くしたいという「想い」を重視し、手上げ式で募集することにしました。
組織開発の第一歩は、「対話」を通じて「違いを認識」すること
― 組織開発の基礎知識を理解する動画配信を行い、8、9月で組織開発支援プログラムを実施しましたが、率直なご感想や感じられた効果があれば教えて下さい。
大塚様:組織開発を進めていく第一歩は、推進する管理職がメンバーとの「違いを認識すること」がスタートだと思いました。自部署で対話した結果を共有する場面があったのですが、エンゲージメントスコアを構成している項目の中で、管理職が予想していた項目と、メンバー側が重視している項目が違っていて驚いた、違いが認識できたという声が多くあがっていました。まずは、管理職が組織についてメンバーと対話をする中で、自身で考えていたこととメンバーが考えていることの「違いを認識すること」はとても重要だと感じました。今回、組織開発支援プログラムを実施する中で、それを経験できたことは非常に大事なことだと感じます。
正岡様:問題解決の仕方に“違い”があることにも気づけたのではないかと思いました。弊社は技術的課題に対する解決は得意ですが、いわゆる正解がない適応課題に対して答えを探していく際に、「対話の型」があるということを新たに知った人は多いと思います。また、自分達の部署は特殊だと思っていたが、他の管理職の話を聞くことで問題が似ていることがわかったという感想も多かったです。他部門との違いを認識しながらも共通した課題があることに気づけたことは、非常に大きな気づきになったと感じています。また、6月から公開した組織開発の基礎となる動画ですが、現在600人以上が視聴しており、いまだに視聴者数が増え続けています。
大塚様:動画は管理職層だけではなく、メンバー層でも組織開発について理解しておいた方が良いと思ったので全社員に公開しています。また、動画を見た管理職が、自組織で組織開発をやっていくに当たり、メンバーにも広めているようです。次回開催の組織開発支援プログラムに参加したいという管理職も増えてきました。
久保様:今回私が一番感じたのは、組織開発はなかなか理解されにくいということです。実際に自部署で対話することで、その重要さに気づいた人は多かったのですが、対話することの重要さを事前に伝えることは難しいと感じました。また、メンバー側にも会社のためにサーベイを取得しているのではなく、自分達の力で組織を良くするために活用できるということを、もっと伝えられると良いと思いました。
池上様:参加した管理職の発言を聞いていると、メンバーの本音を聞くことの効果を感じている人は多いと感じました。もっと多くの人に受けてもらえると、対話の有効さや場の力というのを体感いただけると感じました。
― 以前と変わってきたと思うことや、何か印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
大塚様:自分達の組織を良くしたいという想いを持った人が活動しやすくなってきたと感じます。「働きがい共創」や「エンゲージメント」という言葉が、当たり前のように経営層からのメッセージに盛り込まれるようになってきています。私達も現場の成功事例を取材して全社のポータルサイトから発信するようにしていますので、想いのある人が動きやすい土壌が出来つつあります。また、以前はこちらから取材をお願いしていましたが、最近は各現場からこういう事例を紹介したいという声も増え、ちょっとずつ組織が変わってきているという感覚があります。
正岡様:現場から自分達でワークショップやるので相談に乗ってほしい、ビジョンをつくりたいのでファシリテーションをやりたいのですが、どのように進めれば良いですかという問合せが増えてきています。このような人達を我々は「火種」と呼んでいるのですが、火種となる人達が複数の現場から出てくるようになりました。
久保様:エンゲージメントという言葉が徐々に浸透してきて共通言語となりつつあります。対話を通じて組織開発の効果を理解し始めた人も増え、成功事例も集まってきています。具体的にどんな活動をすればエンゲージメント向上につながるのかを、多くの人が目にする機会が増えてきました。まだまだエンゲージメントという言葉に対しての認識のズレはあると思いますが、そのズレを埋められるフェーズに入ってきたと感じています。
池上様:皆がお伝えした通りで、問合せが増えてきたことや成功事例が増えていること自体が、以前とは大きく変わってきていることです。毎月、活動事例を発信していることもあり、徐々に組織開発の活動が広まっていると思っています。先程、「火種」という言葉がありましたが、なんとかしなくてはと心の中ではモヤモヤしている人は、まだまだ多くいるのではないかと感じています。
やらされ感ではなく、本気で組織を良くしたいという想いが大事
― 今回、組織開発を企画した段階で大事にしていたこと、また、実施してみて改めて大事だと思ったことや難しいと感じたことがあれば教えてください。
池上様:実施してみて大事だなと思ったことは、「継続」していくことです。そのためには、うまくトップダウンとボトムアップの両利きのバランスが大事で、両方に働きかけていく必要があると思いました。現場が非常に忙しい中で活動を続けるには、トップが関心を持ち続けることが大事ですので、我々が関心を惹き続けることが重要だと思いました。
久保様:現場のマネジャーの目線になって推進することが大事だと思いました。我々は組織開発について少し知識があるために、つい先走ってしまいたくなるのですが、人材開発部の当たり前と現場の当たり前は違いますので、マネジャーの気持ちに寄り添って進めることを大事にしています。
正岡様:企画の段階では、管理職の方々が組織開発を“自分達でやりたい”と思ってもらうことを大事にしました。本人がやりたいと思える演出を心がけ、やらされ感にならないように注意しました。池上が申したように「継続」はすごく大事で、歯磨きのような習慣となるまで地道な活動を続けることがすごく大事だと思いました。
大塚様:始める前にチーム内で、「エンゲージメント」という言葉は7000名の社員に広めていくには馴染まないのではないかと話し合いをしました。もっと直感的にわかる言葉にする必要があるということで、「働きがい共創」という言葉にしました。「共創」は社内でよく使われているキーワードだったので、社員の認識に相違ないキーワードを使うことを意識しました。
また、実施してみて大事だと思ったことは、組織の影響力のある人(管理職層)が組織を本気で良くしたいと思えるかどうか、自分のリソースを割いてもやりたいと思うことが大事だと思いました。難しいと思ったことは、組織開発自体を理解してもらうことです。組織開発が何かを正しく理解していない人も多い中で広まってしまったこともあり、組織によってはトップダウンでエンゲージメントスコアを上げることが目的になってしまったところもありました。
― 今回、組織開発の支援をNEWONEにお任せ頂いた理由、決め手について教えてください。
大塚様:アトラエさんからのご紹介でNEWONEさんを知りました。そこで、すぐに導入を決定した訳ではなく、まずは我々人材開発部に対して研修を実施してもらいました。受講者の気持ちになって体験をしてみたうえで、これは非常に良いなと思えたのでNEWONEさんと一緒に実施させていただくことを決めました。特にプログラムの内容を弊社の風土に合わせてカスタマイズいただける点や、一緒に研修内容を作っていただけることが決め手となりました。
正岡様:大槻さんとは、特に動画のプログラムができるまで何度もやり取りをし、こちらの要望に対し真摯にご対応いただきました。ここまで寄り添って一緒に作っていただけたことが非常に心強く有り難かったです。
久保様:弊社の特徴や風土をよく理解していただけているなと感じました。また、体系化されているコンテンツに対し素人目線で指摘したことも柔軟に受け入れてくださり、我々が納得できる進め方をしてくださって非常に助かりました。
池上様:上林さんは組織開発を熟知しており、知見も豊富だし現場での実績もある方だと思いました。また、これまでの経験や実績からお話されるので納得感が高く、一緒に進めていける信頼感があったので今回ご依頼させていただきました。
「対話」の有効性を体験することで、「火種」となる人を増やしていきたい
― 今回実施した組織開発支援は、どのような組織や人にお勧めしたいですか?
大塚様:少しでも自分のチームや組織を良くしたいと思っている人で、なかなか一歩が踏み出せない、何をやって良いかわからないと悩んでいる管理職、リーダー層の方には、ぜひお勧めしたいです。
正岡様:今多くの組織で、エンゲージメントの高い組織づくりが求められていますので、そのための「型」があるということを、ぜひ多くの人に知ってほしいです。自組織を良くしていくヒントを得たい人にはお勧めです。
久保様:組織に何か違和感を持っている人、目先の業績そのものよりも、もう少し広い視野で組織のことを考えている人には良いのではないでしょうか。
池上様:組織にいるマネジャーで、組織を良くしたいと思う人が2割、ニュートラルな人が6割、まったくそう思わない人が2割いるとして、上位2割は黙っていても行動すると思うのですが、ニュートラルな6割の人達は、こういった組織開発があることに気づいてないのではないかと思います。対話をすることで、その有効性に初めて気づかれる管理職がとても多いと感じていますので、ニュートラルな6割の方に組織開発の対話の場に出ることを勧めてみたいです。一度自分でその有効性を体験してみることで、意識が変わっていく人は多いと思っています。
― 今後、取り組でいきたいことや注力していきたいことについて教えてください。
大塚様:2つありまして、1つ目は先程から「火種」という言葉を使っておりますが、想いを持った管理職の方を中心に「火種」の火を大きく広げていきたいです。2つ目は、メンバー層に対してもエンゲージメントは、自分自身で高められるということを理解してもらうことをやりたいなと考えています。
正岡様:物の見方を変えるというより、「新しい見方ができる」ということを広めたいと思っています。これまで弊社は短期で業績を上げることを重視し、個人のスキルや能力向上に注目してきました。もちろん、それも大事ですが、組織開発の取り組みは漢方薬のようなもので長期に亘って効いてくるものだと思います。関係の質が変わることで、思考の質、行動の質が変わり、最後結果の質が変わってくるものだと思いますので、成果に変わるまで地道に継続していきたいと思います。
久保様:大塚と重複しますが、メンバー視点の要素が足りていなかったと感じているので、今後はメンバーへの取組みをやりたいと思います。メンバー視点で考えると、自分の職場は変わらないと諦めている人も何割かいると思いますので、そういう人が希望を持てるような、自分も動けば何かが変えられると思えるような体験を考えていきたいと思います。
池上様:現在活動しているコミュニティの活動は引き続き継続していきたいと思っており、組織開発の継続のためには重要な位置づけだと捉えています。そこから新たな提案が出てくるようになればコミュニティとしての価値がより出てくると考えています。また、組織に対する意識の高いマネジャーの下で活動できているメンバーは幸せですが、そうじゃないメンバーを何とかしたいという想いが個人的には強いので、そこに対しての施策を考えていきたいと思っています。
― 本日はお忙しい中、貴重はお話をありがとうございました。引き続きご支援してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。
◆プログラムの全体像(一部抜粋)
◆「働きがい共創」野村総合研究所様自社サイト(一部抜粋)
◆受講者アンケート(一部抜粋)
・同じように悩み、組織を良くしようと思っている方々と話ができてとても有意義でした。一長一短にはいかないので、そういう想いを持った人たちを増やすことが大切だと思った。
・コロナ禍で疎かになりがちだった組織開発にスポットをあてる事で、改めて楽しさややりがいを思い出させていただける研修でした。
・対話の進め方、アレンジの仕方が少しわかったように感じます。対話の中で相手の発言を引き出す方法や自身の発信の仕方を見直すいい機会となりました。
・「よりよい組織」を作るためには、一方的に押し付けるのではなく各メンバーそれぞれの考えや思いをきちんと把握するとが大事だと思いました。
・講義を受けるだけでなく、自組織で実践するという宿題が取り入れられていたため、改善に向かう進捗を実感しながら進めることができた。
・この研修を機にチーム内でディスカッションする場を作れたことがよかった。その場を持ったことだけでも相互理解の促進に役立ったと思う。他にも組織作りにすぐ使えるツールやTipsを紹介いただいたので、実践に役立てたい。
・wevoxの有効活用がわかり、結果から感じ取る情報と具体的な施策を深く考える機会になりました
NEWONE担当からの一言
大槻 美幸
組織・人材開発事業部
コメント
今回ご一緒させていただき、想いを持った管理職の方々向けに、動画制作から研修企画・設計まで「火種」の火を大きく広げていく推進役として幅広くご一緒させていただき、誠に有難うございました。今後は、管理職だけが頑張る活動ではなく、メンバー層に対してもエンゲージメントは、自分自身で高められるということを理解してもらうように「火種」創りを伴走させていただければと思います。