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従業員体験から、従業員変革へ

従業員体験から、従業員変革へ

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近年、人事領域では「Employee Experience(従業員体験)」という言葉を耳にする機会が増えました。

入社から育成、評価、キャリア、退職まで、一人ひとりの体験価値を高めることが、人材の定着やエンゲージメント向上につながるという考え方です。

もちろん、この考え方はこれからも重要です。

一方で私は最近、「人事が本当に目指すべき成果は何だろうか」と考えることが増えています。
その答えとして辿り着いたのが、「従業員体験」のさらに先にある「従業員変革」という考え方です。

企業が提供する価値は、「変革」の時代へ

以前、B・J・パインⅡ氏、J・H・ギルモア氏の名著『新訳 経験経済』を読み返す機会がありました。

この書籍では、企業が提供する価値は時代とともに、
・商品(Commodity)
・サービス(Service)
・体験(Experience)
へと進化してきたことが整理されています。

そして、その先にある価値として示されているのが、Transformation(変革)です。

商品を買うことが価値なのではない。
サービスを受けることが価値なのでもない。
体験をすることだけが価値なのでもありません。

その商品やサービス、体験を通じて、「自分自身がどう変われるのか」
これこそが、企業が提供できる最も高い価値である、という考え方です。

私は、この考え方は人事にもそのまま当てはまるのではないかと思っています。

人事も「体験」をつくる仕事から、「変革」を生み出す仕事へ

これまで人事は、
・採用する
・育成する
・定着させる
・エンゲージメントを高める
・従業員体験を向上させる
こうしたことに力を注いできました。

どれも欠かせない取り組みです。

しかし、その先にある問いがあります。

「この会社で働くことで、その人は本当に変われたのか。」
私は、この問いこそが、これからの人事に最も重要になると思っています。

従業員体験とは、会社が社員へ提供する価値です。
一方で従業員変革とは、その結果として社員自身に起こる変化です。

人事が目指すべき成果は、
「良い制度をつくったか」
「良い研修を実施したか」
ではありません。

「社員は変われたか。」
このアウトカムに、人事の価値は移っていくのではないでしょうか。

従業員変革とは、「なりたい自分」に近づけること

では、従業員変革とは何でしょうか。

私は、
「この会社なら、自分の可能性を信じられるようになり、なりたい自分へ近づけること」
だと考えています。

その変化には、大きく三つあります。

一つ目は、能力の変革です。
新しい知識やスキルを身につけ、「できること」が増えていること。

二つ目は、人としての変革です。
価値観やリーダーシップ、周囲との関わり方が変わり、人として成長している実感があること。

そして三つ目は、キャリア・人生の変革です。
将来のありたい姿が見え、自分らしいキャリアを歩めていること。

働くことそのものが、人生の成長につながっている。
そんな状態こそ、人事が生み出したい価値ではないでしょうか。

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従業員変革を実現する会社には、3つの共通点がある

では、人が変わり続ける会社には、どのような共通点があるのでしょうか。

私は、多くの企業をご支援する中で、大きく三つの特徴があると感じています。

一つ目は、挑戦が称賛される文化です。
組織全体が変化や挑戦に前向きであり、その中で実際に挑戦している人が多い会社です。
挑戦する人が身近にいるからこそ、「自分もやってみよう」と思える。
変革は、一人ではなく、組織文化の中から生まれていきます。

二つ目は、変化が伝播する文化です。
挑戦や成功だけでなく、失敗や学びも含めてオープンに共有されている会社です。
他者の変化が見えなければ、人はなかなか変わろうと思えません。
変化や挑戦が日常的に発信され、互いに刺激を与え合う環境があることで、組織全体に変革が広がっていきます。

三つ目は、Will(意志)が尊重される文化です。
会社が「こうなりなさい」と示すのではなく、
「あなたは、どうなりたいのか。」
を問い続ける。
一人ひとりのWillを尊重し、その実現を会社が支援している。
だからこそ、その変化は会社のためだけではなく、自分自身の人生の変革にもつながっていくのです。

人事が設計すべきは、「制度」ではなく「変革が生まれる環境」

こう考えると、人事制度や育成制度の役割も変わってきます。

制度を整えることが目的ではありません。
重要なのは、社員一人ひとりが
「この会社なら、自分はこんな未来になれる。」
と具体的に描けることです。

そのためには、
・ロールモデルを発信する
・挑戦事例を共有する
・キャリアの選択肢を可視化する
・上司との対話を増やす
・Willを起点とした育成を行う
こうした取り組みが重要になります。

制度を設計するだけではなく、人が変わり続ける環境を設計すること
それが、これからの人事の新たな役割ではないでしょうか。

従業員体験から、従業員変革へ

従業員体験は、社員が安心して働き、前向きに仕事へ向き合える環境をつくる考え方として、大きな役割を果たしてきました。

しかし、これから企業が選ばれる理由は、「働きやすい会社」だけではありません。
「この会社なら、自分は変われる。」
そう信じられる会社こそが、人を惹きつけ、成長し続ける企業になるのではないでしょうか。

人は、制度だけでは変わりません。
人は、人との関わりの中で変わり、日々の挑戦の中で変わり、「自分はもっと成長できる」という実感の中で変わっていきます。

だからこそ、人事の役割も、制度や体験を設計することにとどまりません。

「人が変わり続ける組織」を設計すること。

私は、それこそがこれからの人事に求められる役割であり、そのキーワードが「従業員体験から、従業員変革へ」なのだと考えています。

皆さまの会社では、「良い従業員体験を提供すること」が目的になっていないでしょうか。
その先にある、「社員は本当に変われたか。」

この問いこそが、これからの人事にとって、最も大切な問いになっていくのではないでしょうか。