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目次
「AIが当たり前の時代に、若手はどう育つのか。」
一度はこうした問いに向き合ったことがあるのではないでしょうか。
AIの進化によって業務の効率化は進み、情報収集や資料作成など多くの作業が短時間で完結するようになりました。その一方で、「若手が自分で考えなくなるのではないか」「判断力が育たなくなるのではないか」といった声も聞かれるようになっています。
AIを使うことが当たり前になりつつある今、若手育成の難易度は変化しています。
AIを活用することで仕事の質は高まる一方で、思考のプロセスが見えにくくなり、
育成のポイントがつかみにくくなっているという側面もあります。
その結果、「AIに任せればよいのか」「人に考えさせるべきなのか」といった議論に陥り、本来設計すべき育成の前提が曖昧になってしまうケースも少なくありません。
本記事では、若手育成をテーマに、AI時代の育成の難しさを整理したうえで、
現場の育成でどのような視点が重要になるのかを紐といていきます。
(※本内容は、2026年3月5日実施セミナーの内容をまとめたものです)
こんな方におすすめ
- AIの普及によって若手育成の難しさを感じている方
- AIを活用する時代におけるOJTや育成のあり方を見直したい方
- 若手の思考力・判断力をどのように育てるべきか整理したい方
AI時代の育成の難しさ
AIの活用が広がるにつれて、若手育成の前提そのものが変わり始めています。
従来の育成方法がそのまま通用しなくなり、現場では新たな難しさを感じる場面も増えています。ここでは、AI時代における育成の難しさを5つの観点から整理します。
① 成長のわかりやすい指標が使いづらい
これまで若手の成長は、アウトプットの質や仕事のスピードなど、比較的わかりやすい指標で捉えることができました。例えば、企画書や議事録のクオリティが上がることで、「半年前より成長した」と判断することが可能でした。
しかしAIを活用すれば、経験の浅い若手でも一定水準の成果物を作ることができます。
アウトプットの質は、本人の能力だけでなくツールの性能や使い方にも大きく左右される
ようになりました。その結果、成果物だけを見て「本人が成長した」と判断することが難しくなっています。
② 「教える」価値が相対的に下がる
従来、若手が業務で疑問を持った場合は、上司や先輩に相談することが基本でした。
しかし現在は、まずAIに聞くという行動が自然になりつつあります。
AIはいつでも質問でき、気を遣う必要もありません。そのため若手は、まずAIに一般的な答えを求め、AIでは解決できない部分だけを上司に確認するという行動をとるようになります。結果として、以前はすべて上司に相談していた内容の一部がAIに置き換わり、
「教える役割」の位置づけが相対的に変化しているという難しさが生まれています。
③ 仕事のプロセスと考える力が見えにくい
AIが仕事の伴走者のような存在になることで、若手は上司に相談せずに業務を進められる場面が増えます。これは効率の面ではメリットですが、一方で育成の観点では新たな課題が生まれます。それは、仕事の進め方や思考プロセスが見えにくくなることです。
以前は報告・連絡・相談を通じて、上司は若手がどのように考えているのかを把握することができました。しかしAIが相談相手の一部を担うことで、上司が関与する機会が減り、本人がどのように考えて仕事を進めているのかが見えづらくなる状況が生まれています。
④ 最終的な質向上の難しさが残る
AIを活用すれば、若手でも「それなりに整った成果物」を作ることができます。
ただし、それがそのまま顧客や上司の期待を超えるレベルの成果物になるとは限りません。
現場では、「そこそこ良い」状態から「本当に価値のある成果物」に仕上げる最後の一段階が重要になります。しかしこの部分は改善の難易度が高く、言語化もしづらいため、教えることが難しい領域です。
一方で、部下や後輩から仕事を引き取る場面でも、上司が仕事の途中プロセスに関与していない場合、背景や状況を十分に把握することが難しくなります。その結果、最終的な仕上げの段階で、上司自身が頭を使いながら重要な付加価値部分を補うという状況が生まれやすくなります。
⑤ 責任感や主体性を育てにくい
AIを活用すれば、アウトプットの質を高めること自体は比較的容易になります。
しかしAIは、成果物の改善を支援することはできても、「主体的に考えているか」「責任感を持って取り組んでいるか」といった姿勢そのものを指摘してくれるわけではありません。
その結果、アウトプットは一定水準に達しているものの、仕事への主体的な向き合い方や責任感が十分に育たないという課題が生まれやすくなります。
AI時代の育成のポイント
①AI浸透に伴う育成対象者の若手の位置づけの変化を捉える
これまでのOJTでは、新入社員や若手社員は、経験や知識が少ない立場からスタートし、
先輩や上司の指示を受けながら仕事を覚えていく存在として捉えられてきました。
しかしAIが浸透した環境では、この前提そのものが変わります。
なぜなら、若手社員のすぐそばには、AIという極めて優秀な「メンバー」が存在するからです。AIは24時間稼働し、膨大な情報を処理しながら、短時間で一定水準のアウトプットを生み出すことができます。
つまり、AI時代の若手社員は、AIを使いこなしながら成果を生み出す存在として捉える必要があります。
これを踏まえると、若手の育成とは、“AIというメンバーを使いこなすリーダー”を育てることだと言えるでしょう。
②思考力・判断力の定義のアップデートを図る
AIが浸透することによって若手社員の思考力や判断力が低下してしまうことを懸念されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに、AIの活用によって、前述の通り誰でも一定水準の成果物を作れるようになりつつあります。そのため、これまでのように自分で1から考え抜く機会は、以前より減る可能性があります。しかし、今後はこうした状況がスタンダードになっていくでしょう。
だからこそ重要なのは、「AI時代における思考力・判断力とは何か」を改めて定義し直すことです。
AIは非常に優秀な存在ですが、何でもできる万能なものではありません。
AIを活用することで高まりやすい能力もあれば、AIだけでは育ちにくい能力もあります。
例えば思考力においては、AIを活用することで、目の前の問いに正確に答える力や問題を効率よく解く力は高まりやすくなるでしょう。
一方で、「そもそも何のための問いなのか」を考える力や、相手の期待を捉え直す力、目的そのものを再定義する力は、AIだけで高めることはできません。
また判断力においても、正しそうな答えを選ぶ力や、失敗しにくい選択をする力は身につけやすくなるでしょう。
しかし、判断軸を自分で設定する力や、トレードオフを引き受ける力、そして「私はこう決めた」と言い切る覚悟を育てることは、AIだけでは難しいです。
だからこそ、AI時代の思考力とは「目の前の問いを解くための思考」ではなく、相手の期待を捉え、それを超えるために考える力として、目的起点で捉え直す必要があります。
また判断力とは、「正しそうな答えを選ぶこと」ではなく、自ら判断軸を定め、結果に責任を持って決めることとして、責任起点で再定義することが重要になるでしょう。
③AI時代における育成者の支援の価値を理解する
AIの支援もある中で、育成者における支援の価値は何でしょうか。
前述の通り、AIは80点のアウトプットを出すことができます。
そのため、若手社員は80点のアウトプットについてはAIを活用することで出すことができたり、イメージがついたりするでしょう。
しかし、80点から100点のアウトプットにすることは難しいのです。
つまり、育成者は80点から100点のアウトプットを生み出せるようになるための支援が必要になります。
そのうえで、育成者が発揮できる価値を理解することが重要になります。
例えば、情報を集め、平均的な答えを出すことや感情に左右されず、安定して対応すること、いつでも、何度でも質問に答えることはAIの価値でしょう。
一方で目指す姿を描くことや、個別の状況に合わせた文脈を渡すこと、責任を引き受けさせることは育成者にしかできません。
こうした価値を発揮するうえで、育成者が仕事のプロセスにおいて関与すべきポイントを明確にしておく必要があります。
AIの活用が進むことで、若手が仕事を進めるプロセスにも変化が生まれています。
一昔前は、仕事の途中段階で細かく相談に乗りながら伴走することが、育成者の重要な役割でした。
しかしAIが浸透した現在では、情報整理や選択肢の提示など、仕事の途中プロセスの多くをAIが支援するようになっています。その結果、育成者が関与すべきポイントは、仕事の途中ではなく「仕事の前」と「仕事の後」へとシフトしていると言えます。
まず若手社員が仕事を受ける段階では、目的や目指す姿を丁寧にすり合わせることが重要になります。
この仕事は何のために行うのか、相手はどこに期待しているのか、成功とはどの状態を指すのか。こうした問いを投げかけながら、若手が仕事の意味や期待水準を理解できるよう支援することが求められます。
また仕事を進める段階ではAIの支援があるため、育成者は必要に応じて自社特有の文脈や価値観を補足する程度の関与にとどめることも考えられます。
そしてもう一つ重要なのが、仕事が終わった後のフィードバックです。
AIによって一定水準のアウトプットが作れるようになると、成果物だけでは本人の成長を判断しにくくなるという課題が生まれます。AIの性能が上がっただけなのか、それとも本人の力が伸びたのかが見えにくくなるためです。
そのためAI時代の育成では、成果物そのものだけでなく、仕事の進め方や判断のプロセスに目を向けた問いかけが重要になります。
例えば、次のような観点です。
・目的を理解しているか
・期待を超えているか
・判断理由を語れるか
・責任を引き受けているか
こうした問いかけを通じて、若手が自分の思考や判断を振り返る機会をつくることが、思考力や判断力、そして責任感や主体性の育成につながります。
AIがアウトプットの質を一定水準まで引き上げる時代だからこそ、育成者の役割は、仕事の意味を問い直し、判断の理由を言語化させ、責任を引き受ける姿勢を育てることにあります。
つまりAI時代の育成とは、成果物を細かく修正することではなく、仕事の前後で問いを投げかけ、思考と判断の質を高める支援を行うことだと言えるでしょう。
NEWONEでは、エンゲージメント向上をはじめとした
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アンケートの声(一部抜粋)
- ロジカルシンキング研修等既存の研修をAIの存在を前提とした内容にアップデートし、AIとの役割分担や人だからこそ価値を出せる領域に注力すべきといった気づきを得られる内容にしていきたいと思いました。
- AIの特徴をうまく活用してどう育成に繋げたらよいかが具体的でとてもよく理解できました。相手の勝ち軸を越えるというお話はNEWONEさんらしさがでていて一貫性を感じました。
- AI +人ができることの方向性を明確に言語化してくださったので、非常に共感できました。思考力、判断力の定義も従来のものとは違う視点で、定義し直す必要があるというのも非常に勉強になりました。
- 社員全体の思考力・判断力の低下に強い懸念を持っていながらも、原因を言語化できないでいました。ツールとして使いこなすことばかり主導していたからかもしれない、そもそも使うにあたってのマインドセットが、上司部下の双方に必要かもしれない、と気づきがありました。
登壇者の声
AIが当たり前になった今、育成の難しさは多くの現場で顕在化しています。今回のセミナーでは、その違和感を言語化し、OJTの再設計のヒントを持ち帰っていただきたいという想いでお話ししました。特に「若手はAIという部下を持つリーダー」という視点には強い共感が集まり、手応えを感じています。今後は、制度や現場の関わりまで含めて、企業全体でのアップデートをご支援していきたいと考えています。
瀬口 航生" width="104" height="104">