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お客様とお話しする中で、「新入社員の『自分で考える力』を強化したい」という声をよく耳にします。
実際、「自分で考える力」を強化するために、上司や先輩が「目的から考えてみよう」「相手の立場に立って考えよう」といった声かけを意識している職場は少なくありません。
いずれも重要な視点である一方で、それらが“正解”として機能してしまうと、かえって新入社員の「自分で考える力」を損ねてしまう恐れもあります。
「目的思考」や「相手視点」の罠
「目的から考えてみよう」
「相手の立場に立って考えよう」
こうした声かけは、一見すると「自分の頭で考えること」を促しているように見えます。
しかし実際には、次のような前提がセットになっている場合も少なくありません。
「目的を考えたら、この手段が妥当だよね」
「相手視点で考えると、こういうコミュニケーションを取るべきだよね」
つまり、「目的思考」や「相手視点」といった言葉が、実質的に“決まった正解”へと誘導するツールになってしまっているのです。
その結果、新入社員の中には、次のような認識が生まれてしまいます。
「この職場では、目的に対してこう動くのが正解なんだ」
「“相手視点”とは、上司の意図を察して動くことなんだ」
これでは、「自分で考える」ではなく、「上司や先輩の持つ正解を当てにいくこと」が目的となってしまい、実際には同調や忖度といった行動が強化されてしまう可能性があります。
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自由と制約の線引きを明確にする
新入社員の“考える力”を育むには、「目的やゴールを踏まえて考えましょう」「相手視点で考えましょう」といった言葉で求めるだけでは不十分です。
それは、彼らが自社における組織の文脈や、ビジネスの前提条件をまだ十分に把握していないからです。だからこそ、上司や先輩の関わり方が非常に重要になります。
中でも特に意識すべきなのは、「考えてよい範囲」と「決まっている前提」を、明確に切り分けて伝えることです。
たとえば、次のような伝え方が有効です。
「この業務プロセスは、自由に提案してほしい」
「この報告フォーマットは会社で決まっているので、形式は変えずに使ってほしい」
「A社への提案は自由度が高いので、コンセプトから一緒に考えよう」
「B社については企画方針が決まっているので、運用面で工夫してもらえると助かる」
こうした丁寧な切り分けがあることで、新入社員は「自分がどこまで裁量を持って考えてよいのか」を把握しやすくなり、安心して思考を深めることができるようになります。
おわりに
「目的思考」や「相手視点」は、本来“答えを出すための型”ではなく、“考えるための問い”であるべきです。
それがいつの間にか、「空気を読む」「正解をなぞる」ための言葉になってしまうと、新入社員の主体性は静かに失われていきます。
大切なのは、「上司や先輩が持つ『正解らしきもの』に誘導すること」ではなく、「どこまで自由に考えてよくて、どこからが決まっているのか」を明確に伝えた上で、「自分で考えたプロセスそのもの」を肯定・承認すること。
その小さな対話の積み重ねが、新入社員が「自分の頭で考える文化」を育てていく土壌に繋がります。