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新人が育つOJTとは―「指導」で終わらせない育成の視点―

新人が育つOJTとは―「指導」で終わらせない育成の視点―

<a href= 瀬口 航生" width="104" height="104">

株式会社NEWONEに新卒入社。人材育成・組織開発のHRパートナーとして、研修設計・運営を中心に幅広い層の成長支援に携わる。新入社員・若手から管理職層まで、各階層の課題に応じたプログラムを企画・実施し、組織全体のパフォーマンス向上を支援している。
社内では組織開発の一環として、エンゲージメント向上を目的としたイベントの企画・運営にも取り組んでいる。

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多くの企業では、新入社員の育成方法としてOJTが取り入れられています。
実際の業務を通じて仕事を学び、職場の中で経験を積みながら成長していく仕組みとして、OJTは重要な役割を担っています。

しかし、OJT研修でご一緒させていただいている中で、実際の職場では、OJTのかかわり方が「育成」ではなく「指導」だけにとどまっているケースも少なくありません。

例えば、業務の進め方を細かく教え、ミスが起きないように丁寧に指導する。
一見すると、しっかりと育成しているように見えます。
しかしその結果、新入社員が「言われたことはできるが、自分で考えて動くことが難しい」という状態になってしまうこともあります。

では、OJTを本来の「育成の場」として機能させるためには、どのような関わりが必要なのでしょうか。

本記事では、OJTの目的を改めて整理するとともに、現場で起きがちな課題を踏まえながら、OJTを「育成の場」として機能させるためのポイントについて考えていきます。

OJTの目的を整理する

OJT(On-the-Job Training)はなぜ多くの企業で導入されているのでしょうか。
「実際の業務を通じて知識やスキルを“使える力”として身につけるため」と考える方も多いのではないでしょうか。確かに、これもOJTの重要な目的の一つです。
しかし、企業がOJTを取り入れる目的は、「特定の業務ができるようになること」だけなのでしょうか。

組織の立場から考えると、OJTの目的はもう少し大きなところにあります。
それは、単に業務を覚える人材を育てることではなく、組織に価値を生み出す戦力として1人前に成長してもらうことです。

仕事の現場では、決められた作業をこなすだけでは十分とは言えません。正解のないビジネスの世界で、状況を理解し、周囲と連携しながら、自分の役割を果たしていくことが求められます。

つまり、OJTは単に「業務を覚えるための制度」ではなく、組織の一員として自立し、組織に貢献できる人材へと成長していくための仕組みとして導入されていると言えるでしょう。

OJTの役割は指導ではなく育成

OJTの役割を考えるうえで重要なのが、「指導」と「育成」を意識して区別することです。
指導とは、業務のやり方や手順を教え、仕事ができるように導く関わりです。例えば、資料の作り方を教えたり、業務の進め方を説明したりするなどの業務スキルを教える関わりは指導にあたります。

一方で、育成とは自ら考え、判断し、行動できるビジネスパーソンへと成長していくことを支援する関わりです。単に仕事のやり方を教えるだけでなく、「なぜその方法なのか」「他にどんなやり方があるのか」といった視点を共有しながら、自分で考え、判断し、行動できる力を育てていくことが重要になります。

OJTの現場では、目の前の業務を覚えてもらうことに意識が向きやすく、指導が中心になりがちです。しかし、OJTの目的は、前述の通り特定の業務スキルを習得することだけではありません。組織の一員として1人前に活躍できることが目的であり、そのためのマインドやスタンスを身につけることが重要になります。

業務スキルそのものは、本やインターネット、研修などを通じて学ぶこともできますし、一定程度は形式的に教えることも可能です。
また、ビジネス環境や技術の変化によって求められる内容が変わる、比較的流動的なものでもあります。昨日まで必要とされていたスキルが、環境の変化によって別の形に変わることも珍しくありません。

しかし、仕事への向き合い方や責任の持ち方、周囲との関わり方といったビジネスパーソンとしてのマインドやスタンスは、環境が変わっても大きく変わるものではありません。こうした姿勢は知識として学ぶだけで身につくものではなく、日々の仕事の中で、先輩や上司がどのように考え、行動しているのかを見ながら、少しずつ身についていくものです。

だからこそ、OJTは単に業務スキルを教える場ではなく、仕事に向き合う姿勢や考え方を学ぶ「育成の場」としての役割が重要になると言えるでしょう。

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新人が育つために必要なかかわり方

では、新人が組織に価値を生み出す戦力として自走できる人材に成長してもらうには、どのようなかかわりが必要でしょうか。ここでは、OJTの中で意識したい二つのポイントを紹介します。

①新人の考える余地を増やす

新人を育てようとするとき、細かくやり方を教えてしまうことがあります。なぜなら、その方が早く新人の行動が変わり、成長しているように見えるためです。新人にとっても、OJTトレーナーにとっても、成長しているという実感を得やすいという側面があります。

しかし、すべてを教えてしまうと、新人は「教えられた通りに行うこと」が中心になり、自分で考える機会が少なくなってしまいます。もちろん、業務を覚えるための最低限の指導は必要ですが、すべての答えを先に示すのではなく、「どう進めたらよいと思うか」「他に方法はあるか」と問いかけることで、新人が自分で考える余地をつくることが大切です。こうした経験の積み重ねが、主体的に考え行動する力を育てていきます。

②仕事のやり方を伝えるのではなく、目的を伝える

もう一つ重要なのが、仕事の「やり方」だけでなく「目的」を伝えることです。仕事には必ず目的や背景、意図があります。なぜその業務が必要なのか、誰のために行うのか、どのような価値を生み出すのかを理解することで、新人は単なる作業ではなく、仕事として意味を捉えられるようになります。
目的を理解していれば、状況が変わったときにも自分で考えて判断することができます。

逆に、やり方だけを覚えている状態では、少し条件が変わっただけで対応できなくなってしまいます。目的を共有することは、新人が主体的に仕事に向き合うための重要な土台となります。

まとめ

OJTは、単に業務のやり方を教える仕組みではなく、組織の一員として自立し、価値を生み出せる人材へと成長していくための育成の場です。

そのためには、目の前の業務を「できるようにする指導」だけでなく、新人が自ら考え、判断し、行動する力を育てていくかかわりが求められます。

新人の考える余地をつくることや仕事のやり方だけでなく目的を伝えることというかかわりを積み重ねることで、新人は単なる作業者ではなく、自ら考え行動できるビジネスパーソンへと成長していきます。

OJTを「指導の場」で終わらせるのではなく、「育成の場」として機能させていくことが、新人が組織の戦力として育っていくための重要な視点と言えるのではないでしょうか。