
NEWONEでは、あらゆる企業のご希望やお悩みにあわせた
多種多様な研修を取り扱っております。
目次
「オンボーディングの成功を左右する“個別化育成”とは何か」
新入社員の育成において、「これまでと同じやり方ではうまくいかない」と感じている企業は少なくありません。
「新入社員が定着するかどうかって正直、運ですよね」
新人育成担当の方から実際にいただいたお悩みの声です。
もちろん新人育成には採用や職場環境など、様々な要因が影響するため、一筋縄では成功に導けない難しさがあるのは事実です。
一方で、運任せにしないためにはどのような育成設計が必要なのでしょうか?
今年も立教大学中原先生をお招きし、
お話いただくテーマは「”個別化育成”の視点から見る、”オンボーディング”の成功」についてです。
・そもそも新人育成のゴールを何に置けばいいのかわからない
・年々、多様化する新入社員のタイプに対応することができない
・個別化育成とは言っても、人数が多すぎて一人ひとりは見てられない 等
新人育成を担当される方々の現代ならではのお悩みに対して
インタビュー形式で、具体的な設計方法や他社事例を交えてヒントをご紹介します。
26年度に向けて、新人研修・育成設計を担当しているという方は、是非ご覧ください。
新人育成がうまくいかない理由
多くの企業は、新人を「同じ価値観・同じペース」で成長すると捉えがちです。
しかし、現代の新人は多様な背景や価値観を持ち、置かれている状況や成長スピードも異なります。そこで、「均質化」の視点で育成をすると、新入社員と会社の間に混乱やズレが生じ、育成担当者との信頼関係まで損ないかねません。
また、育成者自身が育成の“設計”をしていないことも問題の一つです。
配属して、業務を教えて、様子を見て…という固定化されたプロセスでは、「本当は悩んでいる」「本音を言いにくい」といった新人の内側が拾えず、孤立を生むリスクがあります。
個別化育成とは「観る姿勢」の育成である
そこで、中原先生の言う、「個別化育成」という視点が重要になってきます。
個別化育成とは、一律の育成ではなく、新人一人ひとりの特性や状況に合わせて指導・支援を設計することです。画一的なマニュアル育成に頼るのではなく、“個人としての新人”と向き合い、関係を育てていくことが求められます。
新人の価値観や目標を知り、深く関心を持って対話し、時に寄り添い、時に突き放す。その「ちょうどよい距離感」を探ることこそ、育成者としての腕の見せ所です。
より具体的な方法では、新人との定期的な対話(1on1)を導入し、その中で「どんな気持ちか」「何に困っているか」「どんなキャリアを描きたいか」を問い返しながら育成の軌道を整えます。これにより、新人は「自分を見てくれている」と感じ、前向きな成長意欲を持つことができます。
中原教授へのインタビュー
ここからは、中原先生が答えて下さった、5つの問いについて、1つずつご紹介していきます。
【質問①】
25年度または26年度に向けて、中原先生が注目されている「新人・若手育成領域」に関する昨今のトレンドや各社の取り組み等はありますか?
採用環境の売り手市場化が進む中、新人は複数の内定を持ちながら、“とりあえず就職”するケースも増えています。その結果、価値観や意欲のばらつきが大きく、内定後の辞退や早期離職のリスクも高まっています。
企業の対応としては、採用時からインターンや実務型アルバイトを活用し、職場との接点を早期に設計する取り組みが広がっています。また、配属先の希望を確約するなどの「配属ガチャ対策」もトレンドとなっております。
一方で、1年目は大切に扱われても、2年目以降に負荷が急に増すことで、キャリア断絶につながるケースもあります。丁寧なオンボーディングとあわせて「2~3年目の継続的フォロー」が欠かせません。
加えて、育成の場として飲み会に頼る手法は通用せず、むしろ逆効果に捉えられる傾向もあります。安心安全な対話の場と、聞く力・寄り添う力が、育成担当者の新たなスキルとして求められています。
【質問②】
時代背景的に、若手社員本人の傾向・職場環境の変化・社会的な労働観の変化等、さまざまな要因により、「新人・若手のオンボーディングの難易度が高くなっている問題」についてどのようなお考えをお持ちでしょうか。
現在、企業は「選ぶ側」であると同時に「選ばれる側」になっています。
人材獲得競争が激化する中で、単に給与を上げるだけでは限界があり、いかに「人で惹きつけるか」と「成長実感を提供するか」が重要になっています。
学生は非正規雇用への不安を持ちつつ、正社員としても「成長できているかどうか」を軸に転職を早期に検討する傾向が強まっています。このため、企業は内定者フォローやOJT、上司の1on1やコーチング強化を通して、心理的安全性やスキル向上を感じられる場を整えることが求められています。
一方で、会社が期待する成長と社員自身が望む成長にはズレが生じやすいため、このギャップを埋める「個別化された育成」がますます重要になります。画一的な施策ではなく、一人ひとりの状況に応じた支援が鍵となります。
【質問③】
個人の価値観もビジネス環境も多様化していくなかで、画一的な育成・オンボーディング支援には限界が出てきていると考えています。
中原先生は「個別化育成」の重要性や効果性についてどのようにお考えでしょうか。
「個別化育成」は人材育成における基本だと考えています。まず、育成とは本来、一人ひとりの状況や能力を丁寧に把握し、それに応じた支援を行うものであり、画一的な手法では多様な人材の成長を十分に促すことができません。
また、個別化育成の効果として、若手社員の成長実感が高まり、キャリアに対する不安の軽減につながる効果があります。成長実感はエンゲージメントの向上や離職防止に寄与するため、企業にとっても非常に重要な観点です。
さらに、AIの活用により、自己理解や振り返りを支援することで、上司の負担を軽減しながら育成の質を高めることも期待できます。
【質問④】
具体的に、どのように進めていけばいいのかわからないというお悩みをお持ちの担当者様も多いと思います。そこで、「個別化育成」を機能させるうえでの取り組み事例や中原先生が注目されているアプローチ等はありますか?
「個別化育成」の実現には、一人ひとりの状態を可視化し、適切に業務をアサインし、振り返りを促すという基本を徹底することが重要です。
ただし、現場の上司だけに負担を任せるのではなく、AIを“知的パートナー”として活用することが効果的です。
具体的には、上司との1on1面談前に、部下がAIを使って自身の経験を棚卸ししたり、思考を整理したりすることで、対話の質を高めることができます。
また、AIを用いたリフレクションの厳格な評価によって、内省の深度が飛躍的に向上した実践例もあります。
さらに、「①まずは自分の基礎学力を高める➡②AIに答えを求めず、自分の考えを立てる➡③AIにフィードバックを求める➡④AIと共に答えを探る」という4ステップを通じて、若手が主体的に学び、AIと協働するリテラシーを育てることが、これからの育成の鍵です。
NEWONEでは、エンゲージメント向上をはじめとした
人・組織の課題解決のヒントとなるセミナーを開催しています。
弊社代表:上林との対話
上林:「新人研修でもAIをうまく共存させることが求められていますよね。最近は、ケーススタディの事前課題もAIに先に答えを作られてしまうことがあるとか。」
中原先生:「そうなんです。でもAI頼みの回答だと、深く考えていないことが見抜かれてしまうんですよ。“あなたはどう感じた?”と聞いたときに言葉にできない、いわゆる“AIスレイブ状態※”になってしまう。」
※AIによって生成された内容を深く理解せず、批判的思考をせずに受け入れてしまうこと。結果的にAIに従属している(スレイブ)状態を指す。
上林:「それに、AIのアウトプットは必ずしも正解ではないですし、企業ごとの現場感が抜けている場合もありますよね。」
中原先生:「その通りです。AIが生成するのはあくまで“平均的・一般的な解”。人事の仕事でも、自社の現場に合った案が重要です。私はこれを“土と泥のついた概念”と呼び、綺麗な答えではなく現場で拾った生の知見こそ価値があると思います。」
上林:「なるほど。では、その“現場感を乗せる力”を若いうちから育てる必要がありますね。」
中原先生:「ええ。今後の新人への教育では、“AIと倫理”、“AIを使った仕事改善”といった内容が重要になってくると思います。」
まとめ
新人育成における「個別化育成」を推進していくためには、個々の状況を丁寧に把握し、成長実感を得られるように支援するといった、人材育成の基本を徹底することにあります。
そのためには、新人だけでなく、現場の上司の関わりが不可欠であり、経験を通じた学びを支えるためにも、上司が日常的に対話と振り返りを促す環境整備が必要です。
一方、AIの活用も昨今は注視されており、若手の内省をサポートする道具として効果的だと言えます。ただし、「AIに頼りきるのではなく、自分で考える“泥臭さ”も重要」とし、テクノロジーと現場支援のバランスが育成の鍵であるとされています。
今後の育成では、AIによる補助と人による支援のハイブリッド型の育成手法がますます広がっていくことが期待されます。
アンケートの声(一部抜粋)
- AI活用に対する最前線の温度感を学び、大変参考になりました。4つのステップを意識できるような育成支援体制の構築について、社内に持ち帰って考えていきたいと思います。
- <そもそも人材育成とは個別化>という中原先生のお言葉に改めてハッとさせられました。年々増えていく新卒採用数にどうしても「新卒」というくくりで見てしまい、個別性という視点が薄まってしまっていると気づきがありました。本部として、現場のニーズも形にしながら「新卒1人1人が活躍できるにはどうすればよいか?」を改めて考えて取り組んでいきます。
- 新入社員の育成に関わるものとして、もやもやすることがとても多かったのですが、先生のお話を聞いて腑に落ちました。
登壇者の声
一年前の中原先生へのインタビューと比べて、AIに関する内容が多かったのが印象的です。それくらいAIが働く環境に浸透してきていると感じます。
これからの人材育成においてもAIをどう活用していくかが大事であり、今回の内容を活かして、現場で推進していただければ幸いです。
