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やりっぱなしの研修を手放すために

やりっぱなしの研修を手放すために

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著者

掛井 柾樹

著者

掛井 柾樹

大学卒業後、新卒で通信会社に入社。モバイルブランドの新規立ち上げ、サービス仕様の運用・管理を担当。2023年に株式会社NEWONEに入社後は、研修をメインとした人材育成・組織開発のHRパートナーとして従事。社外で取り組む個人向けのコーチング経験を活かし、新入社員から管理職の方々が「変わりたいと思える場」の設計を行う。

NEWONEでは、あらゆる企業のご希望やお悩みにあわせた
多種多様な研修を取り扱っております。

どんな研修があるか見てみる

人的資本の開示の動きに伴い、各企業は組織・人材において何に投資をしていくか、より議論が為されるようになってきました。

日頃からご一緒している人事様との話の中でも、「来期は〇〇に集中していく」、「この施策については、より効果・成果にこだわっていきたい」等、施策の取捨選択や効果測定が著しくなったように感じます。

そこで、今回は著書「研修転移の理論と実践」に示唆をいただき、「研修施策の影響・効果を高めるためには?」という論点について、考えていきたいと思います。

本記事をご覧いただいている方々には、釈迦に説法な点かと思いますが、そもそも研修とは何を指しているのでしょうか。

本書から定義をお借りすると、学問的な研修の定義は、以下のように記されています。

「組織のかかげる目標のために、仕事現場を離れた場所で、メンバーの学習を組織化し、個人の行動変化・現場の変化を導くこと」

つまり、組織目標の達成にポジティブな影響を与えている研修のみが、研修なのです。(下表参照)

組織目標の達成にポジティブな影響を与えている組織目標達成にポジティブな影響を与えていない

研修で学ぶことができた


研修で学ぶことが出来なかった

NEWONEでは、各社様とご一緒させていただく際に「そもそもの組織における問題・課題は何か?」という点から人事様と議論させていただきますが、何を実施するのか、ではなく、なぜ実施するのかが重要になってくるという点を私自身も見失わないようにしたいものです。

やりっぱなしの研修にしないために

研修とは、「学びがあり、組織目標の達成にポジティブな影響を与えているものである」とした時、次なる論点は、「研修をいかに”やりっぱなしの研修”にせず、現場での行動を起こさせるには?」であると考えています。

本書には、やりっぱなしにしないためにいくつかの事例も紹介されていますが、本章では、私自身が様々な会社様とご一緒する中で抱いた2つのポイントを記してみたいと思います。

NEWONEでは、エンゲージメント向上をはじめとした
人・組織の課題解決のヒントとなるセミナーを開催しています。

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1.組織への影響・効果を示唆した研修目的を掲げる

研修を実施する際によくある声・感情は「なぜこの研修受けるんだろう」「こんなにも忙しいのに研修で1日とか…」です。

どうしても研修は”自分から受けるもの”ではなく、”会社から受けさせられるもの”になりやすい傾向にあります。

そのため、目新しい観点ではないかと思いますが、改めて、研修目的をどう設定するかが、やりっぱなしになるか、そうでないかを決める分岐点だと感じています。

例えば、管理職の方々向けにマネジメント研修を実施するとします。

内容は、管理職としての役割理解やメンバーへのかかわり方を強化する研修です。

管理職の方々は、非常に忙しい方が多く、「研修なんて…」と思われる方も少なくはないでしょう。

そのような方々に向けては、

「”メンバーが主体的に働くための”マネジメントスキルを習得し、かかわりのイメージをつかむ」

として、この研修を実践した先に、「メンバーが主体的に働く」が手に入れられるかもと意味を持たせることが重要だと考えています。

実際に、弊社では、研修冒頭に研修目的や参加いただく方それぞれの目的・意味付けを大切にしており、必ず持ち帰りが作れるような設計を心がけています。

2.研修後に行動できる仕掛けを半強制的につくる

次に重要だと感じる点は、「いかに行動へのハードルを下げるか?」です。

その点については、本書の著者でもある立教大学の中原淳教授が提唱している「トランジションサポートモデル」が大変参考になります。

研修後、行動に移せないのには、いくつかの理由があると思います。

「忙しくて…」

「急に行動を変えるのは怖い」

「誰もサポ-トしてくれない」

等がよくある理由です。

そこで、「研修後の行動についても”研修の範囲内”、次の研修までに実践してきてね」とし、半強制的に行動を起こさせる仕掛けをすることで、行動に移すきっかけをつくることができると考えています。

時には、行動しづらい内容でも、「研修でやってこいと言われたので…」と実践する言い訳にもできてしまう点も背中を押せますよね。

このように、研修後の行動を半強制的に起こさせる仕掛けを研修に組み込み、行動を後押しするという点がやりっぱなしの研修を無くすためには必要であると考えています。

以上2点が、日頃各社様とご一緒させていただく中で私が考える「やりっぱなしの研修をなくす」ためのポイントでした。

人事施策は、正解の形がなく、参加される方の状況、そもそもの業界特性等、様々な要素が絡み合っていくものだと思います。

難しい状況の中ではありますが、やりっぱなしの研修が減り、働く人たちのエンゲージメントが高まっていくことを願っています。