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生成AIに相談する新入社員が増えている今こそ、“関係性の質”の見直しを

生成AIに相談する新入社員が増えている今こそ、“関係性の質”の見直しを

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著者

稲里 拓都

著者

稲里 拓都

大学卒業後、大手国内メーカーに入社し、人事業務全般に従事。その後、人材系企業2社で営業マネージャーおよび人事マネージャーを歴任。2024年に株式会社NEWONEに入社し、現在は研修を中心に、人材育成・組織開発のHRパートナーとして活動。新入社員の育成体系構築から管理職主導の組織開発まで幅広く支援。

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日々、人事様とお話しさせていただく中で、「新入社員が上司や先輩に聞く前に、まずChatGPTに相談してしまう」という声を耳にすることが増えています。

確かに、生成AIはいつでも答えを返してくれる便利な存在です。
質問しても否定されることはなく、心理的ブレーキもほとんどありません。
“安全で手軽な相談相手”として、AIに頼ることは自然な流れであり、ChatGPTに相談することのメリットも多々あるといえるでしょう。

しかし、その便利さの裏で、「人と人との関係性が育たなくなるリスク」も同時に広がっています。

AIで「個人の生産性」は高まる。でも、仕事は“人と人”で進む

生成AIの活用によって、情報整理や資料作成といった業務効率は大幅に向上しました。
一人ひとりの作業スピードや精度は確かに高まっています。

一方で、現場では依然として、報連相の遅れや認識のズレ、相談不足による手戻りなどが発生しています。
その多くはスキルやプロセスの問題ではなく、“関係性の質”が低下していることに起因しています。

どれだけ個人の生産性が上がっても、信頼関係が築けていない組織では、結果としてチーム全体のパフォーマンスは下がってしまいます。

AIの活用が進むほどに、“人と人の関係”の重要性が際立ってきているのです。

AI頼みでは「文脈・行間を読む力」が育たない

AIは多くの知識を持ち、論理的なアドバイスを返してくれます。
しかし、AIに頼り切っていては、「相手の表情」「声のトーン」「言葉に込められた意図」といった、人と人の関係性構築において大切な「文脈・行間を読む力」は育ちません。

新入社員にとって、上司や先輩に相談することは時に勇気を伴う行為です。
「忙しそうだから」「迷惑をかけたくないから」と感じる心理的ハードルを前に、AIの方が安心して話しかけられる存在に映るのは自然なことです。

ただし、その結果として、人との対話が減り、関係性の構築機会が失われる。
そして、「相手が本当に求めていること」を捉える力が低下していきます。

それこそが、職場の生産性をじわじわと低下させる要因になっています。

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“AIに聞く勇気”より、“人に聞く勇気”を育てる

AIへの相談自体は決して悪いことではありません。
むしろ、業務理解を深めるうえでの補助的なツールとしては非常に有効です。
しかし、仕事の本質はあくまで“人と人との関係”の中にあります。

したがって、AIに頼るだけでなく、人に相談できる勇気と、それを受け止める風土を育むことが何より重要です。

  • 質問を「未熟さ」ではなく「前向きな姿勢」として受け止める文化を醸成する
  • 失敗を咎めるのではなく、学びに変える対話を促す
  • AIでは得られない“共感”や“信頼”を通じて関係を深める

こうした関係性がある職場こそが、AI時代において真に強いチームといえるでしょう。

AI時代に求められる育成担当者としての役割

AIの活用が進む今、育成担当者には、人と人の間に信頼と対話の土台を築くことが求められています。

  • 違和感を抱え込まず、率直に話し合える関係を整える
  • 認識のズレを責めず、共に意味をすり合わせる
  • 誰かが我慢するのではなく、チームとして課題を乗り越える文化を育む

AIが効率を生み出す時代だからこそ、“関係性の質”を整える力が、組織の競争力を左右します。
生産性を高める鍵はテクノロジーではなく、やはり“人と人とのつながり”にあるのです。

おわりに

生成AIは、働き方を大きく変える可能性を秘めています。
しかし、その変化を活かしきれるかどうかは、人と人との関係性をどう築くかにかかっています。

AIに頼れる時代だからこそ、「AIでは代替できない対話と信頼」をどう育てるか。
それが、これからの人材育成における最大のテーマといえるでしょう。