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目次
日々、人事様とお話しさせていただく中で、「新入社員が上司や先輩に聞く前に、まずChatGPTに相談してしまう」という声を耳にすることが増えています。
確かに、生成AIはいつでも答えを返してくれる便利な存在です。
質問しても否定されることはなく、心理的ブレーキもほとんどありません。
“安全で手軽な相談相手”として、AIに頼ることは自然な流れであり、ChatGPTに相談することのメリットも多々あるといえるでしょう。
しかし、その便利さの裏で、「人と人との関係性が育たなくなるリスク」も同時に広がっています。
AIで「個人の生産性」は高まる。でも、仕事は“人と人”で進む
生成AIの活用によって、情報整理や資料作成といった業務効率は大幅に向上しました。
一人ひとりの作業スピードや精度は確かに高まっています。
一方で、現場では依然として、報連相の遅れや認識のズレ、相談不足による手戻りなどが発生しています。
その多くはスキルやプロセスの問題ではなく、“関係性の質”が低下していることに起因しています。
どれだけ個人の生産性が上がっても、信頼関係が築けていない組織では、結果としてチーム全体のパフォーマンスは下がってしまいます。
AIの活用が進むほどに、“人と人の関係”の重要性が際立ってきているのです。
AI頼みでは「文脈・行間を読む力」が育たない
AIは多くの知識を持ち、論理的なアドバイスを返してくれます。
しかし、AIに頼り切っていては、「相手の表情」「声のトーン」「言葉に込められた意図」といった、人と人の関係性構築において大切な「文脈・行間を読む力」は育ちません。
新入社員にとって、上司や先輩に相談することは時に勇気を伴う行為です。
「忙しそうだから」「迷惑をかけたくないから」と感じる心理的ハードルを前に、AIの方が安心して話しかけられる存在に映るのは自然なことです。
ただし、その結果として、人との対話が減り、関係性の構築機会が失われる。
そして、「相手が本当に求めていること」を捉える力が低下していきます。
それこそが、職場の生産性をじわじわと低下させる要因になっています。
NEWONEでは、エンゲージメント向上をはじめとした
人・組織の課題解決のヒントとなるセミナーを開催しています。
“AIに聞く勇気”より、“人に聞く勇気”を育てる
AIへの相談自体は決して悪いことではありません。
むしろ、業務理解を深めるうえでの補助的なツールとしては非常に有効です。
しかし、仕事の本質はあくまで“人と人との関係”の中にあります。
したがって、AIに頼るだけでなく、人に相談できる勇気と、それを受け止める風土を育むことが何より重要です。
- 質問を「未熟さ」ではなく「前向きな姿勢」として受け止める文化を醸成する
- 失敗を咎めるのではなく、学びに変える対話を促す
- AIでは得られない“共感”や“信頼”を通じて関係を深める
こうした関係性がある職場こそが、AI時代において真に強いチームといえるでしょう。
AI時代に求められる育成担当者としての役割
AIの活用が進む今、育成担当者には、人と人の間に信頼と対話の土台を築くことが求められています。
- 違和感を抱え込まず、率直に話し合える関係を整える
- 認識のズレを責めず、共に意味をすり合わせる
- 誰かが我慢するのではなく、チームとして課題を乗り越える文化を育む
AIが効率を生み出す時代だからこそ、“関係性の質”を整える力が、組織の競争力を左右します。
生産性を高める鍵はテクノロジーではなく、やはり“人と人とのつながり”にあるのです。
おわりに
生成AIは、働き方を大きく変える可能性を秘めています。
しかし、その変化を活かしきれるかどうかは、人と人との関係性をどう築くかにかかっています。
AIに頼れる時代だからこそ、「AIでは代替できない対話と信頼」をどう育てるか。
それが、これからの人材育成における最大のテーマといえるでしょう。
稲里 拓都" width="104" height="104">