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なぜ“優秀な若手”が、リーダーになると空回りするのか?

なぜ“優秀な若手”が、リーダーになると空回りするのか?

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著者

本間 俊平

著者

本間 俊平

株式会社NEWONEに新卒入社。研修をメインとして、人材育成・組織開発のHRパートナーとして従事。新入社員・若手から管理職まで幅広い階層の研修設計を支援。社内ではインナーブランディングの一環として、社内イベントの企画を行っている。

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この人ならリーダーとして活躍してくれると思っていたのに、何か違う

大企業における次世代リーダー育成。
年次でいえば入社7〜12年目、年齢でいえば30歳前後の層に対し、
マネジメントやプロジェクト推進を担わせていく動きが加速しています。

しかし、現場のマネジャーや人事からは、こんな声が多く聞かれます。

  • 「仕事はできる。でも、全体を見た判断ができない」
  • 「本人は一生懸命だが、まわりを動かすには至らない」
  • 「言っていることは正しいが、どこか“当事者感”がない」

どれもスキルが足りないというより、“高い視座で物事を捉えきれていない”状態。
そしてこれが、次世代リーダー層の育成において見落とされがちな“根本的なつまずき”です。

本記事はそんな大企業における若手のリーダー育成について考えていきます。

スキルも経験もあるのに、なぜかリーダーとして機能しない人たち

次世代リーダー育成において、企業はたしかに多くの支援を投じています。
リーダーシップ研修、マネジメントOJT、1on1、プロジェクトアサイン…いずれも重要な取り組みです。

けれど、その結果が思うように出ない背景には、「視座が育っていない」ことが潜んでいます。

視座とは、「どこに立って、仕事を見ているか」。
言い換えるなら、「自分の役割や判断を、どれだけ広く・先まで捉えられているか」ということです。

なぜ“視座”が育たないのか?

大企業のリーダー候補となる方たちは、業務を回し、成果も上げています。
その中で「できる人」として認知され、「そろそろリーダーとして」と期待されるのは自然な流れです。

しかし彼らの多くは、「成果を出すプレイヤー」としては成功体験があっても、
「自分の判断が誰にどう波及し、どこまで責任を持つべきか」には十分に晒されていないことが多いです。

なぜなら、

  • 組織が分業化・専門化しているため、「自分の外」への意識が育ちにくい
  • 過去の成功体験(自分で頑張れば評価された)を手放せない
  • 先輩や上司が「考えさせる」よりも「教える」関わりになっている

つまり、「自分の視座が低い」ということにすら、気づく機会がないまま年次を重ねているということです。

「視座が育っていない」とは、具体的にどういうことか?

たとえば、こんな状態を見かけたことはないでしょうか。

  • 資料作成は早くて丁寧。でも、意思決定に必要な情報が抜けている
  • チーム内の調整は頑張っているが、組織方針との接続が曖昧
  • 目の前のメンバーには寄り添えるが、チームとしての方向性を示せない

これらは、スキル不足ではなく「どのレイヤーの問いで考えているか」の違いによって生まれます。
つまり、本人が無意識のうちに“プレイヤーの視座”に立ち続けている状態なのです。

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リーダー育成の本質は、「どこから問いを立てるか」を変えること

リーダー育成というと、多くの企業で「どんな行動をすればよいか」「どうすればうまくチームを動かせるか」といった“答えの精度”に注目しがちです。
しかし、本質的に問うべきは、「その問いを、どこから立てているのか?」という“視点の起点”です。

たとえば、「どうすればメンバーが動くか?」という問いを立てたとします。
プレイヤー視点であれば、「言い方を工夫する」「モチベーションを上げる」といった具体策を探し始めるでしょう。
けれど、もう少し高い視座に立てば、そもそも「このチームは何の目的で存在していて、どこへ向かっているのか?」という問いが先に浮かんでくるはずです。

問いの出発点が変われば、自然と判断軸も、見える情報も変わってきます。


目の前の行動を変えることも大切ですが、その行動を生み出す「問いの立ち位置」そのものがズレていれば、チームは本質的に動かないのです。

リーダー育成において重要なのは、知識や手法のインプットだけではありません。
まずは、「どこに立ち、何を前提に問いを立てているか」を本人自身に問い直させること。
その“思考の起点”に揺さぶりをかけることこそが、育成の核心だと言えるのではないでしょうか。

視座を揺さぶる3つの問いかけ例

① 「この仕事は、誰の何のために存在しているのか?」

ただ“ちゃんとやる”ではなく、
「この仕事が誰の何を進めるために存在しているのか」を問うだけで、言動が変わる。

② 「自分の判断は、どんな影響の波紋を生んでいるか?」

たとえば、1日の報告遅れが誰の意思決定を止めたか?
曖昧な伝え方が、どれだけの時間やエネルギーを消費させたか?
本人に“波及の視点”を持たせることが、責任の質を育てる。

③ 「今の判断が、半年後・1年後にどう影響するか?」

視座の高さは、時間軸の長さでもある。
“今の最適”ではなく、“その判断をしたことで未来がどう変わるか”に目を向ける問いを。

まとめ:「教えるべきはスキルではなく、立ち位置の変え方」

スキルや知識は動画学習をはじめ簡単に手に入るようになりましたが、「どこから物事を見るのが自分の役割か」を理解できていないままリーダーになると、周囲が動きません。

人は、「自分の視座がズレている」とはなかなか気づけないものです。

次世代リーダー育成の最大の鍵は、
「何を教えるか」ではなく、「どこから問いを立てさせるか」。

その原点に、今一度立ち返ってみてはいかがでしょうか。