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目次
少子高齢化が加速する中、多くの企業ではシニア人材の活躍が組織力の維持・向上に欠かせないテーマとなっています。一方で、「役職を外れた後のモチベーションが保てない」「若手との関わり方が難しい」「経験をうまく伝承できない」など、現場ではベテラン社員の活躍を阻む課題も少なくありません。
シニア人材の豊富な知識・経験は、本来、組織にとって大きな資産です。しかし、それを“個人の蓄積”に留めず、“組織の知”として活かすためには、本人の意識変容と仕組み設計の両輪が必要です。
本記事では、セミナー「ベテランが資産化される組織へ」で語られたポイントをもとに、ベテラン人材がいきいきと働き続け、経験を組織的に活かすための考え方と実践のヒントを整理します。
(※本内容は、2025年12月実施セミナーの内容をまとめたものです)
そもそもシニアに残してもらいたいこととは
シニア人材の活性化を考える際、まず立ち止まって考えるべき問いがあります。それは、「シニアに“何でもかんでも”残してもらえばよいのか」という点です。
前提として、シニア層が持つものは一様ではなく、すべてが“組織にとっての資産”になるわけではありません。
長年の経験の中で培われたノウハウや判断軸の中には、今後も再現可能で組織に活かせるものがある一方で、特定の個人や過去の環境に強く依存し、時代変化の中ではむしろ停滞を招いてしまうものも含まれています。
重要なのは、「残すべき資産」「進化させるべき資産」「手放すべき慣習や前提」を区別することです。だからこそ、「シニアの資産を活かす」とは、本人任せに語ってもらうことではなく、組織側が“棚卸しを支援する姿勢”を持つことなのです。
どのように棚卸しをするか
では、その棚卸しはどのように進めればよいのでしょうか。
その考え方の土台として、SECIモデルをご紹介します。
SECIモデルは、個人の中にある暗黙知を、対話や経験の共有を通じて言語化し、組織の知として再構成し、再び個人に内在化させていくプロセスを示したものです。

シニアの資産は、まさにこの「暗黙知」に多く含まれており、単なるマニュアル化では掬いきれない価値を持っています。
ここで重要なのが、本人だけでの言語化には限界があるという点です。
セミナーでは、他者介入が不可避である理由として、大きく4つの観点を紹介しました(スライド記載)

本人だけでの言語化には限界があるからこそ、ペアワークやインタビュー、勉強会、越境学習、あるいは外部の支援者による整理など、他者との関わりの中で言語化を進める設計が欠かせません。
シニアの資産化とは、「語ってもらう」ことではなく、「引き出し、編み直し、組織に接続する」プロセスそのものなのです。
こうして資産の棚卸しや言語化を進めることは重要ですが、それだけでシニア人材が活性化するわけではありません。
本セミナーの後半では、資産を持ちながらも活躍しきれなくなる背景として、多くの企業に共通する4つの「構造的な罠」があること、そしてそれにどう向き合うべきかをお伝えしました。
シニア層に見られる4つの構造的な罠
① ゴール喪失:キャリアに先がなく、目標やゴールが見つからない
役職定年や再雇用を迎えると、「これ以上キャリアは伸びない」「もう目指すものがない」という感覚を抱きやすくなります。
これまで昇進や評価といった分かりやすいゴールを軸に働いてきた人ほど、次の目標が設定されない状態は、大きな空白として感じられます。その結果、「何のために頑張るのか分からない」という心理状態に陥りやすくなります。
② 意味の喪失:意欲高く働く必要性が感じられない
「もう昇給も昇格もない」「残りの年数を無理せずやり過ごしたい」。
こうした声は、決して珍しいものではありません。報酬や処遇が下がる中で、以前と同じ働き方や成果を求められること自体に、納得感を持ちにくくなっているのが実情です。
その結果、仕事に意味を見出しづらくなり、主体的に取り組む動機が弱まっていきます。
③ 行動の不明瞭化:何をすれば良いか分からない・動けない
「何を期待されているのか分からない」「今さら新しいことに挑戦してもいいのか迷う」。
役割や期待が明確に示されないまま年次だけを重ねると、行動の指針を失いやすくなります。
結果として、「とりあえず目の前の仕事をこなす」状態に留まり、未来に向けた一歩を踏み出しづらくなります。
④ 居場所の希薄化:役割を失い、必要とされていないと感じる
最も深刻だと指摘されたのが、「居場所がない」と感じる状態です。
役職を外れ、若手中心のプロジェクトが増える中で、「自分はもう必要とされていないのではないか」と感じるシニア層も少なくありません。
どれだけ意欲があっても、役割や居場所がなければ、人は力を発揮し続けることが難しくなります。
NEWONEでは、エンゲージメント向上をはじめとした
人・組織の課題解決のヒントとなるセミナーを開催しています。
4つの罠への処方箋とは?
これらの罠に対する組織の向き合い方としては、大きく三つのアプローチがあります。
1.意識変容を起こす
まず必要なのは、シニア本人が「自分は今、役割の転換期にいる」という事実を受け止めることです。単に「まだまだ頑張れ」と鼓舞するのではなく、環境変化やキャリアの節目を丁寧に示しながら、しみじみとした腹落ちを促す設計が重要になります。

2.行動変容を起こす
意識が変わっても、行動につながらなければ活性化は起きません。
そこで大切なのが、行動変容に向けた二つのポイントです。
①経験豊富だからこそ「逆」を狙いに行く
シニア層の場合、行動を阻んでいるのは「できないこと」ではなく、これまでの成功体験や役割認識に無自覚に縛られていることが多くあります。
そのため重要なのは、新しいスキルを足すこと以上に、
「これまでのやり方を前提にしない」「元の役割に戻ろうとしない」といったアンラーニングを伴う行動の切り替えです。
経験があるからこそ、あえてこれまでとは異なる関わり方や立ち位置を試す。
この「逆を狙う」姿勢が、新しい貢献の形を生み出す出発点になります。
②自己効力感=確かな手ごたえを得られる設計
アンラーニングを経て行動を変えようとしても、「自分にもできる」「役に立っている」という実感がなければ、行動は続きません。
だからこそ、シニア本人が小さくても確かな成功体験を積み重ねられるように、大きな成果や役割をいきなり求めるのではなく、「小さく」「具体的な」アクションから思考させることが大切です。
「このやり方で貢献できている」「自分の経験が活きている」と感じられること。
その手ごたえが、行動を一過性で終わらせず、継続につなげていきます。
3.居場所と役割を設計する
三つ目のアプローチは、居場所と役割を意図的に設計することです。
多くのシニアが感じている停滞感の背景には、「期待されていることが分からない」「どこで力を発揮すればいいのか見えない」という状態があります。
役職を外れた後であっても、どの領域で、どのような価値を発揮してほしいのかを明確に伝えること。また、本人の経験や強みが活きるポジションを組織として用意することが、居場所の実感につながります。
「いてもいなくても変わらない存在」ではなく、「この役割だからこそ、この人が必要だ」と感じられる状態をつくることが、シニア活性化の土台になるのです。
アンケートの声(一部抜粋)
- 人生100年時代のシニア世代のキャリアについて参考になればと参加させていただいたが、自身で感覚的に考えていたことをいろいろ言語化していただけたので参考になった。
- シニア世代の価値や今後の展望など、興味深い内容でした。また、業種によって引き継ぐ内容が特徴的であることも自身の周囲の参考となりました。
- シニアのモチベーションアップについて、なかなかこれといった解決策が見いだせませんでしたが、タスクアセスメントモデルの4項目など、大変納得性のあるお話を頂けて有難かったです。
- シニア層の活性化に向けた取り組みはかなり議論も進んでいるのだと認識できた。
- シニア層の居場所を用意して、やってほしいこととやらなくていいことを明確にして対話することを、ひとりひとりに対してよりきめ細かく各職場で取り組ませることが必要だと感じました。
登壇者の声
シニア領域に携わるようになり10年近く経ちますが、この領域こそがこれからの日本社会にとって最も大切であり、しかし最も解決が難しいと感じます。自分が若い頃にお世話になった、一時代を築いた世代があたかもお荷物の様に扱われるのを見るのも、まだまだお元気な当人達が引退モードに入るのを見るのも忍びなく、彼ら彼女らに脚光を当てられる様な施策を、企業の垣根を超えて模索したいと、心から考えています。皆さま、どうか是非一緒に考えさせて下さい。
まとめ
ベテラン人材の知識や経験は、本来、組織にとって大きな資産です。
その価値は、本人が意識や行動を変えていくことによって初めて発揮される一方で、それを活かせる状態をつくれるかどうかは、制度や役割、日々の関わり方といった組織側の設計にも大きく左右されます。
本セミナーでお伝えした視点が、シニア層と組織の双方にとって、前向きな変化を生み出すヒントとなれば幸いです。
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