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目次
新入社員研修について人事の方々とお話しする中で、「新入社員に主体性が感じられない」「もっと自分で考えて動いてほしい」といった声を耳にすることがあります。しかし、その課題は本当に新入社員本人の姿勢や意欲によるものなのでしょうか。特に研究職は、業務の特性や構造が他の職種と大きく異なります。そのため、一般的な新入社員育成の考え方をそのまま当てはめると、うまく機能しない場面も少なくありません。私自身、大学で化学を専攻し研究に取り組んできた経験や、研究職として働く方々の話を聞く中で、研究職育成には特有の難しさがあると感じてきました。本記事では、「主体性がない」と見えてしまう背景を研究職特有の構造から整理し、そのうえで育成において何を意識すべきかを考えていきます。
研究職育成で考えるべき3つの背景
研究職の新入社員育成を考えるうえでは、押さえておきたい背景が大きく3つあります。
① 成果が見えにくい
研究業務は、短期間では明確な成果がすぐに得られるものではなく、試行錯誤や失敗を前提として進んでいきます。そのため、自分自身の判断や行動が正しかったのかが分からず、行動することに不安を感じやすくなります。
② 判断の基準の変化
研究職の新入社員は、入社後しばらくの間、既存の手順や知識を正確に身につける業務に取り組みます。この段階では、何をすればよいのか・どの進め方が正しいのかが比較的明確です。一方で、研究が進むにつれて、「どの仮説を立てるか」「次に何を検証するか」といった、明確な正解のない判断を求められる場面が増えていきます。しかし、新入社員にとっては、どのタイミングから、どの範囲まで自分で判断してよいのかが言語化されないまま業務が切り替わることも少なくありません。判断の前提が変化していることに気づけないまま業務が進むと、「今は自分で動いてよいのか」「まだ指示を待つべきなのか」と迷い、行動が止まりやすくなります。
③ 動き出すまでのハードルが高い
研究職は、営業など他部門を介して情報が伝わる構造になっていることが多いです。そのため、判断や行動の前後で情報の確認が必要になる場面が多くなります。また、研究内容の専門性が高い一方で、周囲には同じ専門性を持たない関係者も多く存在します。その結果、自分の考えや状況を説明するために前提から補足する必要があり、コミュニケーションに時間と労力がかかりやすい構造になっています。こうした環境では、動きだすまでのハードルが高くなり、結果として受け身に見えてしまうことがあります。

3つの背景によって起きていること
これら3つの背景に共通しているのは、周囲の期待や判断の前提が、新入社員に十分に共有されないまま業務が進んでしまう点です。成果や評価の基準が見えづらく、判断の前提が業務の中で変化し、さらに動く前に多くの確認や調整が必要な構造が重なることで、新入社員は「何を目指せばよいのか」「どこまで自分で考えてよいのか」をつかみにくくなります。その結果、行動が慎重になり、「主体性がない」と見えてしまう状態が生まれます。しかしこれは、本人の姿勢の問題というよりも、判断できるための前提情報が不足している状態だと考えられます。
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研究職育成で意識したい育成のポイント
研究職育成において重要なのは、「自分で考えて動くこと」を直接求めることではありません。まず必要なのは、新入社員が判断できるための前提を丁寧に共有することです。今どのフェーズにあり、何を期待しているのか。どこまでを自分で考えてよいのか。試行錯誤や仮説出しが歓迎される範囲はどこなのか。こうした情報が言語化されて初めて、新入社員は安心して自分なりの考えを出し、次の行動を選びやすくなります。また、行動や提案があった際には、正解かどうかだけで判断するのではなく、「どの視点が良かったのか」「どこが次につながるのか」といった判断軸を共有することも重要です。これにより、新入社員は自分の思考プロセスを振り返りやすくなり、次の判断につなげていくことができます。
まとめ
研究職の新入社員が「主体性がない」と見えてしまう背景には、本人の姿勢ではなく、判断や行動の前提が十分に共有されていないという構造的な要因があります。だからこそ育成において重要なのは、行動を求めることではなく、今のフェーズで何を期待しているのか、どこまでを自分で考えてよいのかといった判断の前提を丁寧に言語化して共有することです。主体性を育てようとする前に、「主体性が自然と発揮される状態をつくれているか」という視点を持つことが、研究職育成の質を高める第一歩になるのではないでしょうか。