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人的資本開示の本質とAI社会実装が示す、人事の役割のアップデート

人的資本開示の本質とAI社会実装が示す、人事の役割のアップデート

<a href= 小関 一矢" width="104" height="104">

株式会社NEWONEに新卒入社。研修をメインとして、人材育成・組織開発のHRパートナーとして従事。新入社員・若手から管理職まで幅広い階層を支援している。
社内では、チームの組織開発領域を担当し、対話を中心とした取り組みの企画・ファシリテーションを行っている。

NEWONEでは、あらゆる企業のご希望やお悩みにあわせた
多種多様な研修を取り扱っております。

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人的資本開示とAIの社会実装という2つの大きな潮流は、人事の役割そのものを再定義しつつあります。人的資本開示に関しては、企業文化やリーダーシップが企業価値に直結することが明らかになっており、今後投資家が人的資本情報を評価する時代になることでしょう。加えてAIが知的労働を代替することで、正解を出す力より“問いを立てる力”が重視され始めるという変化も起こっています。本メソッドでは、山口周氏の講演内容をもとに、このような人事を取り巻く2つの大きな潮流を解説し、それに応じるために人事に求められる新しい役割を考えていきます。

▼こんな方におすすめ

  • 中期経営計画や人的資本経営を検討している経営・人事責任者の方
  • 人事施策を推進してきた中で、次に向けた軸を模索している方
  • AI時代における働き方の本質を考えたい方
  • 人・組織の未来像に関心のあるすべてのビジネスパーソン

(※本内容は、2025年10月10日実施セミナーの内容をまとめたものです)

山口周氏の講演では、「人的資本開示」と「AIの社会実装」という2つの変化が、今後人事の在り方を大きく変えると語られていました。

これらは単なる技術や制度の変化ではなく、人事そのものの意味を再定義する流れでもあります。まずこの2つの環境変化についてより詳しく説明していきます。

人事を取り巻く環境変化1: 人的資本開示 

事を取り巻く環境変化の1つ目として、人的資本開示が求められることが挙げられます。人的資本開示の流れの背景にあるのは、「企業の業績はどこで決まるのか」という問いです。この問いに対してKorn FerryやDenisonの研究によれば、業績の約3割は“組織風土”によって説明でき、その組織風土の7割はリーダーによって形づくられると言われています。
つまり、企業は株価や企業価値を上げるためにも、「どんな文化を育て、どんなリーダーを生み出しているか」を明確にする必要があるということが言えます。

そういった背景から、これまで経営や人事が独占してきた人材データが、いまや資本市場にも共有される時代になりました。
それにより投資家も、人的資本情報を分析し、企業の文化や人材戦略を投資の評価の対象にしていくことが見込まれます。

このような変化によって、人事という機能が「制度を運用する機能」から「企業哲学や人事戦略を投資家などのステイクホルダーや社会に対して説明する機能」に変化することを求められると予想されます。

人事を取り巻く環境変化2:AIの社会実装

人事を取り巻く環境変化の2つ目として、AIの進化による知的労働の構造変化があげられます。
情報の収集・整理・分析・出力といった仕事は、AIの方が圧倒的に速く、正確にこなします。つまり、「正解を出す力」や「情報を処理する力」では、人間がAIに勝てない時代になっています。
この変化は採用のあり方にも大きな影響を与えることが予想されます。

これまで企業は「正確にタスクをこなせる人」や「正解を導ける人」を求めてきましたが、AIがそれを代替するようになった今、必要な人材像が大きく変わりつつあります。山口周氏はセミナーで、マッキンゼーの大量解雇の例を挙げ、「確実な人を採ることが、むしろリスクになる」と語りました。

AIが正確性や再現性を担う時代では、“確実な人”よりも、“不確実な状況で考え、仮説を立て、新しい価値を創造できる人を採用することが重要になるからです。
このような変化からも、従来の新卒一括採用のように、同質の人材をまとめて採る手法は限界を迎えています。変化の激しい時代においては、スキルよりも「世界の捉え方」や「仮説を立てる感性」を持つ人を見極める採用が重要になります。

2つの変化を乗り越えるために ― 「海兵隊型の人事」へ

上記のような人的資本開示とAI社会実装という2つの変化の中で、人事には新しい役割が求められています。山口氏はこれを「海兵隊型の人事」と表現します。

ここでいう海兵隊とは陸・海・空の3つの領域を自在に行き来することのできる部隊を示します。

これからの人事には海兵隊のように、経営と現場と、そして資本市場、この3つの領域を自在に行き来できる存在になることが重要だと述べています。

そのために必要なこととして以下の次の4つの力を挙げています

  1. 経営戦略と人・組織を橋渡しする力
  2. 統計・財務の知識を持ち、データで語れる力
  3. 投資家や社会と対話する発信力
  4. 現場を動かす実行力

今後は、CHROがCFOと並び、資本市場と直接対話する機会が増えていく事が見込まれます。「なぜこの研修を行っているのか」「なぜこの組織開発が業績に結びつくのか」を、

経営だけでなく投資家にも語れる存在になることが求められます。

豊富な人材データとAIが当たり前になった社会における人事は、経営・現場・市場を行き来しながら、企業と社会をつなぐ中心的存在となっていくことが予想されます。

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まとめ

人的資本開示とAI社会実装という二つの変化は、人事の存在意義を根本から問い直しています。

これからの人事に求められるのは、データを扱う力や制度を回す力ではなく、経営・現場・資本市場をつなぐことです。

人事が哲学と感性をもって社会と対話するとき、組織は初めて人を通して価値を生む存在へと進化していきます。

アンケートの声(一部抜粋)

  • これからHRの仕事が面白くなっていくという最後の言葉が印象的でした。人事担当者は学ばなければならないことが多いですが、出がらし世代の私たちとしては学びの環境を整え、メンターとして役割を果たしていきたいと思いました
  • 人事に配属されて間もないですが、今後、人事に求められる能力が大きく変わるかもしれないと、怖くなりました。人事としても1人の人間としても、今後の働き方を真剣に考えなくてはいけないと身が引き締まる、非常に刺激的な講演でした
  • 山口さんがお持ちの情報量の多さに圧巻でした。そのため得たものが多く消化が追いつきません。AIと人、業績と組織状態の関係、人事の役割、財務領域の理解、環境作り、20代の活躍、会社の本音としての人事異動等々。資料を見ながら改めて振り返りたいと思います
  • AI時代における人事の役割がどうアップデートしていくのか、そのイメージが深まったように感じています

登壇者の声

業績への影響が高い項目として組織風土、その組織風土の7割はリーダーによって形づくられるというメッセージは印象的で、経営や人事がどのようなあり方であるかが改めて重要であるともいます。加えて、AI浸透の未来の話もしましたが、不確実な未来において、少しでも予見するためにも、こういった示唆を得る機会に触れることは大事だなと感じました。本日の内容が、少しでも多くの経営・人事の方々に役に立てばと思っております。