最終更新日:

価値創造とキャリアの”じぶんごと化”~小田急電鉄の成功事例から学ぶ〜

価値創造とキャリアの”じぶんごと化”~小田急電鉄の成功事例から学ぶ〜

“NEW ONE”=新しい視点・新しい自分・新しい組織を見出す場として、毎回、多彩なゲストをお招きし、「これからの“はたらく”」について深く考える機会をお届けします。

第2回のテーマは、「価値創造とキャリアのじぶんごと化」です。

ゲストには、キャリアオーナシップ経営 AWARD 2025で企業文化の変革部門において「最優秀賞(大企業の部)」を受賞した小田急電鉄株式会社から内海健史氏をお迎えし、弊社顧問でありキャリア論の第一人者である法政大学の田中研之輔氏と弊社代表の上林で、キャリア支援のあり方について対話を行いました。

(※本内容は、2025年8月実施セミナーの内容をまとめたものです)

▶︎こんな人におすすめ

  • キャリア申告・1on1対話を全社員に展開する方法を知りたい方
  • 現業部門やエッセンシャルワーカーを巻き込んだキャリア自律支援を検討している方
  • 人的資本経営を推進し、経営戦略と人事戦略を結びつけたい方
  • 組合や現場管理者を巻き込んだキャリア制度導入のポイントを知りたい方
  • 社員の「誇り」や「矜持」を高める取り組みに関心がある方

小田急電鉄内での取り組み

小田急電鉄では、2017年に人事部と経営戦略部が連携し、企業風土改革に向けた検討プロジェクトを開始しました。未来創造会議の実施や挑戦を引き出すための事業アイデア公募制度「Climbers」などを通じ、社員一人ひとりが新しい価値を生み出す風土づくりに取り組んできました。

2020年には「人財マネジメントポリシー」を策定し、「価値創造型人財」を定義しました。その育成に向けては「人財の確保・定着」を最重要課題とし、制度面と風土面の両面から取り組みを強化しました。

2021年には管理職人事制度を改定し、キャリア自律の重要性を提示し、

会社:社内キャリア・パスの多様化
個人:キャリアビジョンの自律的な構築と明示

を方針として掲げ、社員がキャリアをじぶんごととして考えるきっかけを広げていきました。

この方針を具現化するため、2018年度からは管理職および総合職社員を対象にキャリアデザインシートを導入。さらに2024年度からは、一般職社員を含む全社員を対象に自己申告シートでキャリア希望を記載し、上司との1on1対話を年1回以上行う仕組みをスタートしました。

また、制度を支える基盤として、2017年以降は管理職・監督職に対しコーチング研修やキャリア関連教育を継続的に実施。「全管理職をキャリアコンサルタント化する」ことを目指し、社員一人ひとりのキャリアを尊重する風土を醸成してきました。

キャリアオーナーシップ経営AWARD2025 受賞の取り組みとその効果

こうした流れの中で、2024年度から開始した「全社員対象のキャリア申告とキャリア・ライフ対話」が大きな成果を挙げています。約3,600名のうち7割を占める鉄道現業職を含め、全社員が自らのキャリア希望を言語化し、上司と語り合う機会を持つ取り組みです。

初年度には一般職社員の8割がキャリア希望を記載しました。そのうちの8割が「現職でのさらなる成長」を望んでおり、日常業務への誇りとキャリアの積み重ねが結びついていることが明らかになりました。

この取り組みは「キャリアオーナーシップ経営AWARD2025」において企業文化変革部門の最優秀賞を受賞し、審査員からは、

・日常業務に対する誇りと自己肯定感の高さを明確にした点

・社員一人ひとりのキャリアが地域価値創造へと接続している点

が特に高く評価されました。

小田急電鉄が目指す姿

小田急電鉄として「全ての社員がそれぞれのキャリアに”矜持”を持ち、自分自身の言葉でイキイキと語り合える職場風土創り」を目指しています。

この“矜持”を支えに、社員は日常業務に意味を見出し、未来のキャリアを前向きに描いていく。小田急電鉄の事例は、エッセンシャルワーカーを含む全社員を対象にキャリア自律を根付かせた先進事例として注目されています。

クロストーク Q&A

セッション後半では、田中氏と上林から内海氏への質問を通じて、現場浸透や制度設計の工夫が掘り下げられました。

Q(田中氏):「企業の価値創造と個人のキャリアをどう両立できたのか?」
A(内海氏):「未来創造会議で“価値とは何か”を語り合う場を継続し、キャリアをじぶんごと化できる土壌を作った。」

Q(上林):「キャリア申告や対話を現場にどう浸透させたのか?」
A(内海氏):「職場ごとに柔軟に工夫。動画・イントラの活用や、経営層・組合との事前調整で現場が納得して動けるようにした。」

Q(田中氏):「現業社員がキャリアシートを書けるようになった理由は?」
A(内海氏):「いきなり“書きなさい”ではなく、価値創造や未来を語る文化を積み重ねてきたことが大きい。

Q(上林):「人手不足の中での新規事業公募は難しくなかったか?」
A(内海氏):「まずは“就業時間の20%従事”から始め、心理的ハードルを下げる設計にした。」

まとめ

小田急電鉄の施策からキャリアのじぶんごと化には経営方針との連動性と施策の継続力の重要性が必要であることが重要であると分かってきました。言い換えれば、キャリアのじぶんごと化は「仕組み」よりも「継続」によって根付くものです。経営と現場が同じ方向を見据え、粘り強く施策を続けることで、初めて社員はキャリアを語れるようになるのです。

とはいえ、どんな施策をすれば良いか分からないと感じている方も多いと思います。

そのため、施策についてどのような事を行えるか、どのように上位方針と結び付けていくかでお悩みの方は是非弊社にご相談下さい。

株式会社NEWONEでは「すべての人が活躍するための、エンゲージメントを」をブランドプロミスとして研修やコンサルティングサービスを通じて様々な企業様とご一緒しております。

セミナーアンケート(一部抜粋)

  • 未来共創会議を始め組織開発や人事制度の導入など素晴らしい小田急電鉄の地道な取り組みについて、田中先生より現在の多くの企業の環境や課題を踏まえた問いにより更に理解が進みました。
  • 自律的にキャリアを考えるということには、やはり時間がかかること、トップの理解が不可欠であること、そして現場でしっかりコミュニケーションを取って説明することが必要なのだということを再確認できました。有難うございます。
  • とても勉強になりました。自律的なキャリア形成支援を推進し始めたところですが、地道な対話や、それぞれが何を実現したいかを考える機会が重要だと感じました。先だって管理職へのコーチング研修等を実施されていて、よく段取りをされているなと感じました。
  • 大変参考になりました。会社と個人のマッチングが人事の役割とはいえ社外も含めているのは驚きでした。また、責任者にコーチングに加えてキャリア開発の教育も実施されているというところは真似をさせていただきたいと思います。
  • 全社員がキャリアシートを書けているということに驚きましたが、何年もかけて組織風土を作っていく大切さを改めて感じました。

登壇者の声

組織全体をより強くしていくためには、エッセンシャルワーカー含め現場の人々の主体的な意欲向上が重要です。そのテーマに対して、全社員にキャリア自律を根付かせた小田急電鉄社の事例は示唆に富むものでもありました。
また、施策の背景には、従業員に対して誠実に向き合っている姿勢が感じられ、その姿勢が従業員と会社の信頼関係につながっているのだと思います。
本事例が多くの方のお役に立てればと思っております。

関連資料リンク、お問い合わせリンク

株式会社NEWONEでは「すべての人が活躍するための、エンゲージメントを」をブランドプロミスとして研修やコンサルティングサービスを通じて様々な企業様とご一緒しております。

お問い合わせはこちら