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【NEWONE TALK Vol.3】SmartHR社に聞く「働きがいある組織の作り方」(ゲスト:SmartHR社 宮下氏)

【NEWONE TALK Vol.3】SmartHR社に聞く「働きがいある組織の作り方」(ゲスト:SmartHR社 宮下氏)

弊社NEWONEは「推せる職場」を掲げ、エンゲージメント向上や働きがいのある組織づくりを追求しています。


その中で8月から始まった「NEWONE TALK」は、
人的資本経営・キャリア開発・組織文化・エンゲージメントなど、いま多くの企業が直面する課題をテーマに、“これからの働く”を探求する対話型オンラインセミナーシリーズです。

月に1回、1度NEWONE TALKを実施し、人事の皆様の内省に繋がる時間になればという想いのもと実施しております。

今回のNEWONE TALK 第3回のテーマは、
SmartHRに聞く「働きがいある組織の作り方」についてです。

株式会社SmartHR 執行役員 兼 人事統括本部長 宮下竜蔵氏法政大学教授/NEWONE顧問の田中研之輔氏(通称:たなけん先生)をゲストとしてお招きし、弊社代表の上林の3名で、「働きがいのある組織づくり」について議論していきます。

宮下氏は、Smart HRのCHROに就任後、バリューの再作成や、働きがいのある組織づくりに尽力されています。

宮下氏が取り組みをもとに、最近特に注目されている「フィードバック文化の醸成」や「人材の多様化」等の組織課題や効果的な施策について伺いながら、組織と人がともに成長するためのヒントを深掘りしていきます。

※過去の第1回、第2回NEWONE TALKは、こちらからご覧いただけます。

SmartHR社の取り組み

Smart HR社では、「well-working(働きがい)」をミッションに掲げ、

1人ひとりが日々成長実感と自己実現の機会を得て、誇りを持って働くなかで、事業成長をリードしている実感が持てている状態を目指し、「働きやすさだけでなく、働きがいを併せ持った職場環境の構築」を推進しております。

なぜ「働きがい」は大切なのか

ここで、そもそも、なぜ働きがいを追求するのか、について、以下の3つのポイントについて、宮下氏が提言しています。

  1. 【個人】成長・健康・人間関係・人生の充実感を支える
    人生のほとんどを占める仕事を、個人の人生にとって意味のあるものにすると、人生の豊さに繋がる
  2. 【企業】事業成長に大きく寄与する
    離職低下に加え、働く人の労働生産性、顧客満足度が向上する
  3. 【社会】持続可能な社会が実現する
    誰もがその人らしく働くことで、社会全体の生産性・創造性が高まる

この3つの視点で働きがいがもたらす影響は大きく、一人でも多くの個人が働きがいを持って働くことで、事業はおのずと成長の道を歩み始めるとも言えるでしょう。

Smart HR流、働きがいを高める6つの取り組み

  1. 目的と情報の共有
    会社の方向性やストーリーを全社に共有し、経営とメンバーが同じ情報を持つことで、従業員1人ひとりが自律的に動くことが出来るような環境づくりをしています(全社会議や経営会議の議事録の発信等)
  2.  自主性の尊重(納得感のある目標設定)
    評価に対する問題や課題は、本人が納得する目標を設定することで、9割解消されると言います。Smart HR社では、本人の意向に基づいた目標設定が出来るよう、上司とメンバーでの対話を通じて目標を設定するようにしています。
  3. フィードバックと認識(成長実感を得る)
    日々の業務から成長実感を感じるためには、上司や仲間からのフィードバックを得やすい環境であることが重要ですし、フィードバックを当たり前にする・される文化をつくり、浸透させる必要があります。全社単位でフィードバックについて共通認識をとっていくために、中途入社の方も含め全社員に向けてフィードバック研修を実施しています。
    フィードバック文化づくりに加え、全社共通の研修を通じて「共通言語・共通認識」の醸成を行い、フィードバックをし合える環境を作ることも、効果的な施策と言えます。
  4. 成長の機会と提供
    会社が求める人材像を特定し、それをもとに人材を育成、登用することで、メンバー1人ひとりの成長実感と会社の成長を連動させることができます。
  5. 心理的安全性の確保
    バリューに「象」(ためらう時こそ口にしよう)を設定し、時に厳しくも建設的なフィードバックや社内での発言を推奨するようにしています。
  6. 適切な報酬やインセンティブ
     外発的動機(納得感のある評価や給与)+内発的動機のバランスを重視することもポイントです。
     行動評価(バリューに基づく行動)を設定し、個人の行動が会社の成長に繋がっていることを感じられるような設計であることも、非常に重要です。

個人の働きがいを高め、同時に事業の成長を促していくために、以上の6つのポイントをもとに環境づくりや人材育成をすることで、Smart HR社は発展しています。

では、これらの取り組みを進める中で工夫されていることや、昨今の人事施策のトレンドについて、トークセッションをしていきます。

【トークセッション】

「持続性のある働きがいを得るためには何が重要か」

Q. 田中氏
成長の機会と提供について、人は出来ることが増えると慣れに繋がり、働きがいが低くなってきます。「働きがい・成長を無理なく持続的に回していけるような仕組みづくりは難しいなかで、重要となってくるのは、成長に必要なフィードバックを受け入れられる環境であることが非常に重要であると思いますが、宮下氏はどう思いますか。

A. 宮下氏
自分の成長実感をどれだけ見える化するかが重要になってくると思います。
隔週1on1で、出来ていること・出来ていないことを話すような、日々の成長実感を得られる機会を作るようにしています。

Q.  弊社代表:上林
我々も管理職研修で1on1を扱ってはいるが、管理職側とメンバー側それぞれのオンボーディングで意識されている部分はありますか。

A. 宮下氏
面接時に、「フィードバックを受け入れる、コーチャビリティ※が高いかどうか」を見極めることが重要だと思っています。
入社した方や全社員にフィードバック研修を受けていただき、共通言語を作り、機能しやすくしています。

企業文化に対するフィット感か、多様性を重視するか、採用のジレンマに対する施策とは

Q.  田中氏
中途の方を採用する際によくある壁として、中途の方はプロフェッショナルであるが故に自己流に固執するという性質が多くみられると思います。そこで、中途採用には、プロフェッショナリティと企業への浸透力の両方を見ることが重要となってくると思いますが、それに対してはどのように施策を打っているのですか。

A. 宮下氏
これまでは、事業方針がモノカルチャーだったため、一定同質性があることでスピード感や企業文化の適応の点で強みでした。これからはマルチプロダクトや新規事業の方針に向けて戦略を打つ時に同質性が高いと逆にリスクになると思っています。とはいえ、多様な方を受け入れていくと文化の浸透や一体感に影響が出るかもしれません。田中先生から、何かアドバイスはありますでしょうか。

A. 田中氏
組織にとって必要なチーム作りの構想のなかで、戦略的な新卒・中途採用や、入社後の育成施策が重要になります。単年で見るのではなく、5年後にどのような戦略を描いていて、そのためにはどのような人材が必要かを採用に落とし込み、戦略採用をした後、研修で人材育成をして伴走することが重要となってきます。

淡々とこなすだけ人材の働きがいを上げるためには

Q. ウェビナー参加者
淡々とこなすだけの人材に対して、どのように働きがいを持ってもらうことが出来るでしょうか。

A. 田中氏
行動変容が起きるきっかけは、行動軸が他者軸から自分軸に変化した時だと思います。
他者からの評価や組織のために働くだけではなく、「自分のためになる」「今やっていることが資本の蓄積であるととらえ、自分の人生の構築のために主体的に働こう」と従業員が思えると、個人の成長と組織の成長が繋がっていくと思います。

A. 宮下氏
「淡々とやっている」と捉えるのではなく、たとえ小さい業務でも、会社にとっては大切な行動であると目線が変わってくるかもしれないので、上司からメンバーに「小さい業務だと感じているかもしれないけれど、組織にとっては重要な業務だよ」とメンバーに伝える等、対話を通じて、業務に対する捉え方の差分を埋めていくことが大切だと思います。

メンバーの視座を上げるためには

Q. ウェビナー参加者
管理職として、目標設定や現状把握のために、業務を定量化させる必要はわかっているが、膨大に時間がかかります。本末転倒になってしまわないようにメンバーの視座を変えるには、どのように取り組めば良いでしょうか。

A. 田中氏
定量的に可視化していくことにはブレず、定量と定性をつなぐことにAIを導入することも効果的な施策ではないでしょうか。

A. 宮下氏
視座を上げてほしい本人に「情報をどれだけ伝えるか」で視座は変わってくると思います。
本人に考えてもらうために渡す情報量を増やしたり、時間軸を伸ばして思考していただくことが重要になってくると思います。

まとめ

従業員1人ひとりが、日々働きがいや成長実感を得ながら働き続けるためには、上司との関係性やフィードバック文化の浸透、自己実現の手ごたえが鍵となりそうです。

Smart HR社が実際に取り組んでいることを参考に、ぜひ自社の人的資本経営施策にお役立ていただけますと幸いです。

セミナーアンケート(一部抜粋)

  • 働きがいを持続させるにはどうしたらよいのか。そもそも働きがいをどう持ってもらえるのか?日々の仕事を前向きに捉えていない従業員が多い場合は、どのように教育をしていくと良いのか等、考える機会をいただけて良かったです
  • 徹底的な情報共有が組織をグロースさせる、というのが腹落ち感ありました、ありがとうございました
  • 非常に学びの多いセミナーでした。成長実感のダイバーシティマネジメントは、感覚的には重要性を実感していましたが、言語化されたものとしては自分にとって新しい概念で、特に印象に残りました。
  • 人工的なゆらぎを作ることで、結果としてさらに個人の成長につながることというところが印象に残りました。また、時代の流れでAI化が進んでいますがAIと人が共存することで業務効率化、業務に流されがちな自己成長に繋がりやりがいを見出せるのかなと感じました。貴重なお話をありがとうございました。

登壇者の声

“働きがい”をセンターピンに置き、6つの領域に対して、誠実に徹底して施策を進めておられるのが非常に印象的でした。こういった事例を聞くと、できる施策が多くあると感じ、連動できるポイントも多くあると気づかされます。今回の内容が、聞き手の皆さまの戦略や施策にお役に立てばと思っております。

◆登壇者プロフィール

株式会社SmartHR
執行役員 兼 人事統括本部長
宮下 竜蔵

福井県生まれ、神戸大学大学院(MBAプログラム)修了。
大学卒業後、外資系製薬会社に入社し、営業や研修業務を経験。
その後、複数の事業会社にて人事業務(採用・教育・HRBP等)を経験。
前職では、Head of HRとして人事全体のマネジメントを担当。
2023年11月にSmartHRに入社し、人事戦略の策定、タレントマネジメント導入、
CDP(キャリア・デベロップメント・プログラム)等、人事業務に幅広く携わる。

法政大学 キャリアデザイン学部 教授
一般社団法人プロティアン・キャリア協会 代表理事
田中 研之輔

UC. Berkeley元客員研究員 University of Melbourne元客員研究員
日本学術振興会特別研究員SPD 東京大学 /博士:社会学。
一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。
専門はキャリア論、組織論。社外取締役・社外顧問を29社歴任。
個人投資家。著書25冊。『辞める研修 辞めない研修–新人育成の組織エスノグラフィー』
『先生は教えてくれない就活のトリセツ』『ルポ不法移民』『丼家の経営』
『都市に刻む軌跡』『走らないトヨタ』、訳書に『ボディ&ソウル』『ストリートのコード』など。
ソフトバンクアカデミア外部一期生。専門社会調査士。
新刊『プロティアン―70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本論』。
最新刊に『ビジトレ−今日から始めるミドルシニアのキャリア開発』
日経ビジネス 日経STYLE他メディア多数連載 プログラム開発・新規事業開発を得意とする。

株式会社NEWONE
代表取締役社長 上林 周平

大阪大学人間科学部卒業。
アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。
官公庁向けのBPRコンサルティング、独立行政法人の民営化戦略立案、
大規模システム開発・導入プロジェクトなどに従事。
2002年、シェイク入社。企業研修事業の立ち上げを実施。商品開発責任者として、
新入社員〜管理職までの研修プログラム開発やファシリテーションを実施。
2015年より、株式会社シェイク代表取締役に就任。
前年含め3年連続過去最高売上・最高益を達成。
2017年9月、これからの働き方をリードすることを目的に、
エンゲージメントを高める支援を行う株式会社NEWONEを設立。
米国CCE.Inc.認定 キャリアカウンセラー

書籍:「人的資本の活かしかた 組織を変えるリーダーの教科書」を2022年7月にアスコムより出版
書籍:『組織の未来は「従業員体験」で変わる』を2024年6月に英治出版より出版