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知の巨人・山口周氏が語る「資本主義のその先」を見据えた人事戦略

知の巨人・山口周氏が語る「資本主義のその先」を見据えた人事戦略

未来を見据えるリーダーが集う、知の対話の場

2025年10月10日、NEWONEオフィスにて、独立研究者・著作家として多くのリーダーに影響を与えてきた山口周さんにご登壇いただき、特別セミナーを開催いたしました。
オンラインでは約500名、NEWONEオフィスには20名の企業人事領域におけるマネジメント層の皆さまが一堂に会し、未来の人事戦略について語り合いました。

開会にあたり、弊社代表取締役社長・上林周平はこう語りました。

「AIの進化や不確実性が高まる時代だからこそ、正解を探すのではなく、対話を通じてヒントを見つけてほしい」

2017年の設立以来、弊社は「個人が組織と対等に関わる時代」を見据え、人と組織の関係性をアップデートすることに挑戦してきました。
今回のセッションは、その思想を象徴するような、未来の組織づくりを考える知の場となりました。


2030年の経営環境を読み解く、3つの視点

冒頭、上林からは「2030年の経営課題を考えるうえで避けて通れない3つの文脈」が提示されました。

  1. 避けられない労働力不足
    2030年には約644万人の人材が不足すると予測されています。限られた人材をどう活かし、組織の活力を保つかが、すべての企業に共通するテーマです。
  2. 人的資本経営・開示の潮流
    「人」を資本として捉え、経営の成果と結びつけていく取り組みは、いまや経営戦略の中核をなすテーマになっています。
  3. AIの加速的進化
    AIとの協働によって業務の生産性は飛躍的に高まる一方、「雇用の再定義」「格差拡大」といった新たな課題にも、今から備える必要があります。

上林は、これらの変化を「企業の枠を超えた社会課題」と位置づけ、経営層こそが“人”を軸に未来を構想する責任を持つと語りました。


山口周氏が示した、組織の「業績」を決める本質

山口氏の講演は、①人的資本開示②AIの社会実装③人事の役割(HRO)の3つのテーマで構成されました。

1. 組織風土こそ、業績の決定因子

企業の業績を左右するのは「商品」でも「戦略」でもなく、「組織風土」である。
山口氏は、組織研究のデータをもとに次のように指摘しました。

  • 組織風土は企業業績の最大30%を説明する要因である
  • 組織風土の約70%は、マネジャーのリーダーシップスタイルによって決まる

つまり、経営戦略を成功に導く鍵は、現場で人を動かす「リーダーの関わり方」にあるということです。

2. 人的資本開示がもたらす「権力のシフト」

人的資本の開示は、単なる情報開示ではありません。
「情報のあるところに権力は生まれる」という原則のもと、企業の権力構造そのものを変える可能性を秘めています。

これまで社内でしか見えなかった「人と組織の状態」が資本市場に可視化されることで、外部からの期待や評価が企業行動を左右する時代へ。
山口氏は、「他社に追随するパッシブな開示ではなく、経営戦略から逆算したアクティブな開示こそが、人事の価値を高める」と強調しました。

3. 「正解があふれる時代」に求められる人間の力

AIの進化によって、「正解の過剰供給」が進む。
山口氏は、AIにできること・できないことを明確に区分しながら、人間が発揮すべき力を語りました。

「情報を集め、整理し、出力することはAIが得意。しかし、何を問うか、どう解釈するかは人間にしかできない」

創造的な仮説を立て、問いを生み出す力——それこそが、これからの人材に求められる本質的な能力です。

4. HROに求められる4つの進化

変化の時代を生き抜くため、人事部門・HROには次の4つの機能が求められると山口氏は述べました。

  1. 経営戦略と人材・組織の橋渡し
  2. 統計・財務を理解するビジネスリテラシー
  3. 資本市場との対話スキル
  4. 組織変革をリードするチェンジエージェントとしての役割

知を実践へ:エグゼクティブ同士の対話が生む熱量

講演後は、弊社代表・上林を交えたパネルディスカッションを実施。
山口氏の知見をどう実践に落とし込むか、各社の経営・人事責任者たちが率直に意見を交わしました。

続く交流会では、和やかな雰囲気の中にも、経営の核心に迫る対話が繰り広げられました。
「インプットの場」ではなく、「未来を共に構想する場」へ——。
参加者の表情からは、学びを自社の行動へつなげようとする強い意志が感じられました。


おわりに

本セッションは、著名な識者から学ぶだけでなく、志あるリーダー同士が出会い、対話を通じて未来を描く知的共創の場として開催されました。
弊社はこれからも、変化の時代をリードするエグゼクティブの皆さまと共に、“人を軸にした経営変革”を支援し、日本企業の持続的な成長に貢献してまいります。

この度の交流会にご参加いただき、本レポートへの掲載をご承諾いただきました企業様は以下のとおりです。
(順不同、敬称略)

朝日生命保険相互会社、小田急電鉄株式会社、株式会社オリエントコーポレーション、株式会社デジタルホールディングス、東洋製罐グループホールディング株式会社、株式会社ブイキューブ、他多数

本セッション(オンライン)は再配信の実施を予定しております。
当日ご都合がつかなかった方や、ご興味を持っていただいた方は是非ご参加ください。

▼オンライン再配信の詳細・お申し込みはこちら
https://new-one.co.jp/seminar/re-251010/

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