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目次
はじめに
「やりがいを持って働いてほしい」「成長のために任せている」──そんな想いを込めて部下に仕事を託している管理職の方も多いはずです。
けれども、その“任せる”が、メンバー側には「負担ばかり増えて評価もなく、フォローもされない」と感じられてしまうことがあります。口では「期待している」と言われつつ、実際には丸投げされているような感覚です。
一方で、任せた側は「信頼しているから任せた」「自分もそうやって育った」と、まったく違う景色を見ています。
このように、“やりがい搾取”と“成長支援”の境界線は、意外と曖昧で、善意の中でもすれ違いが起きてしまいます。
今回は、人材育成・自律型人材の支援・任せる文化の実践といった観点から、メンバーと管理職、双方の視点でこの構造を見直し、「どうすれば任せることが本当の支援になるのか」を考えてみます。
メンバーの声:「期待」ではなく「丸投げ」に見える
一見、成長のチャンスとして任された業務でも、その背景や意図が共有されていなければ、メンバーには単なる“放置”や“押しつけ”と映ってしまうことがあります。「期待しているから任せた」という言葉だけでは、実際に何を期待されているのか、どこまで裁量があるのか、どこで助けを求めてよいのかが見えず、不安だけが増していくのです。
- 意図が伝わらないまま業務を任される
- 成果を出しても認められない
- サポートや対話がない
結果として、「責任だけ増えて報われない」と感じやすくなります。これは、やりがい搾取の典型的な兆候です。
管理職の声:「信じて任せたつもりだった」
任せた側としては、挑戦の機会を与え、本人の力を信じて見守っていたつもりでも、その想いがメンバーに伝わっていないことがあります。過干渉を避けようと距離を取った結果、「放置されている」「気にかけてもらえていない」と受け止められてしまうこともあります。
育成の意図が善意であっても、それが伝わらなければ効果を発揮しません。任せた後こそ、声かけや振り返りなどのフォローが必要です。マネジメントにおける「信頼して任せる」は、言葉だけでは伝わらず、関わりの積み重ねが求められます。
- 挑戦の場を与えているつもり
- 自分も任されて育った
- 手取り足取りはかえって失礼だと思っている
しかし、それが“放任”に見えてしまうこともあります。
鍵は「任せ方の構造」
やりがい搾取と成長支援の違いは、任せる行為そのものではなく、その前後に「意味づけ」「対話」「フィードバック」があるかどうかです。任せるという行為は同じでも、なぜ任せるのかがきちんと共有されているか、過程を見守る対話があるか、成果に対するフィードバックや承認があるかどうかで、本人の受け取り方は大きく変わります。支援と搾取の分かれ道は、「任せっぱなし」にならない設計にあると言えるでしょう。
■ 成長支援:任せる+目的共有+対話+承認
■ 搾取:任せる+負荷+孤独+報われない
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すれ違いを防ぐために
すれ違いを防ぐには、どちらか一方の努力だけでは不十分です。任せる側と任される側が、相手の立場や受け止め方を意識して行動することで、初めて「任せる」が機能します。
ここでは、具体的に何を意識すればよいのか、メンバーと管理職の両方の視点から整理します。
メンバーができること(やりがい搾取を避ける自衛策)
- 目的や期待を確認すること:何のために任されたのか、どんな成果を求められているのかを言葉で確認することで、納得感や安心感につながります。
- モヤモヤは我慢せず共有すること:不安や違和感をため込まず、率直に伝えることで、信頼関係の形成やすれ違いの早期修正につながります。
管理職ができること(成長支援として任せるために)
- 任せるときは「なぜ任せるか」を伝えること:任せる意図や期待を明確に言語化することで、メンバーが「意味のある仕事」として受け止めやすくなります。
- 定期的に声をかけ、振り返りの場を持つこと:過程を見守っているというメッセージが伝わることで、安心感と挑戦意欲が両立します。
- 成果にきちんと承認・評価を返すこと:「やってよかった」「ちゃんと見てくれている」と感じられることで、次の挑戦にも前向きになれます。
おわりに(やりがい搾取・成長支援・任せる文化の実践に向けて)
やりがい搾取と成長支援の違いに向き合うことは、現代の人材育成やマネジメントの要となるテーマです。特に、自律型人材を育てたいと考える企業にとって、「任せる文化」をどう設計するかは、組織の成長力を左右する重要な論点になります。
任せることは、育成において欠かせない一歩です。 ただし、伝え方や支え方を誤れば、「やりがい」という言葉がプレッシャーに変わってしまいます。
やりがい搾取を防ぎ、成長支援につなげるためには、「任せる=信頼」という前提だけでなく、その前後にある設計やコミュニケーションの質を見直す必要があります。
任せる側も、任される側も、それぞれの立場から対話と思考のアップデートを重ねていくことで、「納得して挑戦できる環境」が組織全体に広がっていくはずです。