(2)首都大学東京オープンユニバーシティー様の事例紹介

“今、企業に求められる「生産性の向上」”というテーマで、依頼を受けて講演を行いました。

(2)首都大学東京オープンユニバーシティー様

イノベーションに必要な生産性の意識


先にお伝えすると、自ら価値を創造できる人というのは、生産性が高くイノベーションを起こせる人と捉えています。では、具体的に「生産性」とは何かというところからご説明いたします。

「生産性」という言葉のイメージも人によって異なり、コスト削減のことを指していたり、製造業で必要なことで自分の仕事はあまり関係ないと捉えていたり、生産性を意識するとコミュニケーションが希薄になる、などと思っている方もいます。
生産性とは、簡単に言うと、必要な資源(時間やコスト)に対して、どれだけ成果が得られたかということになります。


生産性を高めるためには、パターンが2つあります。1つ目は、同じインプット(時間やコスト)で、アウトプット(成果)を最大化する。もう1つは、インプット(時間やコスト)を減らし、アウトプット(成果)は同等、この2つです。


ここで、みなさんご存知の方も多いと思いますが、2年前にベストセラーになった「生産性」という本で、マッキンゼーで人事をやられていた伊賀泰代さんが書いた本をご紹介します。この本のベストセラーが、世の中に「生産性」という言葉を浸透させたと言ってもよいかもしれません。

生産性 ―マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの 伊賀 泰代(著)

この本の中では、生産性向上には、以下4つのアプローチがあると解釈しています。

業務フローを見直し、ムダをなくしてコスト削減しましょう(a)、新技術やビジネスプロセスの再構築をすることによって、大幅にコストを削減しましょう(b)、スキルアップや効率化で付加価値を高める(c)、発送の転換などイノベーションを起こすことで、付加価値を高める(d)の4つです。

特に日本企業では、生産性を上げると言うと、(a)を指すことが多いです。ムダを省いてコストを削減しましょう=生産性だよねと。しかし、この本ではそうじゃないということが書かれています。(a)が正しくないということではなく、上記4つすべてを駆使して生産性を上げていくということです。

イノベーションを起こすことで、生産性を高めるという文脈は何となくイメージがつきますが、逆に生産性を向上することによってイノベーションが起きるということに対し、果たしてそうなのか?と思われている方が多いということが、この本にも書かれています。

生産性を上げると、なぜイノベーションが起こるのかということに対して、この本にわかりやすく書いてありましたので、ご紹介させていただきます。

どんなステップかというと、ホワイトカラーであれサービス業であれ、我々の仕事の80%から85%は定型業務と言われています。どんなにクリエイトするような仕事であっても、日々の業務を分解していくと8割はルーティンだそうです。そこで、まずはそのルーティン業務の生産性を上げていきましょうと。そうすることによって、時間ができる。そのできた時間で、新しいことに投資をしていく。その投資によって、さらに生産性が上がる。こういう好循環を回していきましょうということを、この生産性という本では言っています。

新しいものを生み出そうとする時に、多くの人が忙しく時間がないという現実があります。まずは、時間を作るために生産性を上げる。時間を生み出したら、イノベーションを起こすことに投資する。

先程から、何度もイノベーションという言葉を使っていますが、改めてみなさんが、イノベーションとは?と問われたら、何と定義しますでしょうか?

最近の身近な例で行くと、携帯電話からスマートフォンに変わったこと。単に電話という枠を超えて、手のひらサイズの端末で世界の情報を手に入れるという発想から生まれました。そういう意味で、ジョブズはイノベーションを起こしたと言われています。
イノベーションとは、非連続な変化、創造的破壊と言われたり、ドラッカーは、「既存の資源から得られる富の創出能力を増大させる」「よりよい製品、より多くの便利性、より大きな欲求の満足」などと言い表しています。

では、どうやったらイノベーションを起こせるのか?考え方やステップがあると言われています。

いきなり突拍子もないアイディアが出ればいいですが、まずは、アイディア考え創ってみる、そしてブラッシュアップしていく。その中で新しいものが生まれていくというプロセスになります。

例えば、You Tubeですが、最初は動画を使ったデート相手のマッチングサービスというところからスタートしました。しかし、実際の利用者は、デートとは関係のない動画をアップする人が増え、動画共有のサービスとして使われることがわかり、動画共有にフォーカスしたサービスへと転換した結果、一気に広まったということがあります。
何が言いたいかというと、いきなり動画共有サービスが受けると思って作ったのではなく、やってみたらこっちの方がよいということがわかり、切り替えたという例です。

このようなイノベーションを起こすために、必要なパターンが3つあると言われています。
1つ目が「現状を打破する」ことです。ドラッカーは、イノベーションのための7つの機会の中で、「予期せぬことの生起」を挙げています。例えば、先程のYou Tube の例と近いのですが、Instagramです。最初は、位置情報を共有するためのサービスでした。しかし、ユーザーは、位置よりも「写真」を共有したがることがわかり、写真がよりキレイに見えること、モバイルで簡単にアップロードできることなどに注力した結果、一気に広まるサービスとなりました。

これらは、偶然起こったことをつかまえて、新しい価値に転換したことです。言葉で言うと簡単に聞こえますが、偶然をキャッチすることは難しいと思います。
ここで一つ大事なポイントは、当たり前を疑うということです。普段、当たり前だと思っていることを、なぜそうなのか?と考えてみることです。他の人の視点から考えたらどうなんだろうかと、自分の当たり前を外して考える。例えば、看護師さんは一昔前までは、白い制服を着ているのが当たり前でした。しかし、ある病院で、なんで白なんだろう、白である必要があるのかと考え、ピンクの制服を導入したところ、他にも広まっていったということがあります。

次にパターン2つ目ですが、「未来から考える」ということです。例えば、過去にあったけれども今ほとんど使ってないものって何がありますか?

テレフォンカード、MD(音楽用のミニディスク)。これらは、現在ほとんど使われていません。

では、今あって、近い将来なくなる可能性があるモノは何でしょうか?
例えば、有料通話や小銭などが上げられます。時代が変わっていくと、必要なものも変わっていきます。今何が起こっていて、今後どんな変化が起こりえるのかを考えることが、未来を考えるきっかけとなります。また、ドラッカーは、こんなことも言っています。「変化はコントロールできない。できることは、その先頭に立つことだけである」つまり、変化が激しい時代において、どれだけ変化の予兆を見逃さず、変化に対応する力があるかということが問われてきます。

一方で、我々人間は変化を嫌う生き物だとも言われています。心理学で、チェンジ・ブラインドネス現象と呼ばれるものです。脳は、変化はストレスと捉え、今までと同じがいい、変わらない方がいいと無意識に思っています。
そのため、よっぽど変化に対しアンテナを立て、意識的に考えられるかが大事になってきます。


パターン3つ目は、「顧客(価値提供相手)から考える」です。私たちは「本当のところ、誰に、何を売っているのか?」 例えば、ドリルを買いに来た人は、ドリルが欲しいのではなく穴であるという考え方です。言われてみれば当たり前かもしれませんが、本当のところ、誰に、何を売っているのか?ということを突き詰めて考えていくことが大事ですよということです。

みなさんの顧客は誰ですか?ということを少し一緒に考えてみたいと思います。
例えば、Soup Stock Tokyoの事例でお話しますと、どのような人がスープ専門店を利用するか、ということを徹底的に分析して考えたと言われています。マーケティング用語で言うと、ペルソナ分析と言われるものです。年齢・性別・学歴・仕事・家族構成、さらに、性格・ライフスタイル・目標・考え方・価値観などまで、設定して考えます。誰に?ということを徹底的に考えた事例になります。

次に、スターバックスです。ご存知の方も多いかもしれませんが、スターバックスが他のコーヒーショップと違い、提供している価値とは何でしょうか?
家庭でも、職場でもないサードプレイス(第3の空間)と言われています。

最近では、モノ(商品)ではなく、コト(価値)を売る時代だとも言われています。顧客を起点に、誰に?どんな価値を?提供しているのかを考えることが必要です、というのが3つ目のパターンになります。

AIやロボットの進化で、今ある仕事の半分がなくなると言われていますが、「当たり前を疑う、変化をつかむ、本当の価値を考える」こういうことが我々に求められてくると思いますし、こういうことから新しい価値を生む仕事が残っていくのではないかと思っています。

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