コクヨ株式会社様の事例紹介

“働き方改革時代における次世代新入社員研修” 〜仕事がおもしろいと思う人財の育成〜

コクヨ株式会社様

※写真(左)コクヨ株式会社 HRBP室 大島 広様 (右)株式会社NEWONE コンサルタント 小野寺 慎平

課題・入社時は好奇心や興味関心があることに対して、まっすぐ追求していく方が多い中で、 組織に染まって、小さくなってしまう方が多く、才能を活かしきれていないと感じていた
・1人ひとりの価値観と仕事を結び付けられておらず、「仕事は面白い」と思えない若手社員が増えてしまっていた
効果・受け身ではなく、当事者意識を持って研修・仕事を取り組んでいる方が増えた
・自ら「こんな研修を行いたい」という声も出始めて、自らの成長に対する当事者意識も上がった

[会社プロフィール]
1905年の創業以来、「商品を通じて世の中の役に立つ」という企業理念のもと、一人ひとりの成功・ 成長をサポートすることで、社会全体を豊かにしていくことを企業の目的としています。コクヨグループは、文具、事務用品を製造・販売するステーショナリー関連事業と、オフィス家具、公共家具の製造・販売、オフィス空間構築などを行うファニチャー関連事業、オフィス用品の通販とインテリア・生活雑貨の販売を行う通販・小売関連事業を展開。お客様の「はたらく・まなぶ・くらす」がより豊かになるよう、価値創造と課題解決を実現する商品やサービスの提供に努めています。

[導入サービス]
・次世代新入社員研修
・2年目研修
・3年目研修

[実施概要]
「仕事がおもしろいと思う人を育てる」というコンセプトで、新人研修期間が1ヵ月ある中で、導入と中間と最後の振り返りと大きく3タームにて実施。基礎となるビジネスマインドと、新人が新人に役立つ研修を企画し提案するという実践を通じ、互いに学び合う姿勢や、価値提供することの面白さと難しさを体感する。

「即戦力化」が新入社員の成長を阻害している

− 本日はどうぞよろしくお願いします。改めてとなりますが、コクヨという会社は、どのような会社なのかお伺いできればと思います。

大島様: 大きく3つの事業を持っている会社です。ステーショナリー、ファニチャー(家具)、通販・小売の事業です。どんな会社かと問われると、一般的には身近な消費財メーカーというイメージが強いのですが、社内では「その他製造業というプライド」という話を良くしています。製造業としてモノをつくり出すことは勿論ですが、それらを提供する方法も縛られていないので、色んな課題解決の方法にチャレンジできる会社だなと思っています。
何のために存在しているかというと、「人生の3分の1にかかわる会社」という言葉が、一番しっくりくる言葉だと思います。「働く、学ぶ、暮らす」という人生の3分の1に相当する行動に携わるプロダクトやサービスを、世の中に提供し続けることで、社会貢献できる会社だなと思っています。

− ありがとうございます。若手社員や新入社員の育成について感じている課題はありますか?

大島様:課題は大きく3つあります。
1つ目は、世の中の多様な価値観を、自社の戦力にするまで活かしきれていないことです。例えば、外国籍やシニアの方の話題は昨今よく取り上げられていますが、新入社員や若手社員の価値観も活かしきれていないなと思っています。会社としては「既存の価値観だけに縛られない」というメッセージを発信しているのですが、それを事業にするとか、顧客価値につなげるというところまでは至れていない現状です。
2つ目は、人生経験を積む機会です。「働く、学ぶ、暮らす」という人の根源的な行動に携わるビジネスだからこそ、様々な人の生き方や価値観、生活様式などに興味があり、理解がある人の方が良い提案や商品企画に繋がります。一方で、人生の先輩達と比べると、まだまだ人生経験がそこまで豊富でない20代の時期は、なかなか成果や価値発揮につながらずに悩んでしまうというケースもあります。もちろん若手の方が得意な案件もありますが、自分が経験していないことや、感情的に理解が及ばないことがあった時に、力が発揮しきれないということが起こります。仕事で成果や価値が出せるようになるためには、どうしても、ある程度の経験と時間がかかってしまうという点です。
3つ目は、育成する側のスタンスの話になりますが、即戦力だとか、早期戦力化みたいなことを求めはじめると、元々持っていた好奇心や興味関心を活かすことより、頭が良くて、先輩が言ったことを言われた通りにやれるみたいな人を、若手の時に量産してしまうことです。弊社も数年前まで「新入社員の早期戦力化」というテーマが社内で語られていました。そうすると本来持っている興味関心、好奇心が仕事の場面で出づらくなって、本人としても組織としても、強みや個性を発揮する機会を減らしてしまう可能性もあります。

本当の意味で戦力になる人財とは?

− 今回、新人研修を企画されるにあたって、NEWONEに決めて頂いた要因は何だったのでしょうか?

大島様:一言でいうと、小野寺さんの提案資料にあった「仕事がおもしろいと感じられる人を育てる」というコンセプトです。この一文が、スバリだなと思いました。御社の大事にする価値観と、私達が今後大事にしたいと考えていたことにズレがないなと感じたことが、一番大きな理由です。実は、同時期に4,5社からご提案頂いたのですが、ここまで弊社の意図を汲み取ったご提案を頂いたことはありませんでした。また、ご提案を頂くやりとりの中でも、非常にきめ細やかにサポートして頂けていたので、新しい取り組みを完全に並走して頂けるという信頼感もありました。
私たちも絶対の答えがない中で、変えていきたいという意志はあるものの、まだ言語化できていないことに対して、いろんな観点でディスカッションして頂いたことは、こちらとしては非常にありがたかったです。また、並走という意味では、もう一つありまして、小野寺さんが、打ち合わせの度にご自身の想いも込めて「もっとこうしなきゃダメですよ」と、率直にアドバイスして頂けたことです(笑)。こちらが目指したいところはぶらさず、対等にご意見を頂けたということは、とても信頼につながりました。社外の方に、弊社の新入社員のために、これだけ本気になって頂けているということが、うれしかったですし、本当にありがたかったです。

− 小野寺さんは、コクヨ様に新入社員研修を提案するにあたって、なぜ「仕事がおもしろいと思う人財の育成」というコンセプトをつくられたのでしょうか?

小野寺:コクヨさんが作成された新入社員研修の課題や、今後の方向性が記載された資料を拝見させて頂いた時、新入社員育成に対する考え方や想いに非常に共感しました。目先の配属に向けて新入社員を育てるのではなく、10年後も活躍する人、失敗を恐れず挑戦する人や正解がない中で自分の頭で考える人を育てたいという想いや、研修で正解を教えるのではなく、自ら考え続ける機会を提供したいといったことは、私もずっと思っていたことでしたので、必ず良いカタチにしたいと思いました。そもそも“何で正解を探すんだろう”とか、“何で失敗を恐れるんだろう”といったことから大島さんとお話させて頂きました。そんな中で、私が一番大事だなと思ったのは、やらなきゃいけないからやるのでなく、「それをやること自体がおもしろいからやる」という意識です。主体的に行動しないと怒られるとか、研修で自分の頭で考えろと言われたからという意識が根底にあると、正解を探してしまうことは当然だと思います。なので、今回の研修ではいかに自ら考えて行動したり、より意味のある価値を追求したりすることがおもしろいかを体感頂きたいという想いで設計させて頂きました。

正解がある中での失敗体験は意味がない

− 1ヵ月ある研修期間の中で、特に意識されていたポイントはありますか?

大島様:民間企業が行っている多くの新入社員向けの集合研修は、一般的には、その企業で必要とされる「型」を効率的に伝える意味があると思っています。この企業で生きていくためには、こうしなさいというルールを教え、組織に適応しやすくしてから現場に送り出すという役目があると思っています。しかし、今回NEWONE様と我々は、「仕事をおもしろいと思える人」を育てるために、型にはめるのではなく“放牧する/自律した意思を尊重する”というイメージで新入社員研修を変更しました。ただ、そこには生みの苦しみもありまして(笑) ガチガチの型にはめずに、現場に着任してもらうことによって、良い意味での個性と、悪い意味での弱みがそのまま出てしまい、現場の先輩達からご意見を頂くこともありました。一方で、そのことがきっかけで新入社員が着任する部署の方々とより緊密に会話する機会が増えるなど、その後の育成施策に繋がるきっかけにもなっております。
新入社員視点で言うと、現場に出てから本人が実務の大変さに直面して悩んでしまうことがあります。例えば営業職では見積書の作り方や商品知識、商品企画職であれば商法上のルールなど、自分らしく仕事をする前に覚えなくてはいけない事が多く、仕事を通じて達成感を得るまでに時間がかかるということに本人たちも悩んでいます。

− “放牧する/自律した意思を尊重する”というのは、言葉にするのは簡単ですが、実際は、型にはめるより難しいと思うのですが、研修を設計する観点から、意識したポイント、これはやらなかったということがあれば、教えてください。

小野寺:これをやると現場では失敗するから、これは必ず身に着けようということは言わない代わりに、いかにそれを自分で取りに行くのかというスタンスであったり、その練習が研修期間の中でできることが大事だなと思いました。やらなければいけないことを、いかに自分で見極められるようになるのか、そのために、実践を通じて、相手視点を訓練することは意識しました。また、仕事をおもしろいと思う人を育てようとすると、ともすると「やりたいことしかやらない」自分勝手な新入社員になってしまうのではないかという懸念がありました。そのため、「主体的に行動するけど、生意気と思われるだけではなく、何だかかわいがりたくなる」そんな新入社員になって頂きたいと思いました。上司から見て、こいつかわいいなと思う人は、自分(上司本人)から学ぼうとする人なのではないかという話になり、誰からでも学べることを研修内で気づいて頂きたいと思いました。研修から主体的に学ぶことや、同期同士で学ぶこと、他の人から学ぶということを研修の中でたくさん経験することで、どんな人からも学べるし、学びに行くという姿勢が、放牧された中でも身につくとい良いなと思いました。そして、現場に出た時に、どんな人からも学びに行くことで、かわいがられる新入社員が増えると良いなと思いました。

− 失敗経験をさせたいから、研修の中で失敗させる(=厳しく叱る)ということは、ここ何年かの新入社員育成のトレンドかと思います。今回はそういった研修とはどのような点が違うのでしょうか?

大島様:確かに「無駄な叱責」には意味がないと思います。最近は、グループシミュレーションなどを見ていると達観している人が多いように感じます。シミュレーションの構造を理解し、ゲーム感覚で2、3個落とし穴があるはずだという観点でみて、それを改善する、穴を踏まないようにするにはどうするのか、というような受け取り方をする人もいます。そういった人に対して、いくらシミュレーションの中で失敗させて、叱ったとしても何も響かないなと。本当に伝えたいことを伝えるのが難しいなと思います。

小野寺:失敗させた先に、「はい、これです」というような正解が待っている世界観は、もうやめましょうというお話をさせて頂きました。正解がない中で、自分で考える力をつけるためには、我々が評価をしないということが大事なのではないかなと。これが良くて、これがイマイチということを決めつけないコンテンツができないかなと思いました。そこで、評価者が同期の自分たちという世界観の中で、何かアウトプットを出して提供する。そして、それをお互いに、これは良いが、これはイマイチみたいなことを議論することがやりたいなと思い、同期に向けて自分たちで研修を作ってみるということをやらせて頂きました。

発展途上の自分に自信をもつ

− 同期に向けて研修コンテンツを作るという内容を実施してみていかがでしたでしょうか?

大島様:最初にご提案頂いた時は、正直怖いなと思いました(笑)。完全に自由に「同期に向けた研修を企画する」というテーマは、一体どんなものが出てくるのか、こちらがコントロールできないものが出てきたらどうしよう、ノウハウやTODO系ばかりが出てきて、白けてしまったら、、、など、どうなるかわからないものを進めるのは、大変悩みました。ただ、間違いなくコンセプトには合っているなと。そこで、小野寺さんに仲間になってくださいとお伝えし、社内の関係者たちと何度も議論を重ねた結果、実施することになりました。
例えば、「おっくうをらっくうに(働くという億劫な感情を楽にしよう)」というテーマもありました。そもそも働くって感情って億劫ですよね、みたいなことを提案し同期の共感を得ていました。やはり、上からこうした方がいいと言われることより、同期から出た話には共感できるし響くという一面があります。また、今の自分たちの想いを形に残しておこうという提案もありました。動画や手形を残し、定期的に見直すことをし続けようという内容です。

小野寺:動画をつくったグループの方から、半年後のフォロー研修で、みんなで見ながら振り返りたいと提案を頂いたときはうれしかったですね。

大島様:「次の研修は何をやるんですか?私達は、こんなことやりたいので、やらせてください」というような主体的な声が、新入社員から出てきていました。このような意見が出たということは、私が採用担当だった時代から今までで、初めてだったのではないかと思います。

− 今回実施した内容を、他社さんや、世の中全体に普及していくには、ハードルがあるなと思っています。多くの人事の方は、現場で出来るだけ早く新入社員が活躍できるよう、確実に社会人として必要なスキルやスタンスの習得を、新入社員研修に期待しているように感じます。今回のような、即戦力化を狙わない研修を企画されたのは、どんなお考えがあったのでしょうか?

大島様:私は、むしろ現場の先輩達と協力しながらやらせて貰っていると思っています。弊社だけではなく、多くの企業で新卒採用する理由は、10年後の伸びしろを見据え、中核となる人財として育てるためだと思っています。そのために、どう社会人人生をスタートしてもらうかは、重要なポイントだと思っています。型にはめることは後からでもできるので、そうではない所にトライすることに価値があると思っています。

小野寺:変化の激しいこれからの時代、これまで以上に自分の頭で、何が価値になるのか?自分は何をしたいのか?など考えることが重要になってくるかと思います。そうした時に、「自分で考えて、価値を提供することは面白かった」という体験がこれから新入社員の皆さんが活躍されるにあたって、大きな武器になるのではないかと思っています。

− 新入社員にどんなことを期待していますか?

大島様:講師をご担当頂いた上林さんの言葉をお借りして言うと、「発展途上の自分を信じること」です。今の自分ができる事に、自信を持つことが、とても大事かなと思っています。弊社のビジネスで言うと、働く人、学ぶ人、暮らす人のライフスタイルが変わっていく中で、求められるものもどんどん変わってきています。物は変わらなくとも伝え方が変わっていくなど、結構な頻度とスピード感で発生しているなと感じます。そうした時に、例えば、中高生にキャンパスノートのかわいい柄を知ってもらうために、お店に提案するよりも、今中高生に流行っている漫画家さんにポスター書いてもらうとか、ツイッターでつぶやいてもらうみたいなアイディアは、年配の人からはなかなか出てこなかったりします。今の自分が持っているものは、果敢に出しつつ、足りないところは、先輩や上司などチームメンバーから出して頂き、お客様にお届けするのが私たちの仕事です。発展途上で、全部一人でできなくてもいいけど、できることには自信を持って、人から学ぶ姿勢を持ち、職場の先輩達から愛されながら成長していって欲しいなと思っています。

− 最後に、我々NEWONEに対して感じることや、今後に向けての期待はありますか?

大島様:理念がしっかりされている会社だなと感じています。社員コラムを拝見させて頂いたり、打ち合わせをさせて頂く中で、それぞれ別のタイミングで、別の担当の方とお話させて頂いても、大事にされていることが一貫しているなと思います。若者の成長を信じているとか、挑戦を大事にしているとか、そういうキーワードを重ねられているので、会社として信頼できるということが強みかなと思っています。
また、今回の新入社員研修のように、入りから最後までコミットして頂き、同じチームとしてやらせて頂けるということは、我々にとってはとてもありがたいことですし、御社だからこそやって頂けたことだと思っています。

− ありがとうございます。単に新入社員研修1ヵ月ではなく、3年間という長期でオーダーを頂いていますので、我々も彼らの3年目までをコミットして、これからもご一緒させて頂ければと思います。本日は、貴重なお話をお伺いさせて頂き、ありがとうございました。

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NEWONE担当からの一言

  • 館越 友哉(Tatekoshi Tomoya)

    館越 友哉(Tatekoshi Tomoya)

    コメント

    ご一緒させて頂いてから6年程経ち、現在は2年目終了時点で一人前というゴールに向けて、2年間の育成だけでなく、若手の指導者であるメンター研修も同時に実施させて頂いております。コクヨ様の中でも様々な変化がある中で、その年に合わせたメッセージに変えながら、今後も「仕事を面白くできる人」の育成に向けて、向き合わせて頂きたいと思っております。