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エンゲージメント×キャリア自律から考える、キャリア支援マネージャーの必要性

エンゲージメント×キャリア自律から考える、キャリア支援マネージャーの必要性

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著者

高藤 賢

著者

高藤 賢

株式会社NEWONEに新卒入社。研修をメインとして、人材育成・組織開発のHRパートナーとして従事。新入社員から管理職層まで幅広い階層を支援。社内では提案書の集約システムの構築、社内マニュアルの管理等、業務効率化に向けた仕組みづくりを行っている。

NEWONEでは、あらゆる企業のご希望やお悩みにあわせた
多種多様な研修を取り扱っております。

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組織を取り巻く環境は大きく変化し、経団連の資料には「就労感の変化」に対応すべく、高いエンゲージメントを有する企業と、自社のみならず、優れた能力を持つ働き手が互いに選び合う必要があると記載されています。

これらの外部環境の変化に対応すべく、「組織と人」の関係性が注目され、改めて「エンゲージメント」と「キャリア自律」が注目されています。

「環境に合わせた研修設計をすべきなのはわかるが、管理職にどのような内容を伝えていくべきか明確化できていない」
「固定概念が強い既任管理職に対して、どんな変化を求めればいいのかわからない」

今回のセミナーでは、上記のような課題について、キャリア支援をする管理職の必要性に触れながら、既に手を打たれている企業様の事例をご紹介し、解決の糸口を発見していただこうと思います。

新任管理職のみならず、既任の管理職の方々にどのようなステップで変化を求めていくかにも触れていきます。

※本内容は、2023年12月11日実施の「エンゲージメント×キャリア自律から考える、キャリア支援マネージャーの必要性」セミナーをまとめたものです

選ばれる組織とエンゲージメント

「ファーストキャリアは、御社にすることを決めました」

従来であれば、そんな転職前提の発言をする就活生は採用するわけがない、と思われていたものの、そんなことを言っている余裕もない時代。そろそろ転職しないとまずいという不安がなくとも、転職サイトに当たり前に登録する時代。そんな時代背景もあって、組織と個人の関係は対等になり、組織は働き手から選ばれる魅力を高める必要性が高まってきました。

選ばれる魅力を高めるために、重要なキーワードと言えば?と聞かれた時、皆さんはどう答えるでしょうか。

そのキーワードの一つに「エンゲージメント」があると弊社は考えています。

エンゲージメントとは、簡単に言えば「つながりの強さ」であり、組織・人事領域では、企業と従業員、仕事と従業員のつながりの強さや、組織に対する自発的な貢献意欲、主体的に仕事に取り組んでいる心理状態などを意味する言葉です。

つまり、エンゲージメントが高い状態とは、仕事を「ねばならない(have to)」の状態ではなく、「仕事をやりたくてしょうがない(want to)」の状態であり、従業員がwant toの状態であれば、「働きたい組織=選ばれる組織」になることは想像に難くないでしょう。

では、従業員のエンゲージメントを高め、want toの状態になってもらうにはどうすれば良いでしょうか。エンゲージメントを高める要因はいくつもありますが、今回は「キャリア自律」に焦点を当てて、エンゲージメントを高める方法を紹介します。

キャリア自律とエンゲージメントの関係性

キャリア自律によってエンゲージメントをどう高めるか、を考える際に非常に重要なのが、「キャリア自律のゴール」をどう捉えるか、という点です。

※「キャリア自律」とは、企業や組織に依存するのではなく、個人が自身のキャリアについて向き合い、主体的にキャリアを開発していくこと

(日本の人事部:HRペディアより)

これまでのキャリア論でのゴールは、「組織内でポジションを高めること」と考えられていましたが、先ほど述べたように転職が前提の今の時代、

「キャリア=社会の中でのキャリア」

と考え方が変わってきています。

それに伴い、個人一人ひとりのキャリア自律のゴールも社内でのポジションではなく、「自分なりの心理的成功を得ている状態」に変わりつつあります。

ここで、「キャリア自律により、従業員のエンゲージメントをどう高めるか」という問いに戻ると

キャリア自律を促す
→やらされではなく、自分自身で取り組むこと・取り組み方を決め、仕事をする
→自己決定することが自発的な貢献意欲につながり、エンゲージメントが高まる

という流れで、エンゲージメントが高まると考えることができます。

ここまで、キャリア自律により、エンゲージメントがどう高まるか、について整理させて頂きました。ここからは多くの管理職の方々とご一緒する中で出てきた認知の罠と、その罠を超えるポイントを紹介致します。

NEWONEでは、エンゲージメント向上をはじめとした
人・組織の課題解決のヒントとなるセミナーを開催しています。

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キャリア支援が機能しない管理職の認知罠を越えるポイント

①キャリア支援をすると離職する可能性を高めてしまう

認知の罠の1つ目は、「キャリア支援をすると離職する可能性を高めてしまう」と思い込み、やりづらさを感じたり、1on1などで極力キャリアの話を出さないようにしようと思ってしまう罠です。

もちろん、離職の可能性を0にすることは難しいですが、
2021年に実施されたパーソル総合研究所の「従業員のキャリア自律に関する定量調査」において、

「キャリア自律と他の会社に転職したいという転職意向に相関関係はない」

ということが示され、そのうえ

「キャリア自律を支援することが社員のパフォーマンス向上に寄与する」

ことが分かっています。このことを踏まえ、管理職の方には「キャリアを考えること=離職」ではないことを理解してもらうことが罠を超えるポイントになります。

②部下のキャリアの意向を聞くことは不満やズレを生むことになる

2つ目の罠は「部下のキャリアの意向を聞くことは不満やズレを生むことになる」です。

この不満やズレを生むのではないか、と考えてしまう流れとしてよくあるのが、
キャリア=ポジションととらえてしまう
→それを念頭に部下とキャリアについて対話しようとした際に、「そもそも、今昇進できる枠がないんだけど、どうすれば、、」と悩む
→部下のキャリアの意向を聞き、「昇進したい」と言われた場合に、その意向に応えることができず、部下の不満につながってしまうのではないか、と思う

という流れです。。

ここでポイントとなるのが、冒頭の繰り返しになりますが、
キャリアのゴールを「自分なりの心理的成功を得ている状態」ととらえることです。

そうすることで、たとえ部下のキャリアのゴールが「昇進」だったとしても、
「昇進した先にどんな心理的成功を得たいか」を聞いていくことで、部下本人も「自分は何に取り組みたいか、どのように取り組むか」を自己決定し、昇進の枠が空いているかどうかに限らず納得感のあるキャリア支援ができるようになります。

③キャリアの意向が無い人には支援できない

3つ目は「キャリアの意向が無い人には支援できない」という罠です。

「キャリアとは何か」と聞かれたとき、管理職の中にはどんな仕事をし・どんな成果を上げているかというキャリアビジョン(理想的な未来の姿)を想像する方も多いかと思います。ですが、キャリアの意向としてキャリアビジョンだけを意識していた場合、部下からキャリアビジョンを引き出せない場合に行き詰まってしまいます。このような場合、キャリアに対するイメージを転換することが行き詰まりから脱却する一歩目となります。

では、どのような思考の転換が必要か。

それは、キャリアの意向にはキャリアビジョンだけではなく、キャリアアンカー、分かりやすく言い換えると、自分の価値観や強み等を踏まえながら

「自分はどのような仕事・環境であれば満たされるのか」
「自分が大切にしたいことは何なのか」

が含まれている、と考えを変えることです。

キャリアの意向=キャリアビジョンと考えていた場合、問いかけとして、
「●●さんはやりたいことはある??」と聞くことから始まりますが、

キャリアの意向にキャリアアンカーも含まれると考えた場合、
「●●さんは働くうえで大切にしたいことってどんなこと?」や、
「●●さんはどんな価値を提供できたときに働きがいや楽しさを感じる?」等の問いかけが多様になり、そのうえでどんな心理的成功を描きたいかを一緒に考えることが、部下のキャリア意向を鮮明にしていくキャリア支援になります。

人生の選択肢で溢れている現在、明確なキャリアビジョンがない部下も一定数いらっしゃると思います。キャリアアンカーからキャリアの意向を明確にしていくこともキャリア支援のアプローチの一つとしてとらえる。このような思考の転換がキャリア支援に悩む管理職の方の助けになることも十分考えられるでしょう。

④キャリア支援とは多くの面談をすることである

4つ目は、「キャリア支援とは多くの面談をすることである」と思い込んでしまう罠です。

キャリア支援は面談の中でしか出来ないものでしょうか?

面談でするものだと思っていた方も、またそう思っている訳ではないという方も、実際に「面談以外のシーンでもキャリア支援を出来ている」と答えることができる管理職の方は少ないかもしれません。では、面談以外のシーンで、どのようなシーンでキャリア支援が出来るでしょうか。

NEWONEでおススメしているシーンは「ジョブアサイン」「フィードバック」の2つのシーンです。それぞれ、どのようにしてキャリア支援を行えばよいか、の具体例をお伝えします。

例えば、ジョブアサインによるキャリア支援は、部下に仕事を渡す時、ただ業務を渡すのではなく、部下の強み・課題・意向を踏まえて「期待を渡す」ことで行うことができます。
また、フィードバックによるキャリア支援は、成果物を受け取ったり、仕事の報告を受けた際に、成果物の良し悪しだけでなく、「仕事の進め方として、メンバー本人が提供したい価値をより高めるにはどのようにコミットすれば良かったか」を伝えることで行うことができます。

このような工夫により、日頃から仕事とメンバー本人のキャリアビジョン・キャリアアンカーをつなげることで、合理的にパフォーマンスを高めるキャリア支援が可能となります。

キャリア支援は面談を通して行うことももちろん重要ではありますが、面談だけでしかできない、と思いこまず、日々の部下とのかかわりの中でキャリア支援を行うことが、キャリア自律意識を高めるうえで非常に有効な手段となり得るのです。

セミナーアンケート(一部抜粋)

・キャリアについての意識を社内でもっと高めなければという段階にあるため、方向性を考えるのに頭が整理されました。
・エンゲージメントとキャリア自律との関係について体系的に理解を深める事が出来ました。現場管理職と人事部門との連携について触れて頂けるとより立体的な理解に繋がると感じました。
・必要としている内容であり、管理職にターゲットをあてていただき、支援の難しさを説明いただき有意義であった。
・キャリア支援の考え方について、整理するとともに、新たな知見を得ることができました。
・企業にとってキャリア支援の必要性を再認識することができました。

登壇者の声

特に現場のマネージャーの方々をご支援させて頂くに当たり、「自分がかつてされていたキャリアマネジメント=ポジション論」にハマるパターンが多いと感じております。過去のご自身の経験も相俟って、キャリア支援という内容への誤解も生まれやすい中で、ちゃんと腹落ちし、現場で適切にマネジメントスキルとして使いこなすことができるマネージャーが増えることで、組織全体のパフォーマンスが高まることを願っております。ありがとうございました。


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