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ホワイトハラスメントとは

ホワイトハラスメントとは

<a href=小野寺 慎平" width="104" height="104">

大学卒業後、(株)シェイクに入社。企業の人材育成や組織開発のコンサルティングを行う。2018年1月(株)NEWONEに参画。商品開発・マーケティング、組織開発、研修のファシリテーターなどで活動する傍ら、「仕事そのものが面白いと思う20代を増やす」をテーマに20代向けの能力開発の新規事業を立ち上げる。

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昨今様々なハラスメントが問題視されていますが、これまでとはある意味真逆のようにも思えるハラスメント、**ホワイトハラスメント(略してホワハラ)**が話題になっています。

ホワイトハラスメント(略してホワハラ)とは、上司が部下に対して過剰に配慮することで、結果的に部下の成長機会を奪う行為を指すそうです。

この言葉は、2024年4月から放送されていた、川口春奈さん主演のドラマ「9ボーダー」がきっかけで広まりました。

本ドラマの中では、「残業しなくていい」「私がやっておく」といった言葉が、「指導してくれない、ホワハラだ」と部下に受け止められ、「ホワハラだ」と反発するシーンが注目されました。

厳しすぎるパワハラ、がハラスメントの代表格でしたが、ついに優しすぎもハラスメントだ!と言われ始めたのです。

皆さんはどう思われますでしょうか。

昨今は、何でもかんでもハラスメントとなってしまってもうどうしたらいいんだ、という意見もあれば、不快な思いをした側が○○ハラスメントという共通認識がある分主張しやすい、という意見もあるかも知れません。

今回は良いような悪いような、〇〇ハラスメントについて、特にホワイトハラスメントについて、どのように向き合っていくと推せる職場に近づいていくのか考えてみたいと思います。

心理的安全性のパラドックス

私は〇〇ハラスメントという言葉が広がることで、心理的安全性のパラドックスが多くの職場で発生しているのでは?と思っています。

心理的安全性の提唱者であるエイミー・エドモンドソンは、心理的安全性とはチームのメンバーが恐怖や不安を感じることなく、安心して発言や行動できる状態と定義しています。

例えばパワハラ、という概念が共通認識になることで確かに苦しさを感じていた人にとっては、心理的安全性が高まり、発言がしやすくなるかもしれません。

一方で、それはそうだろ、という感じではありますが、ハラスメントをしている側はものを言いづらくなるため心理的安全性は下がります。

これは明らかに他者に対して度を超えたハラスメントを行っていたのなら、仕方ないことなのかもしれません。

しかし、この〇〇ハラスメントというものが、広がるにつれ、まさに今回のホワイトハラスメントに象徴されるように、相手に対して踏み込めず人間関係が希薄になることでさらにハラスメントが起きやすくなることがあるわけです。

ハラスメント研修でもっとも強調されるのは、ルールを覚えるというよりは関係性が大事です、見誤らないようにしつつ、信頼関係を築きましょう、という点です

つまり、ハラスメントが起きない職場を作るためには、まさに何でも言える関係性を築く必要があるわけですが、ハラスメントという言葉が広がったために、関係性が希薄になってしまう、という心理的安全性パラドックスが生まれているわけです。

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パラドックスとして受けとめて超える

ではこのパラドックスにどのように向き合っていくと良いでしょうか。

まず大事なのはパラドックスとして受けとめるということです。

何でもかんでもハラスメントだという人が悪い、いやいやハラスメントには厳しくしないといけない、と主張が対立し、片側の視点のみしか見えなくなってしまうと前に進みません。

そしてその状態を放っておくと、恐らく、よりマジョリティの声や社会的に“一般的“と言われる方向に少しずつ流れていくのではないかと思います。

つまりハラスメントだと言われるくらいなら、関係性は薄くていい、となっていき、前述の通りパラドックスに陥っていきます。

そのためまずは、どっちの感情も難しいけど分かる、という立場にできるだけ多くの方が立ち、どのようにしたらパラドックスに陥らず、本来の目的である心理的安全性を保ち続けるのか、という点に向き合っていくことが大事です。

そして難しいけど分かる、となったら、“次は少しでも市場規範ではなく社会規範で関係性をつくっていくには?”と考えていくとパラドックスを抜け出す糸口が見えてきます。

市場規範と社会規範とは、行動経済学の概念で、 社会規範は共感や信頼をベースにした関係性の規範であり、市場規範は損得をベースにした規範です。

どちらの規範が支配的な職場になっているかで、大きく風土は異なります。

少し脱線しますが、この二つの違いとして、イスラエルの託児所の事例が面白いのでご紹介します。

イスラエルのある託児所では、親が子供の迎えに遅れることが問題になっていました。そこで託児所は、迎えの遅れに対して罰金を課すルールを導入しました。

このルールが導入されたことで、なんと、遅れて迎えにくる親が増えたのです。

これは、罰金の導入によって、遅刻が「先生や他の親への迷惑をかける行為」から「お金を払えば許される行為」に変わってしまったため、と言われています。

社会規範に基づく罪悪感が消え、金銭的な対価さえ払えば良いという市場規範に置き換わったことで、親たちが遅刻するハードルが下がったのです。

この話と同様に、職場の風土が、交換関係(市場規範)をもとに成り立っていると、各自が自身の権利を主張するなど利己的な側面が引き出されやすくなります。

反対に、社会規範が支配的であれば、お互いに対するモラルが働き、思いやりや感情への配慮が生まれやすくなります。

私もよく妻としてしまう会話ではありますが、「昨日洗濯畳んどいたから、あなたこれやって」「いやそんなこと言うなら、食器洗ったよ?」のような交換関係をベースとした議論は不毛であり、お互いに「ありがとう」と言えれば双方の家事への意欲が高まるかもしれません。

同様に、心理的安全性のパラドックスを超えていくためにも、どこまでが〇〇ハラスメントなのか、といったハラスメントそのものについての議論をするのではなく、お互いや職場が何を求めているのか、という点を十分に話し合っていくことが大事なのではないでしょうか