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組織におけるキャリア施策の段階的アプローチとは?

組織におけるキャリア施策の段階的アプローチとは?

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著者

青木 美奈

著者

青木 美奈

株式会社NEWONEに新卒入社。研修をメインとして、人材育成・組織開発のHRパートナーとして従事。新入社員・若手から管理職まで幅広い階層の研修設計を支援。特に女性活躍、ダイバーシティ推進に注力している。社内では、メソッド記事の作成を推進している。

NEWONEでは、あらゆる企業のご希望やお悩みにあわせた
多種多様な研修を取り扱っております。

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人生100年時代の到来や、若手を中心とした労働観の変化等により、キャリア自律を推進することのニーズが高まってきています。今回は、企業内でのキャリア施策にどのような変化があり、どのような施策を打つのが効果的なのか、ご紹介します。

(※本内容は2024年1月17日に開催した「組織におけるキャリア施策の段階別アプローチとは?」をまとめています)

企業における「キャリア開発」

『「キャリア自律」とは、企業や組織に依存するのではなく、個人が自身のキャリアについて向き合い、主体的にキャリアを開発していくこと』と、日本の人事部HRペディアでは定義をしています。2018年に、日本経済団体連合会(経団連)の中西宏明会長が「1つの会社でキャリアを積んでいく日本型の雇用を見直すべき」と提言したように、今後は加速度的にこれまでの日本的なメンバーシップ型の雇用形態が各社で見直され、個人がキャリア形成を主導することが求められるようになってきます。

キャリア観の変化

ジョブ型雇用への転換に伴い、組織視点のキャリア自律ではなく、個人視点のキャリア自律へと視点が変わってきています。

これまでは、組織の中でキャリアを主体的に築く力である「組織視点のキャリア自律」が重視されてきましたが、これからは、社会の中でキャリアを主体的に築く力である「個人視点のキャリア自律」が重視されるようになっていきます。

これまでの組織視点のキャリア自律(伝統的なキャリア)とこれからの個人視点のキャリア自律(プロディアンキャリア)の最大の違いは、成果が企業内のポジション論から個人の心理的成功へと変化している点です。

1つの会社で新卒から定年まで働き続ける日本的雇用慣行が崩壊し始め、1つの会社、組織の中における成功を追い求める価値観から、「自分にとっての心理的成功」を求める価値観へと変化してきているのです。

このように、キャリアのとらえ方が変わりつつある要因は、日本的雇用慣行の崩壊、人材流動化といった社会的背景に加えて、人々の価値観が変化してきたことも影響しています。

物不足世代と呼ばれていた昭和の時代には、物が不足していたので、生産すればするほど製品が売れてゆき、頑張れば頑張るほど組織内で高い地位や給料を獲得することができました。その時代においては、昇進、昇格こそがキャリアの充実だとされ、飢餓感からくるモチベーションに基づいて強くのしあがることが求められました。

しかし、現代は物余り世代と呼ばれています。物が充実しているため、自分の心理的成功を大切にする価値観に変わりつつあります。最低限の必要なものが担保されている中で、給料に合わせた働き方を求める人が増えてきています。

キャリア観の変化にどう対応するか?

このように、社会環境や人々のキャリア観は変化してきている中、各社で難しさを感じている要因は、組織視点のキャリア自律と個人視点のキャリア自律が対立構造にあるためです。自組織の中でキャリアを歩んでほしいけれども、個人視点でキャリア自律しており、主体的に自社で働いている人材を確保したいと考える会社が多いでしょう。

低いレベルでwin-winな関係性では、自社限定で活躍できる能力のみを高める育成をすることで、人材の流出を防ぐことはできますが、自社を辞めずにぶら下がる低エンゲージメントな社員が増えてしまう可能性があります。

高いレベルでwin-winな関係性では、社員1人ひとりの主体性を開発することで、キャリア自律し、主体的に自社にいることを決めている高エンゲージメントの社員を増やすことができます。人材の流動化の社会的な流れは止められない現状がある中、自社につながりを持ってできれば長く働いてほしい、というお声が人事の皆様の本音かと思います。

NEWONEでは、エンゲージメント向上をはじめとした
人・組織の課題解決のヒントとなるセミナーを開催しています。

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キャリア施策推進のポイント

キャリア施策の推進は、組織内で様々な考え、価値観を持っている人が混在しているからこそ難しいと言われています。キャリア施策を推進するポイントは大きく分けて2つです。

ポイント① アクターごとの開発段階を知る

キャリア施策の開発段階をアクターごとに分けて考え、それぞれのアクターがどの段階にあるのか、現状をまずは認識する事が重要です。

キャリア施策では、個人、上司、制度・仕組み、経営・人事といった多くのアクターがいます。キャリア施策を全体像としてとらえるのではなく、各アクターにおけるキャリア施策がどの程度まで開発されているのか、現状をまずは認識することが重要です。そのうえで、キャリア開発が不足している等、課題感の大きいアクターに着目することで、「今自社に必要なキャリア施策は何か?」が具体的に見えてくるようになります。

ポイント② ソフトとハードの両面からの改革

キャリア施策の推進においては、2つの壁があると言われています。社員のマインドの壁といったソフト面、組織風土や制度の壁といったハード面の壁です。キャリア意識の醸成は、人事領域の中でも特に手ごたえを得られるまで長期間かかる内容です。ハード面の整備を進めたからといって、そこで働く人々の意識が変わらなければ、制度は上手く活用されず、形骸化していく可能性があります。反対に、社員のマインドが変化してきたとしても、組織の風土や制度が追いついていない場合にもどかしさを感じる人がいるかもしれません。

キャリア施策の推進は、効果が出るまで時間がかかるという前提に立ち、ソフトとハードの両面からアプローチすることが必要です。

セミナーアンケート(一部抜粋)

・施策を検討していく上で、4つの観点(個人、上司、制度、投資)と6つの人事機能をクロスして考える点がとても参考になりました。キャリア自律施策をワンオペしているので、体系的に整理してフレームワークのヒントを頂戴できる機会がありがたいです。
・社員のマインド面と、制度面を同時に進めなければいけないというお話は非常に納得感がありました。弊社ではNEWONE様の1on1研修を導入予定で、そこでキャリア支援の仕方のレクチャーを課長・部長層に行う予定ですが、制度面が追い付いておらず、急ぎ進める必要があると感じました。
・キャリア自律の重要性を改めて実感することが出来ました。経営陣へキャリア自律の重要性をどう理解してもらうかが大事になってくると考えました。経営セミナーの開催についてはとても参考になりました。
・組織内でのキャリア開発アプローチについての考え方が理解できて有意義でした。
・他社さんのキャリアに関する施策の状況が知れてよかった。

まとめ

キャリア施策を推進していくうえでは、長期的な視点でとらえ、自社の状況、課題感に合わせて施策を実施することが必要になってきます。まずは自社におけるキャリア自律の言葉の定義を明確にし、「どのような状態がキャリア自律をしている状態なのか」キャリア施策推を推進した先のゴール状態を決めて発信することが重要です。キャリア自律の定義は組織によって異なるからこそ、自社における意味をまずは定義し、そのうえで現状を把握することから始めてみてはいかがでしょうか。


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