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エンゲージメントとキャリア自律から考える~キャリア支援をする管理職の必要性~

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近年、エンゲージメントとキャリア自律が社会的に重視されています。その文脈で、「キャリア支援」という言葉や概念を聞く機会も増えているのではないでしょうか。本記事では、「キャリア支援って具体的に何をしたら良いのかわからない」「そもそもキャリア支援って必要なの?」という疑問にお答えします。

(※本内容は、2022年5月19日実施HRカンファレンスの講演内容をまとめたものです)

1. 変化する環境におけるエンゲージメントとキャリア自律の関係性

働く環境、価値観が大きく変化してきた現代。人生100年時代に合わせて様々なキャリアを描くマルチステージ制の時代へ突入し、企業と働き手が互いに「選び合い」、組織の目標と働き手のキャリアビジョンのベクトルを合わせて、ともに成長していくことの重要性が指摘されています。

互いに「選び合う」ということは、組織と人が縦の従属関係から、今後は組織と人が対等に選びあっていく横の関係に変わっていくことが必要です。この横の関係になるための鍵となるのが「エンゲージメント」です。

エンゲージメントとは?

エンゲージメントは、企業と従業員、仕事と従業員のつながりの強さや、組織に対する自発的な貢献意欲、主体的に仕事に取り組んでいる心理状態などを意味します。

エンゲージメントは、組織と人が上下の従属関係にある状態で測られる従業員満足度やロイヤリティ、一時的な個人の思いであるモチベーションとは異なり、組織と人との対等なつながりを指しています。

※参考:「エンゲージメントとモチベーションの違い

エンゲージメントを向上させて目指すべきなのは、「仕事をやるべき(have to)」ではなく、「仕事をやりたい(want to)」と自発的に思える状態です。その状態にするために、キャリア自律が必要不可欠だとNEWONEでは考えています。

マルチステージ制の時代に突入し、人材流動化が激しくなった今だからこそ、キャリア自律、つまり自ら選んでこの会社で働いている、やらされているのではなく自ら選択している状態にしなければ、その組織へのエンゲージメントは高まりません。

※マルチステージ制の時代:従来の「学生」「仕事」「老後」の3ステージから人生を考えるのではなく、人生100年という考えに基づきキャリアを考える時代傾向。

キャリア自律とは?

では、どのような状態であれば「キャリア自律ができている」と言えるのでしょうか。

NEWONE顧問の田中研之輔教授は、プロティアン・キャリアへの転換の重要性を指摘します。

プロティアン・キャリアとは、キャリアを資源ではなく「資本」として捉えて、能力を蓄積していく過程です。自らの目的ややりがいを達成したことによる達成感などの心理的成功によって成果を得ます。つまり、自分で決めたことに対して手応えを感じながらキャリアを歩んでいく、という考え方です。

キャリア自律のゴールは、「自分なりの心理的成功を得ている状態」、つまり、得たいやりがいや目的を「自己決定」し、そのために取り組む事や取り組み方を「自己決定」できている状態です。キャリア自律をしている人の特徴は、自社が宝の山なのだ、という捉え方をしている人、まだまだこの会社をいい意味で使い倒せる、と考えている人です。

改めて、企業側が個人のキャリア自律を支援する意味を考えてみます。キャリア自律を促す、ということは内発的動機を向上させていく、つまり、やらされているのではなく、自分で選んでこの会社に所属して、この仕事をしている、という状態にしていくことです。この会社を自ら選んでこの仕事をしていると感じられることでエンゲージメントが高まり、人的資本の最大化につながります。

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2. キャリア支援が機能しない管理職の認知の罠を越えるポイント

キャリア自律をしてエンゲージメントが高い状態を目指すために、今回は管理職からの支援に焦点を当てて進めていきます。管理職の方が陥ってしまいがちなキャリア支援が機能しない「認知の罠」を5つご紹介します。

誤解①キャリア支援をすると離職する可能性を高めてしまう

「キャリア自律を支援することで離職していってしまうんじゃないの?」と不安を抱えている管理職の方もいるかもしれません。その不安は、キャリア自律とは何か、その意味、状態を誤解してしまっていることから起こります。

キャリア自律している状態とは、「自ら選んでその会社にいる」と感じている状態のことを指します。キャリア自律をしているからといって直接的に離職とは繋がりません。それどころか、自分の業務や役割に対して主体的に取り組んでいる状態にあるので、社員のパフォーマンス向上に繋がります。

誤解②部下のキャリアの意向を聞くことは不満やズレを生むことになる

「部下のキャリアの意向を聞くことで、今の職場でできないことが出てきたらどうしよう」と不安になる方もいるかもしれません。そんな時は、キャリア自律支援の目的を捉えなおしてみるといいかもしれません。

そもそもキャリア自律のゴールは、心理的成功を得ることです。「自分は今期この能力を高めたい!」という部下の目的に対してその達成を上司が支援することがキャリア支援です。

ただし、キャリア自律では社内で特定のポジションへ昇進することだけが心理的成功に繋がっているとは限らないので、1人ひとりが得たいやりがいや目的に合わせて応援することが重要です。

誤解③キャリアの意向が無い人への支援はできない

「キャリア」と聞いて、数年後の自分の姿や将来像を思い浮かべ、明確に想像するのは難しいと感じることを、キャリアの意向がない状態だと捉える方が多くいます。

ここで、「キャリア」という言葉の定義を確認しましょう。「キャリア」には大きく分けて2つの意味があります。

● キャリアビジョン:3年後にどうしたい、こうなりたい、というイメージ(このポジションにつきたい)など、理想的な状態を考える

● キャリアアンカー:働く上で、〇〇を大事にしたいといった価値観

「キャリア」と聞いて想像されやすいキャリアビジョンについてはそこまで具体的に考えられていないけれども、キャリアアンカーはほとんどの人が無意識的に持っているでしょう。つまり、そもそも「キャリアの意向が無い人」というのは存在しないのです。

しかし、キャリアアンカーを含めたキャリアの意向を面談だけで引き出すのは難しい場合もありますよね。そんな時は、Cocolaboの意向確認支援ツール「カルテ」を活用することで部下のことをより深く理解する助けになります。

※気になった方は、Cocolaboのツール「カルテ」をログイン不要・無料で行える診断サービス、「はたらく価値観診断」をお試しください

誤解④キャリア支援は、工数がかかる

結論からいうと、キャリア支援には膨大な時間や人数は必要ありません。1on1によるキャリア支援が可能であり、限られた時間でも具体的な課題に集中し、ピンポイントの対話を行うだけで効果的な支援ができます。すでに多くの会社で1on1が実施されていると思いますが、ここで大切なのは、1on1は部下のための時間であり、上司のためのものではないという認識です。この場を設ける目的は、相手がどんな人で何を大切にしているのかを知ることにあります。

対話の中で特に力点をおくべきポイントは以下の3つです。

  • 強みの抽出
  • キャリアアンカー(仕事観)
  • キャリアビジョン(理想の未来)

このようなポジティブな内容を話し合うためには、それ以外の内容やネガティブな要素が日常生活の中で解決されているか、あるいは発生しにくい環境が整っていることが重要です。そうした環境づくりができるのが、優れたマネージャーの特徴と言えるでしょう。

日常業務の中で取り入れられる具体的な手法については⑤でご紹介します。

誤解⑤キャリア支援とは面談の数や時間を増やすことである

「キャリア支援って面談をたくさんすることでしょ?大変そう」と思う方も多いかもしれません。しかし、キャリア支援の方法は面談だけではありません。④で述べたように、要点を絞った1on1の面談を効率的に行い、その内容を日常業務に活かすことでキャリアの支援を行うことが可能です。

ここで鍵となるのが、キャリア自律のポイントである「心理的成功」です。皆さんが心理的成功を感じた瞬間はどんな時でしょうか?褒められた時、部下の成長を感じた時など、さまざまな瞬間があると思います。心理的成功とは、取り組んだ仕事と自分の現在や未来の姿とのつながりを実感できた時に感じられるものです。

そのため、組織や仕事と社員の結びつきを強化することが必要です。管理職は、メンバーが行う仕事と彼らのキャリアの意向(現在および未来の自分)を繋げる結節点としての大事な役割を担っています。

管理職は、仕事や会社の方針を「与える」という意識から、組織や仕事とメンバーを「繋げる」という意識への転換が求められます。

具体的に、面談以外で現場だからこそできることには何があるでしょうか?例えば、

  • メンバーの強み:この強みを生かして、この仕事を頑張ってほしい
  • 今後のキャリアビジョン:将来その仕事をするのにこのように役立つ
  • この価値観(キャリアアンカー)を大事にして働きたい:今回お願いしたい仕事のこの部分がつながる(活かせる、経験が積める)

このように面談を通じて抽出したものと「なぜ 」を繋ぎ合わせることで、

  • ジョブアサイン:新しい仕事を依頼する際に、社員のキャリアと仕事を「繋げる」
  • フィードバック:成果物の受け取りや報告を受けた際に、成果と社員のキャリアを「繋げる」

こうした工夫をすることで、忙しい日常の中でもキャリア支援を実践することが可能です。

キャリア支援は、面談だけではなく日常の関わりの中で行うことが重要です。パフォーマンス高く働く部下を育成するためにキャリア支援は肝心で、その工数は一般的に想像されているほど多くありません。管理職自身のキャリアだけでなく、部下のキャリアも応援することで、より良いチーム作りに繋がるでしょう。

3. まとめ

現代の職場では、エンゲージメント(主体的な仕事への関わり)とキャリア自律(自己決定によるキャリア形成)が重要視されています。キャリア自律を促すことで、従業員が自ら会社や仕事に関わるようになり、エンゲージメントが高まります。

管理職が陥りがちな「認知の罠」には注意が必要です。特に、キャリア支援が離職を招く、との誤解があるものの、実際には支援によってパフォーマンスが向上し、組織の成長にもつながるため、積極的にキャリア支援を行いましょう。

キャリア支援の効果

「認知の罠」により懸念される点効果
離職支援は離職に直結せず、むしろ主体性を高める。
キャリア意向の有無や不一致キャリア意向(キャリアアンカー、価値観)を理解し支援することで、心理的成功を促進。
支援の手間焦点を絞った1on1や日常業務に組み込むことにより効率的に支援が可能。

キャリア支援のポイント

  1. 面談だけでなく、日常業務でのフォローも重要。
  2. 部下の強みやキャリアビジョンを活かして業務をアサインする。
  3. フィードバックを通じてキャリアと仕事を結びつける。

キャリア支援は、短期的な面談に限らず、日常の関わりの中で行うことで、エンゲージメント向上と組織の成長に貢献します。

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