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目次
今回は、組織づくりにかかわる経営・人事のみなさん、および現場のマネジャーのみなさんに昨年末に日本では発刊された「ヒューマノクラシー(ゲイリー・ハメル)」をご紹介します。
私は本書を読んで、自律分散組織の大家でもあるゲイリー・ハメルから、組織開発を担う人、より良い組織をつくりたいすべての人への大号令のようにも感じました。
どれだけ良い組織を作ろうと思っても、なんか見えない壁のようなものを感じる、前提から見直す必要があるように思う、といった方にぜひ読んで頂きたいです。
本書では官僚主義(bureaucracy)に対して、著者の造語であるヒューマノクラシー(humanocracy)の概念と実現のポイントについて説明されています。
官僚主義とヒューマノクラシーの違い
概念的な違いは、以下のように紹介されています。
官僚主義では「人間=道具」であり、製品やサービスを生産するために雇用される。ヒューマノクラシーでは「組織=道具」となる。人間が自分の人生や、顧客となる人たちの人生をよりよくするために使う道具となるのだ。官僚主義で中核となる問いは「人間を組織により奉仕させるには、どうすればよいか」だが、ヒューマノクラシーでは、「どんな組織なら、人々から最高の力を引き出し、その力に値するような組織になれるのか」となる。
人の力をいかにコントロールするか、を考えてきた官僚主義に対して、ヒューマノクラシーは、組織と人の力をいかに引き出すかについて考えらている点が特徴的です。
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官僚主義が人から情熱やクリエイティビティを奪う
本書全体を通して、一貫して「人間の力」に対する信頼が強調されています。
私たち人間にはレジリエンスが備わり、創造力や情熱に満ちています。
しかし、多くの組織ではそうした人間らしさが見受けられないのはなぜでしょうか。
本書によるとそれは、組織そのものが人間らしくない仕組みによって成り立っているからです。
この「人間らしくなさ」の根源にあるのが官僚主義です。
官僚主義という概念は、18世紀初頭にフランスの政府高官であったジャック=クロード=マリー=ヴァンサン・ド・グルネーが生み出したもので、「事務室での支配」を意味し、決して褒め言葉ではありませんでした。
彼は、政府の官僚主義が企業家精神を阻害することを懸念して、この言葉を使ったのです。
20世紀初頭に社会学者マックス・ウェーバーは、「官僚主義は非人間的になればなるほど、完璧に近づく」と記しました。
ウェーバーによれば、官僚主義はそれ以前の独裁的で無秩序な組織と比較して、正確さや安定性、厳格な規律という面で優れ、最も効率的な組織形態です。
この効率性の追求によって、現代の官僚主義的組織は、今日の自動車や携帯電話の普及を可能にしました。本書でも、人類の偉大な発明の一つとして、官僚主義は評価されています。
しかし、この「効率」を追求した結果、組織には以下のような中央集権的で分節化された特徴が見られるようになりました。
- 公式な階層構造が存在する
- 肩書きによって権力が決まる
- 権力は上位から下位へと流れていく
- 上層部が下位のリーダーを任命する
- 戦略と予算は上層部が決定する
- 本社スタッフが方針を決め、それに従わせる
- 仕事の役割が厳密に規定されている
- 規則や処罰によってコントロールされる
- マネージャーが仕事を割り当て、業績を評価する
- 全員が昇進を競い合う
- 報酬は職位によって決まる
このような組織の特徴が、人間らしさを削ぎ落とし、その結果、現代の官僚主義に基づく組織は最大の効率を得ているのです。
本書では、ヒューマノクラシーを実現するための7つの原則を紹介しています。それぞれの組織に適した進め方は異なるとしつつ、以下の7つの原則が提案されています。
①オーナーシップ
権限委譲をすすめ、マイクロマネジメントせず、組織に対してオーナーシップが持てる状態をつくる
②市場
中央集権の限界を認め、自由市場の原理が組織に働く状態をつくる
③健全な実力主義
能力とパフォーマンスがオープンに評価され、能力があると認められた人が評価され報酬を得られる状態をつくる
④コミュニティ
お互いが人間的な感情を出すことができ、相互に貢献し合えるコミュニティ化を目指す
⑤オープンであること
情報、意思決定のプロセス、組織内・外の境界線をオープンにする
⑥実験
細かな計画よりも実験を奨励し、実験の責任を個人に追及せず支援する
⑦パラドックスを超える
組織内で起きているトレードオフを乗り越える方法を考える。状況ごとにバランスがとれるよう、ときに一貫性を少し犠牲にする
まとめ
官僚主義の問題は、人間が作ったシステムなのに、人間らしくないことだ。なので、どれだけ発展しようとも(むしろ発展することで)、心がしぼんでいく。
(引用)ヒューマノクラシー
本書でも言われている通り、官僚主義の恩恵はたくさんあり、人類の発展に確実に寄与してきています。しかし、次なるステップとして、組織が「人間らしさ」を取り戻せるステージに到達しつつあるのではないでしょうか。