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人事施策を現場に浸透させるポイント~よくある失敗例と対策から学ぶ~

人事施策を現場に浸透させるポイント~よくある失敗例と対策から学ぶ~

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著者

稲里 拓都

著者

稲里 拓都

大学卒業後、大手国内メーカーに入社し、人事業務全般に従事。その後、人材系企業2社で営業マネージャーおよび人事マネージャーを歴任。2024年に株式会社NEWONEに入社し、現在は研修を中心に、人材育成・組織開発のHRパートナーとして活動。新入社員の育成体系構築から管理職主導の組織開発まで幅広く支援。

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人事施策の現場浸透に課題を感じている人事担当者は少なくありません。セミナーや書籍から最新の理論や施策を取り入れても、現場が受け入れてくれない、実践してくれないといった声をしばしば聞きます。

今回は元人事の立場から、よくある失敗例と具体的な対策を踏まえ、現場浸透を実現するためのポイントを解説します。

よくある失敗①:事業特性を無視した施策設計

人事施策を導入する際、一般的な理論やトレンドをそのまま現場に適用しようとすると、事業特性に合わず現場での抵抗感が強まることがあります。

例えば、VUCA時代に求められるリーダーシップとして「サーバント型リーダーシップ」が推奨されることがありますが、全ての事業にそのまま適用できるとは限りません。

ある部門で、管理職向けに「サーバントリーダーシップ」を学ぶ研修を導入しようとしたケースです。サーバント型リーダーシップでは、リーダーが部下の成長や自己実現を支援する姿勢が重視されます。

しかし、その事業がオペレーションの効率化やKPIの確実な達成を事業の勝ち筋としており、メンバーには決められた行動を着実に遂行していくことが求められる場合、このリーダーシップが機能しにくいことがあります。
現場からすると、「自発性を引き出す支援型のリーダーシップ」が具体的にどう成果に繋がるのかが見えず、必要性を感じられないのです。

人事担当者は、施策を導入する前に、事業部門のビジネスモデルや特性を理解し、その中でどのようなリーダーシップやスキルが実際に効果的かを考えることが重要です。

ビジネス理解が不足すると、現場に納得感を持って受け入れられる施策の設計が難しくなります。施策導入前に、事業責任者やミドルマネジメントと対話し、「施策がビジネス成果にどう結びつくのか」を事業部門の目線で確認するプロセスが必要です。

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よくある失敗②:現場メンバーの実情を理解していない

現場メンバーの働き方や日常の業務内容、モチベーションのポイントを理解せずに施策を設計すると、実態にそぐわない内容になりがちです。どれだけ質の高い研修内容でも、現場の実情やメンバーの成長フェーズと乖離していれば、「ピンとこない」といった反応が出てしまいます。

例えば、3年目社員向けに「アサーション研修」を導入しようとする場合です。
アサーションスキルは、自己表現や建設的な対話力を高めるもので、特に様々な関係者がいる中での自己主張が重要視される環境では有効です。

しかし、対象となる営業職の現場メンバーが、他部署や社内関係者と日常的な連携が少なく、日々の業務が個人で完結する業務に集中している場合、アサーションスキルの必要性を感じにくいのが現実です。「周囲と協働して成果を上げるスキルが必要」という説明を受けても、「そのスキルを身に付けることが、どう業務に役立つのか」が見えず、内容が響きません。

このようなケースでは、人事担当者が、実際に現場を訪問し、「メンバーがどのような業務に携わり、どのような成果を求められているのか」を体感することが重要です。

例えば、お客様とのお打ち合わせへの同行やテレアポ体験など、現場とともに業務に参加することで、メンバーがどのようなことに動機付けられ、どのような課題に直面しているのかも肌感覚で理解できます。こうした手触り感のある理解をもとに、施策内容を現場に即したものに調整することで、人事施策への理解と共感が得られやすくなります。

まとめ

事業部門からすると、人事は事業戦略達成のための機能の一つであり、現場での実務に寄り添った施策が求められます。現場に浸透する施策を設計するためには、まず事業の特性や現場の実情を理解し、その上でどのような施策が実際に役立つかを考えることが不可欠です。

実際の業務に寄り添い、事業の目標と施策がどうリンクするかを現場視点で思考することで、人事施策は自然と現場に受け入れられるようになり、最終的に事業成果に貢献するものとなります。