【連載①】夢中になる技術 ~没頭のメカニズムから考える~

社会全体の生産年齢人口の減少によって、働き手の不足が叫ばれ、テクノロジーの発展により、働き方や仕事観も多様化する中で、いかに「1人ひとりの働き手のパフォーマンス」を高めていくか、またその中で、いかに「1人ひとりの働きがい」を担保していくかということが、ますます問われるようになってきました。

そして、このような社会背景もあり、企業(組織)が個人を選ぶ時代から、個人が企業(組織)を選ぶ時代へとシフトしていく中で、企業と個人がより対等な関係として、つながっていくことが大切になってきていると感じます。

そのために企業側が個人の「仕事そのものに対するエンゲージメント」と、「組織に対するエンゲージメント」を高め、両立していくことが必要になってくると我々は考えるわけですが、これは具体的にどのように実現していくのでしょうか?

その一歩目として、今回は「個人の仕事そのものに対するエンゲージメント」に着目し、考えていきたいと思います。

まず理論的な側面から見た時に、ポジティブ心理学の研究で著名なアメリカの心理学者マーティンセリグマン氏は、このEngagement(没頭)という概念を、Achievement(達成)、Positive Emotion(快楽)、Relationship(良好な人間関係)、Meaning(意義、意味合い)と並列し、幸せの5つの類型として定義しています。

そして、このEngagementを「没頭」という言葉で置き換えたときに、同時に引用されるのが「フロー体験」というキーワードです。フロー体験とは、人が何かに熱中したり、夢中になっているときの体験のことで、それを長きに渡り研究してきたのが、アメリカの心理学者チクセントミハイ氏です。

イノベーションなどの文脈でも取り上げられることが多いチクセントミハイ氏ですが、彼はこのフロー体験について、日々の生活を構成している時間の使い方、仕事、余暇など、様々な側面から調査分析を行い、そのメカニズムについて体系化しています。

では、あらためてフロー体験とは何なのでしょうか?彼は著書の一つである「フロー体験入門 楽しみと創造の心理学」の中で、このように語っています。

目標が明確で、迅速なフィードバックがあり、そしてスキル(技能)とチャレンジ(挑戦)のバランスが取れたギリギリのところで活動しているとき、われわれの意識は変わりはじめる。そこでは、焦点が焦点を結び、散漫さは消滅し、時の感覚と自我の感覚を失う。その代わり、我々は行動をコントロールできるという感覚を得て、世界に全面的に一体化していると感じる。我々はこの特別な状態を「フロー」と呼ぶことにした。

この言葉だけを拾うと少々小難しくも感じますが、他の体験とフロー体験の違いについて、彼は同著の中でこのように図式化もしています。

ポイントとしては、スキルに対してチャレンジのレベルが高すぎると、不安、心配になり、逆にスキルに対して、チャレンジのレベルが低すぎると、単なるリラックスや、退屈になってしまい、いづれも没頭するという状態にはならないということです。

これを踏まえて単純に考えれば、スキルを高めたり、チャレンジのレベルや目標を調整することで、人は没頭できる?となるはずなのですが、そう上手くいくものでしょうか?

スキルを高めようと勉強を始めても長続きしない、安易にチャレンジのレベルを下げることには抵抗があるし、逆にチャレンジのレベルを上げるよりは、失敗や軋轢のない現状維持の状態にとどまってしまうということは、よくあることです。

次回のコラムでは、このような現実がある中で、いかに没頭(フロー)の状態に自分自身を近づけるかという方法について、もう少し詳しく考えていきたいと思います。(次回につづきます)

 


■プロフィール
山野 靖暁(yasuaki yamano)
1991年生まれ/大阪府出身
株式会社シェイクに新卒で入社後、研修開発やコンサルティング営業に従事、
多くの企業の人材育成、組織開発に携わり、株式会社NEWONEの創業期にも関わる。
シェイク退職後、イギリスの大学院シューマッハカレッジへの短期留学を経て、
2018年3月より島根県の隠岐郡海士町に、暮らしと仕事の拠点を移す。
地域や、海外をフィールドにした課題解決型学習のコーディネートなど、
高校、地域、行政、民間企業等と連携しながら教育の魅力化に取り組んでいる。
最近のテーマは「他者との関わりの中で、その人らしさが生まれる学びの場」

 

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