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未完成がむしろ良い?エンゲージメントを高める推せる職場の作り方

未完成がむしろ良い?エンゲージメントを高める推せる職場の作り方

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著者

上林 周平

著者

上林 周平

大阪大学人間科学部卒業。 アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。2002年、(株)シェイク入社。企業研修事業の立ち上げ、商品開発責任者として、プログラム開発に従事。新人~経営層までファシリテーターを実施。 2015年、代表取締役に就任。2017年9月、株式会社NEWONEを設立。 2022年7月に、「人的資本の活かしかた 組織を変えるリーダーの教科書」を出版。

NEWONEでは、あらゆる企業のご希望やお悩みにあわせた
多種多様な研修を取り扱っております。

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上場企業において人的資本情報の開示が義務付けられて2年目。
自社のエンゲージメントスコアを開示する企業も徐々にですが増えてきています。

自発的な貢献意欲でもあるエンゲージメントは、高い方が企業経営にとっては良いですが、
一方で、スコアを高めていくことが難しいと感じている職場もよく見られます。

今回は、エンゲージメント向上の難しさと、それを打破するためのポイントをまとめてみたいと思います。

エンゲージメント向上の難しさ

法律の変更に伴い、働き方改革が推進され、以前よりも働きやすい職場になったという声はよく聞かれます。

一方で、2021年3月号の日経ビジネスの記事において、
“働きやすさ”は高まっている一方で、”働きがい”は下がっているデータが掲載されていました。

また、”働きがい”に近いニュアンスであるギャラップ社のエンゲージメントデータにおいても、熱意ある人材の割合が日本では5%と下がり傾向であり(グローバル平均は23%)、企業としては何とかしたいところです。

弊社の調査で、組織内の様々な要素(42項目)に対して、「働きやすさ」との相関が強いトップ3を調べたところ、

① 働きやすいオフィス環境である
② 上司は誠実に接してくれる
③ 上司は自身の今後のキャリアに対して支援をしてくれる

に対して、「働きがい」との相関が強かったのは、

① 仕事をする中で達成感を得ている
② 自社が実現したいことを自身も達成したい
③ 自職場は自身の成長を支援してくれる

という結果でした。

働きがいには、達成感が一番相関していたのですが、
その達成感とは、自分の力を30%くらいしか出さず、適当にこなしていてもなかなか得られない感情です。
すなわち、自分で達成できるか確証が持てない中で、自分の力を十分に発揮していくことで得られる感情であると思います。

しかし、達成感を高めるべきだと思っていても、2つの難しさがあると思います。

1つは、そもそも失敗を恐れて自律的に挑戦する人が少ないという難しさ。
もう1つは、過重労働やハラスメントを極度に恐れ、ストレッチアサインがしづらい状況だという難しさ。

この2つの難しさとどう向き合うかが、エンゲージメント向上において大事なポイントであります。

推し活から考える推せる職場の作り方

2021年の新語・流行語大賞にノミネートもされた「推し活」。
「推し活」とは、特定のモノ(アイドルやキャラクター、チーム等)を応援する自発的な活動を指し、エンゲージメントが高い状態に近いです。

この推し活ですが、昔からある”ファン”と対比して説明すると以下のようになります。
(ファン)
完成品を愛でる、憧れの存在である

→自分は与えられる側

(推し活)
未完成のものを支えたい

→自分は世話を焼く側
一見近いようで、心情としては違うようです。

この心理は心理学的に言うと、
法的に所有しているか否かにかかわらず、人がある対象を自分のものだと感じる感覚である「心理的所有感」で説明されることが多いです。

そして、この「心理的所有感」が高まるメカニズムとしては、統制意識、知識意識、投資意識高まりが大事だと言われています。
※参考「推し活意識が幸福感に及ぼす影響:推しの心理的所有感の媒介的作用」(上田泰・井上淳子)

それらの意識を職場に置き換えてみると、

統制意識:職場に影響を与えられる、自分が努力すればより良い状態になると思えている
知識意識:情報がオープンで、職場の使命や戦略の背景、課題感等を知ることができる
投資意識:職場に対して一定の時間貢献をし、貢献してきているという実感がある

という状況になっているか否かです。

そして、それらの前提として、
「完璧な職場をまず上位者が作る」というのは、そもそも難しいし、メンバーを受け身にする可能性がある。
一方で、「未完成な職場と向き合う」というのは、メンバーの統制感を醸成でき、心理的所有感につながることになります。

NEWONEでは、エンゲージメント向上をはじめとした
人・組織の課題解決のヒントとなるセミナーを開催しています。

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企業向けでのエンゲージメント向上の伴走支援

今まで多数の会社で、職場単位でのエンゲージメント向上の伴走支援を行ってきました。

その中で、良い形でエンゲージメントスコアが向上する職場の特徴としては、
以下のようなプロセスを行っている職場が多いです。

  1. 職場のマネジャーがメンバーと対等に、どのような風土を作りたいかを対話する
  2. 作りたい風土に向けて、焦点を絞った目標設定(例:達成感が高い職場を作る)を皆で行う
  3. その目標に向けて、一人ひとりができることを行動し、互いに称えあう

このプロセス自体が、「未完成な職場」という前提に立ち、課題もオープンにし、メンバー全員が関与できることで統制感や貢献実感を高め、心理的所有感につなげています。

未完成をエンゲージメント向上に活かしていく

「就職人気企業ランキングのトップクラスと比べて予算が無い…」
「地方の企業は首都圏の企業と比べて、環境的にそろっていない…」

そういった声もよく聞かれます。

一方で、未完成を上手く活かすことがエンゲージメント向上につながるとするならば、
上記のような声をあげていた企業にもチャンスが多くあります。

NEWONEでは、こういったメカニズムを追求するために、
推せる職場ラボを設立し、日々探求を行っております。

また、地方企業特有の課題を踏まえた支援をするために、
まずは関西の企業から情報交換ができる機会を作っていく予定です。

関西に本社や支社がある方、是非ご参加いただければ幸いです。

これからも日本中の企業のエンゲージメントが高まり、
一人ひとりのメンバーが活躍できる社会を作るために精進していきたいと思います。
引き続き、何卒よろしくお願いします。