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育成は恐怖との闘い

育成は恐怖との闘い

NEWONE事務局

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NEWONEの小野寺です。

私は新卒で人材育成の仕事につき、社会人3年目からは自社の新卒の後輩や中途入社者の育成にも携わっています。

今回は、クライアントの人材育成をご支援している経験からではなく、自社における私自身の人材育成の経験から、育成に携わる新米OJTトレーナーや新米マネジャーが闘っている「6つの恐怖(葛藤)」についてお伝えできればと思います。
この記事が、「恐怖」と闘う(闘うことになる)育成者の励みになると嬉しいです。

「育成対象者との関係性」の恐怖

文字通り、自分が育成する責任のある、育成対象者との関係性が築けないこと(または築いた関係性を壊すこと)への恐怖です。
効果的な育成をするためには、当たり前ですが、対象者と良好な関係を築くことが不可欠です。
言い換えると、対象者が「自分(私)のことをどう思っているか」を気にして、信頼度を確認し続けることが不可欠です。
一方で、厳しいことも伝えなければならない状況もあり、常に「良い顔」をできるわけではありません。
時に嫌われ者の役割を演じつつも、関係性を維持し続ける(信頼され続ける)難しさの中に、育成の恐怖(葛藤)があるよう思います。

「周囲の社員との関係性(または周囲への負担)」の恐怖

育成に携わることで、これまで自身が築き上げてきた周囲との関係性に亀裂が入ることへの恐怖です。
周囲の社員の、育成対象者への評価が自身との関係性に影響します(対象者のミスや周囲にかけた迷惑の責任を問われます)。
一方で、多少のミスや周囲への負担を想定しながらも、仕事を任せ、挑戦を促すことも育成対象者の成長のためには必要です。
この、周囲との関係性維持(負担の軽減)と育成対象者の挑戦支援の間にも育成の恐怖(葛藤)があるように思います(ましてや対象者本人すら、挑戦したくないと感じている中で、周囲への迷惑も承知で挑戦を促す状況には逃げ場のない恐怖があるように思います)。

「自分はどうなんだ」の恐怖

言い換えると、育成対象者に求めること(成長を促す観点)が「自分はできているのか」ということへの恐怖です。
育成対象者が現時点では有していない能力を開発し、できないことをできるようにする関わりが成長支援であり、育成そのものであるため、必然的に「自分はできていないといけない」という心理状態になります。
一方で、「自分ができない」からといって、「育成対象者に成長を求めない」というわけにもいきません。
この自身の「できていて当たり前」という心理的前提と「できない中でも育成しなければいけない」という状況の間にも育成の恐怖(葛藤)があるように思います。

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「自分は正しいのか(独りよがりではないか)」の恐怖

育成はそもそも、育成対象者の成長のために行われる行為です。
では、そもそも「成長」とは何でしょうか。現在の職場の中で目の前の業務ができるようになることでしょうか。それとも育成対象者のキャリアの可能性を切り開くことでしょうか。
建前としては、育成期間の目標を達成することであり、キャリアを切り開くなど大それたことは考えなくても良いように思いますが、実際は育成期間の目標めがけて関わることが「本当に本人のためになるのか」と考えざるを得ない状況があるように思います。
この「成長」の正解のなさ(そもそも成長する必要性すらないかもしれません)の中で、育成する恐怖(葛藤)があるように思います。

「後ろから刺される」の恐怖

上述のような様々な恐怖(葛藤)がある中で、日々奮闘していたとしても、グサッと後ろから刺されたように感じることもあります。
これは言い換えると、共に育成する仲間(上司や他の先輩社員)が、育成対象者に自身と真逆の関わりをしたり、「そこまで成長しなくても(頑張らなくても)」という発言によって育成対象者の逃げ道をつくられることです。
こちらも上述の通り、成長(成長する必要性)には正解はなく、もちろん育成(育成対象者への関わり)に正解があるわけではないため、周囲が自身と真逆の関わりをした際、より育成に対する恐怖(葛藤)が増すことがあるように思います。

「彼・彼女はどんな育成をするようになるのか」の恐怖

これはだいぶ考えすぎのように思われるかもしれませんが、私自身は若い企業に所属しているためか、最も感じている恐怖です。
良くも悪くも育成は、自身が「育成された」経験が影響するように思います。
つまり、自身の育成が「育成対象者が育成者となった際の育成の仕方」に影響する可能性があるということです。
育成対象者にとって、「自身の育成が苦い思い出になり、過剰に真逆の関わりをされる」、「支援の意図が上手く伝わっていないまま、同様の関わりをされる」など、現育成対象者に今後育成されるであろう後輩および形成される組織文化へ悪い遺伝子を残す可能性に対し、先の読み切れない恐怖(葛藤)があるように思います(自分と真逆の関わりをされたら大きくショック、という感情もあるように思います)。

まるでカフカのようなネガティブな内容になってしまいました。
上記は、私の未熟さゆえの恐怖という側面もあるかと思いますが、多くの新米育成者の方に共感頂ける内容なのではないでしょうか。

とはいえ、育成には「成長が見られる」「自身の成長・キャリアにもつなげる」など様々なメリットや、やりがいがあります。
人によって、「自分の仕事を減らしたい」「自身の成長経験にしたい」「人の成長を見守りたい」「組織の成長に貢献したい」など育成に対して様々なモチベーションがあるように思いますが、結局は「自分のため」にやっているわけなので、上記の恐怖に負けて逃げ出しても良いと思います。
そして何より、「実は大して影響力なんてない」という考え方も忘れてはいけないように思います。
結局、育てるなんておこがましい程、彼・彼女には、必要なだけ自分を成長させる逞しさが備わっているわけであり、上記の恐怖は実は妄想にすぎないということも大いにあり得ます。

「本気で育成しようという気持ちゆえに発生する様々な恐怖(葛藤)」と、「実は大して影響力なんてない中で自分のためにやっているという気楽な気持ち」の狭間で、新米育成者のみなさんが豊かな育成ライフを歩まれることを、同志として祈っています。


■プロフィール
株式会社NEWONE マネジャー 小野寺 慎平

大学卒業後、(株)シェイクに入社。企業の人材育成や組織開発のコンサルティングを行う。
2018年1月(株)NEWONEに創業メンバーとして参画。
商品開発・マーケティング、組織開発コンサルティング、研修やワークショップのファシリテーターなど多方面で活動する傍ら、「仕事そのものが面白いと思う同世代(20代)を増やす」をテーマに20代向けの能力開発事業「ProjectNEW20’s」を立ち上げる。
2018年3月より(株)OriginalPointに参画。「時代にあったキャリア開発」をテーマに学生向けキャリア支援やイベント企画など行っている