「良質な問い」を立てるための3つのポイント 〜探究的な学びの現場から〜

かれこれ1年半ほど、学校現場に入りながら高校生を対象にしたキャリア教育のカリキュラムづくり、授業づくりを、学校の先生と一緒に取り組んでいます(自分の全体の仕事の中で、半分くらいはここにパワーを使っています)

今月は、ある若手の先生と一緒に1次産業(漁業)をテーマに、地域やコミュニティをより深く理解しながら、自分自身の興味関心も広げることをねらった、キャリア教育の授業づくりに取り組んでいるのですが、その中で、おもしろい発見がありました。その発見というのが「問いの立て方」についてです。

昨今、正解ではなく、どのような問いを立てるかが、学びの熱量や、学びの質を高める上で大切であると言われますが、「良い問い」というものに対して、自分なりの納得できるアンサーがなかなか持てずにいました。

「良い問い」に対して絶対解はないと思いますが、良い問いの立て方について、今回の授業づくりで少しばかり見えたヒントについて書いてみたいと思います。
今回は1次産業(漁業)というテーマを扱うこと、現場で働く漁師さんのゲストトークを実施するという点が、カリキュラム上の前提条件にありました。

ただ実際に授業を受ける生徒の顔を思い浮かべると、1次産業にとても関心がある生徒もいれば、あまり興味がない生徒もいるというのが実態で、そこから授業づくりがはじまりました。

ポイント(1)学習者の関心事を探る(テクノロジーも活用)


そんな中でまず考えたのは、学習者である生徒たちの日常の関心事についてです。日常の様子はもちろんのこと、ベネッセのClassiというサービスの「ポートフォリオ機能」を活用し、web上に生徒たちが入力した日々の活動記録をみながら、どのようなことに興味があったり、どのようなことに悩んでいたりするのかを確認していきます。

その中で、寮生活や部活動において、先輩がやってきたことを引き継ぐむずかしさを感じている生徒が一定数いるということが見えてきました。これは一見漁業とは関係なく、本題からは外れつつあったのですが、実はここでの考察があとの授業づくりに大きく効いてくることになります(アイデアは思わぬところにあるものです)

ポイント(2)学習テーマを要素分解する(解像度を上げる)


生徒の関心事を探りながら、それと同時並行で学習テーマである「漁業」についても要素分解をしてみました。今年はイカの水揚げ量が少ないという話から始まり、後継者不足の問題、技術継承の問題、商品開発の話など、とにかくたくさんの要素を洗い出してみます。

そんな風に先生と議論する中で、ふとした瞬間に「継ぐ、継承する」というキーワードを中心に、今回の授業設計をしてみてはどうか?という話になりました。もう少し具体的に言うと、以下のようなアイデアが生まれました。

・ 「地域に残る知恵や技を、次世代に継承するためには?」という問いを連続する授業の一番最初に投げかけ、終始そこに立ち返る
・ ゲストトークではベテランの漁師さんと、その漁師さんのもとで修行をしている若手の漁師さんをお呼びして、その問いについて対話をしてもらう
・ 事前学習では、書籍などを活用して、自分が印象に残る地域の知恵や技をまとめる。また漁業をはじめ1次産業で後継者不足が起きている理由について仮説を立てる

ポイント(3) 関心事と、学習テーマの要素が交わるところに問いを立てる


改めて言葉にしてみると、今回の授業のツボは、以下の点にあると思います。

・ 漁業に興味がない生徒でも、継承や継ぐというテーマに関心がある生徒はいるかもしれないこと
・ 継承や継ぐというテーマを入り口に、漁業や1次産業に興味を持ちはじめる生徒がいるかもしれないこと
・ もともと漁業や1次産業に興味があった生徒も、フォーカスを絞った問いを持つことで、さらに深い理解や、視野を広げられる可能性があること

つまり、授業のテーマを分解しながら、その要素の中で、生徒の関心事と交わるところに、授業の問いを立てると、主体性を引き出すとともに、取り組む中で、また新たな問いを誘発する可能性があるのではないかということです。

新たな問いを誘発することは、学習者自身が学び続けるための土壌になるため、非常に大切なポイントであると思います。以上のような形で、良質な問いを立てるための3つの視点について、まとめてみましたが、いかがでしたでしょうか?

言葉にしてみると実にシンプルでもあります。そして、実際の授業づくりのプロセスでは、これを順番通りにやったというよりは、振り返ってみるとこの3つの視点があったという感覚に近く、日常の実践を振り返ることの大切さを噛みしめる今日この頃です。

 


■ライタープロフィール
山野 靖暁(yasuaki yamano)
1991年生まれ/大阪府出身
株式会社シェイクに新卒で入社後、研修開発やコンサルティング営業に従事、
多くの企業の人材育成、組織開発に携わり、株式会社NEWONEの創業期にも関わる。
シェイク退職後、イギリスの大学院シューマッハカレッジへの短期留学を経て、
2018年3月より島根県の隠岐郡海士町に、暮らしと仕事の拠点を移す。
地域や、海外をフィールドにした課題解決型学習のコーディネートなど、
高校、地域、行政、民間企業等と連携しながら教育の魅力化に取り組んでいる。
最近のテーマは「他者との関わりの中で、その人らしさが生まれる学びの場」

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