立ち返るもの 〜年始に読みたい一冊〜

こんにちは。山野です。

年が明けて、本格的に仕事がはじまり、島に戻ってきて1週間。
毎年のように思うんですが、この年始の1週間は本当にきつい。

年末年始、いったん自分の電源をオフにしてしまう習性なのか、
エンジンがかかるのに、時間がかかって仕方がない。
おまけに、体調も少々崩し気味。

年末に遅ればせながら「ボヘミアン・ラプソディ」を鑑賞した後の
あのロックな高揚感はどこにいってしまったのやら・・・

ダメな社会人の典型みたいな28歳の冬ですが、
この1週間を走りきった自分を少しだけ褒めたい気持ちです。
まあ何事も「始めれば、始まる」。

そんなこの1週間の私の支えになった1冊の雑誌があります。
「翼の王国」というANAの機内誌で、そこに連載されている
「空の冒険」という吉田修一さんのエッセイ。

今、私は島根県の隠岐にある離島に住んでいますが、
最寄りの空港(片道約3時間)が鳥取県の米子空港で、
東京(羽田)への便は、JAL便がなく、ANA一択。

そんなこんなで、この機内誌のページをめくるのが、
出張や、帰省のときの小さな楽しみでもあります。

さて吉田修一さんといえば、ご存知の方も多いと思いますが、
「パークライフ」「横道世之介」「Water」
「パレード」「悪人」「怒り」など、

ほっと一息つくような作品から、胸元をえぐるような作品まで、
どれも読み応えたっぷりで、映画や舞台になったものも多数。

そんな中でも、私はこのANAの機内誌「翼の王国」の
連載を推したい。(と、勝手に力を込めて言ってみる)

エッセイ自体は、吉田修一さん自身の日常や旅での
1コマを書いたものですが、最近印象に残ったものを
いくつか紹介してみると、

少し枯れた芝生に紅葉が舞い落ちる。風はなく、日差しはおだやかである。池を見渡すお気に入りのベンチは空席。来る途中に買ってきたカフェオレはまだ熱い。「日々の喜びは?」と聞かれたら、仕事の合間に訪れる近所の公園での、こんな一瞬を挙げたい。

※翼の王国 2018年12月号「トシンノコウエン」より

歓迎といえば、到着ロビーもまた、人を幸せにしてくれる場所だと思う。自分の待ち人がゲートの向こうから現れた時はもちろんだが、たとえば横で同じように誰かを待っていた人の相手が先に現れても、その表情に浮かぶ何とも言えない喜びを見ただけで、なんだかこちらまで嬉しくなってくる。

※吉田修一著 「作家と一日」〜人の背中〜より

ちなみに「作家と1日」は、雑誌の連載を、
いくつかまとめて書籍化したもので、この本を友人に
紹介してもらったのが「翼の王国」との出会いでした。

休みボケの中、今週ふと読み返してみた読後感は、

「次の旅行は、長崎がいいかな。いや台湾やで。」
「そもそも、誰と行くねん」とか

「人生色々あるけど、まあそんなに悪いもんでもないかな」とか
「会いたい人、会いたいと思ってくれる人がいることは尊い」とか
「コーヒーでも飲んで、肩の力抜いていきましょうか」とか

みたいな、これまた随分散らかった状態です。笑

でも、このエッセイを読むと、不思議と自分も「書きたい」と思う。
もしくは最近書いているものが「どうもしっくりこない」と思うとき、
無意識のうちに、このエッセイを読み返している気がする。

その理由は、ロジカルに説明できないんですが、
「ないものを嘆くのではなく、すぐそこにあるものを大切にするまなざし」
「心動いた一瞬を、一枚の写真のように解像度高く再現する表現力」
「リラックスできる余白感と、じんわり染み込んでくる読後感」

このあたりが吉田さんのエッセイが好きな理由だと思います。

書きたいと思ったことがあっても、つい後回しにして
「その時の解像度」を再現できなかったりとか、

あんなにも心動かされたはずなのに、大急ぎで文章にすると、
どうも「安っぽく」なってしまったりとか、
書き続けるというのは、なかなかむずかしい。

でも結局はこの繰り返しなのかな、とも思うし、
書くことに限らず、日々大切にしたいことが詰まっているからこそ、
今週、吉田さんのエッセイを手に取ったのかもしれない。
来月には、仕事でブータン出張を予定しており、
いつもの米子→羽田便での「翼の王国・2月号」が待ち遠しい。

ということで、こんな小さな楽しみを蓄えながら
今年もすこやかに過ごしていきたいものです。

 


■プロフィール
山野 靖暁(yasuaki yamano)
1991年生まれ/大阪府出身
株式会社シェイクに新卒で入社後、研修開発やコンサルティング営業に従事、
多くの企業の人材育成、組織開発に携わり、株式会社NEWONEの創業期にも関わる。
シェイク退職後、イギリスの大学院シューマッハカレッジへの短期留学を経て、
2018年3月より島根県の隠岐郡海士町に、暮らしと仕事の拠点を移す。
地域や、海外をフィールドにした課題解決型学習のコーディネートなど、
高校、地域、行政、民間企業等と連携しながら教育の魅力化に取り組んでいる。
最近のテーマは「他者との関わりの中で、その人らしさが生まれる学びの場」

 

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