管理職が持つべき「仕事の減らし方」

NEWONEの上林です。

「働き方改革」のしわ寄せがくる管理職。
暇な管理職はほとんどいない中で、管理職として仕事を減らす方法は無いかという点について、すこし考えてみたいと思います。

ビジョンを明確化することで、「取り組まない仕事」を決める


過去に「自動車販売店の店長が、値引きの確認業務を含めたくさんの仕事に追われている中で、どのように状況を打破するか」というケーススタディーを実施したことがあります。実施するとホワイトボードいっぱいに、たくさんの解決策を書いただけで終わる場合もよく見られました。

一方、現場で忙しいながらも、組織を引っ張っている管理職は、例えば「高い付加価値を提供できる店舗を目指し、店舗全体で値引き自体をなくし、値引き交渉の時間を削減する。一方でその時間を付加価値向上のための教育とブランド向上に注ぐ」「自律的な社員であふれた組織を目指し、値引き権限を部下にすべて渡し、店長への確認プロセスをなくす。一方で値引きルールの明確化と教育を徹底する」のように絞りこんでいました。

すなわち、目指すべきビジョンを明確にすることで、”やらないこと”を決め、そして”改めてやること”を明らかにしているのです。

P・F・ドラッカー氏が「経営者の条件」の中で「本当に行うべきことは優先順位の決定ではない。優先順位の決定は比較的容易である。集中できる者があまりに少ないのは、劣後順位の決定、すなわち取り組むべきでない仕事の決定とその決定の遵守が至難だからである」と言っています。

優先順位だけだと、結局何でも対応することになり、だからこそ劣後順位です。自分がマネジメントをする組織をどうしていきたいのかという、意志となる具体的なビジョンを描き、そのビジョンをもとに「取り組まない仕事」を決断(決めて断つ)することが大事なのです。

広い視野と一歩踏み出す勇気と覚悟が、自部署の仕事内容を激変させる


しかし、「取り組まない仕事」を決めるだけで、すべてがうまくいくわけでもありません。それができれば、誰でも仕事を減らすことができます。では、どのように「取り組まない仕事」を見つけ、推進していくのが望ましいでしょうか。まずはひとつの例を見たいと思います。

ある通信系会社のマネジャーが、自部署の問題について熱く議論をしていたことがありました。
「自分たちの上(上層部)の問題は何か、上に対して働きかけて変えていくべきことはないか」と問うと、急にテンションが下がり、「特に自分から働きかけるような問題はない」という意見すら出ました。
自部署内のことならば真剣に考えるのだが、上や横(他部署)に影響を及ぼすとなると途端にブレーキがかかってしまう実情。本来的には、上や横に働きかけて状況を打破することが、管理職として求められることなのに。

一方で、そのマネジャーの人たちに、(聞き手である)他部署マネジャーに何かお願いするためのプレゼンテーション機会を研修中に設けてみました。すると、業務の連携がある他部署マネジャーに対して「メンバーも含めて業務会議を行い、実はやらなくてもよい業務や、互いに効率的になる方法を考えるミーティングをしよう」と訴えかけたりします。そして、双方が合意し、実行に移し始めました。

「取り組まない仕事」を見つけ、推進していくためには、この例でいう「プレゼンテーション機会」を「与えられる」のではなく、「自ら作り出せる」かどうかなのだと思います。そして、その機会を作りだすために大事なこととしては、ひとつは、広い視野を持つ。
すなわち、自部署だけでなく、今だけでなく、常に広い範囲を意識しているかどうかが大事です。もうひとつは、最初少し時間を割くとしても、結果的に自部署も周りの部署も楽になることを信じ、一歩踏み出してやり切る勇気と覚悟を持つことです。

このように「取り組まない仕事」を決めて、推進していくことはエネルギーのいることですが、一方で「何でもやる」はというのは、管理職の役割として「何もやらない」と同じものであり、本人もメンバーも疲弊していくばかりです。

「取り組まない仕事」を見つけ、推進していくための6つの方法


「働き方改革」が促進され、仕事が増える中で、最後に「取り組まない仕事」を見つけ、推進して方法として、「(その業務を)やめる」「自組織内で代替する」「自組織外で代替する」の観点から考えてみたいと思います。

「(その業務を)やめる」

  1. 施策そのものをやめる
    例えば、風土を良くすることを目的に始めた部内の会議が、風土が良くなった後も何となく続いており形骸化しているようなものはないでしょうか。管理職としては、目的に対して効果が低い場合、その施策をやめるという決断をすることがとても大事です。
  2. 業務プロセスの一部をやめる
    例えば、資料提出者に対して、個別に期日ごとに手厚くリマインドメールを送っている仕事があり、この業務の開始時はこのリマインドも効果があったのですが、提出者の意識が高まってきた今の段階では、リマインドメールが無くなったとしても大きな問題ではないという状況がありました。このような昔から続いている手厚いプロセスなどはないでしょうか。管理職としては、かかる時間に対して価値が少ない業務プロセスを無くすという決断をすることも大事です。「自組織内で代替する」
  3. 人にお願いすることで代替する
    例えば、自分がやっている業務を部下に任せることができないでしょうか。そのためには、日々部下の成長を促し、後継者を作る意志を持つ必要があります。また、そのためにも、部下の力を引き出すためのワクワクする方向性の提示も大事です。
  4. プロセスを変更することで代替する
    例えば、先ほどの自動車販売の店長のケースで言いますと、「値引き権限を部下にすべて渡し、店長への確認プロセスをなくす。一方で、値引きルールの明確化と教育を徹底する」というように、違う打ち手で、プロセスを変更できるようなものはないでしょうか。管理職としては、既存のやり方にとらわれずに考えることが大事です。「自組織外で代替する」
  5. 横(他部署)へアプローチする
    例えば、ある部署からの仕事を受け取り、自部署で作業を行う際に、前の部署からの指示書やアウトプットを少し変えるだけで、自部署が楽になるというようなものはないでしょうか。管理職としては、他部署に依頼をしてプロセスを変えてもらうことで、自部署の効率化を図るような動きが大事です。
  6. 上(上層部)へアプローチする
    例えば、新規顧客開拓を重視していた時の目標や施策が、既存顧客重視に戦略変更した後も残っている場合のように、過去からの経緯で残っているだけで変更しても問題ないようなものはないでしょうか。管理職としては、その目標や施策は本当に必要なのかと、覚悟をもって上位者に働きかけることが大事です。

「仕事量が減るのを待つ」「人が増えるのを待つ」ではなく、広い視野と一歩踏み出してやり切る勇気と覚悟を持って、自ら周りに働きかけていく。それが「働き方改革」の今、自らの手で仕事を減らす方法であり、自分自身を見直していくポイントでもあると思います。

 


■プロフィール
上林 周平(kambayashi shuhei)

大阪大学人間科学部卒業。
アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。
官公庁向けのBPRコンサルティング、独立行政法人の民営化戦略立案、大規模システム開発・導入プロジェクトなどに従事。
2002年、株式会社シェイク入社。企業研修事業の立ち上げを実施。その後、商品開発責任者として、新入社員~管理職までの研修プログラム開発に従事。
2003年より、新入社員~経営層に対するファシリテーターや人事・組織面のコンサルティングを実施。
2015年より、株式会社シェイク代表取締役に就任。前年含め3年連続過去最高売上・最高益を達成。
2016年、若手からのリーダーシップを研究するLeadership Readiness Lab設立し、代表に就任。
2017年7月、「和×人材育成」をコンセプトにした和の大学株式会社を設立。
2017年9月、これからの働き方をリードすることを目的に、生産性向上やイノベーションなどを支援する株式会社NEWONEを設立。
米国CCE.Inc.認定 キャリアカウンセラー

 

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