「働き方改革」時代の管理職が持つべきビジョン(3)

「働き方改革」で大きく変わる組織内部。
そういった中で、管理職はどうあるべきか。今回は「対下(部下への伝達)という観点」部下にやるべきことを伝えるではなく、部下の力を引き出すビジョンであるかどうかという観点から見ていきたいと思います。

周りの人の力を引き出すアプローチとは


以前、ある会社の40代~50代のマネジャー数十人に対して、研修プログラムで3日間一緒に過ごす機会がありました。多数の優秀なマネジャーがいたが、その後しばらくして高評価で昇進したのは、最年少のマネジャーAさんでした。

3日間の研修プログラム時のAさんがどういう行動をしていたかを思い出すと、他のチームの議論がバラバラな中で、彼が参加しているチームはいつも盛り上がっていたのが印象的でした。では、他とは何が違うのかという点でみると、どのような議論においても、Aさんが早い段階で意見を提示し、自然に皆で「目指す方向性」を最初に合意していました。

例えば、問題ある部署のケーススタディーを議論する際は「この部署は、他とは違い○○な価値を提供する△△分野でNo.1な部署でありたいよね」と提示し、その後さまざまな論点で議論をするというように。また、チーム内で相互にフィードバックをしあう時には、最初に皆の意見を引き出し「せっかくの機会だから、どこよりもきちんと指摘しあい今後につながる場にしよう」というような方向性を打ち出し、その結果、賛同したチームメンバー皆で真剣に活気ある場を作り上げていたのです。

後で聞いた話ですが、Aさんは職場でも同じように部下の力をグイグイ引き出し、活気ある成果が出る職場を作っているのが高評価の1つのポイントだったようです。

答えるべき3つのWhy


では、部下の力を引き出すビジョンにはどのような特徴があるのでしょうか。
それは、前回同様に、何を行うのか(What)だけでなく、なぜ行うのか(Why)に重点を置いてビジョンが語られているかどうかです。
では、そのような中で、どのようなWhyを押さえる必要があるのかということに関して、以下の3つから考えていきたいと思います。

まず1つ目は、この場にいるWhy。
ビジョンを語る際に、相手が「聞きたい」と思っているかどうかという観点です。アップル社の創業者であるスティーブ・ジョブズについて書かれた「スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン」において、人を惹きつける法則の一つに「聞き手は“なぜ気にかける必要があるのか”と必ず自問している。まずこの問いかけに答えてあげれば、聴衆者を話に惹きこむことができる」とあります。

人はどうしても「相手は聞いてくれるもの」という前提に立ってしまうものです。特に役職者にその傾向があります。しかし、聞き手を惹きつけるためには、早い段階で「(聞き手である)部下たちが最近感じている問題意識に触れる」「部下たちが目指している思いと関連付ける」というような相手に聞く必要性を喚起するということが重要になってきます。そのためには、日ごろから部下の意見を引き出し、部下を理解し、ビジョンが部下にとって意味があるものかを考えていることが大事です。

2つ目は、この仕事に対するWhy。
「そもそも何のため」という一段上の視点からビジョンを語っているかどうかです。一方で、ただ、夢物語であっても心からは共感しにくい中で、一段上の目的を押さえ、聞き手にとって理解できる言葉に落とし込んで語っているかが大事です。先ほどのAさんの事例でも、例えば、一段上から「部署が提供している価値」に改めて触れ、その上で「○○な価値を提供する△△分野でのNo.1」というような相手が分かりやすい言葉に落とし込んで語っているところがポイントです。

3つ目は、達成することに対するWhy。
目指すべきビジョンを語るだけでなく、そのビジョンが達成した時どのような状態であるかを語っているかどうかです。それは、頭で理解、納得できる論理があるとともに、その時自分たちがどのように感じるかを、聞き手が想像できることもとても重要です。顧客から喜ばれている情景、全員で充実感に浸っている情景、これからの自分にやりがいと期待を感じている情景。そういった想像によって、聞き手である部下がワクワク出来るとさらに良いです。

ポジションがあるからこそ、改めてWhyを問う


部下にやるべきことを伝えるのではなく、部下の力を引き出すビジョンであるかどうか。人を動かし、部下の力を引き出すマネジャーは、時間が限られていたとしても、上記3つを自然に伝えていると感じます。ポジションという枠があるからこそ、見落としがちな3つのWhyについて、改めて考えてみましょう。

次回は、別の観点として、自分が納得しているかという観点から、ビジョンについて考えていきたいと思います。

 

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■プロフィール
上林 周平(kambayashi shuhei)

大阪大学人間科学部卒業。
アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。
官公庁向けのBPRコンサルティング、独立行政法人の民営化戦略立案、大規模システム開発・導入プロジェクトなどに従事。
2002年、株式会社シェイク入社。企業研修事業の立ち上げを実施。その後、商品開発責任者として、新入社員~管理職までの研修プログラム開発に従事。
2003年より、新入社員~経営層に対するファシリテーターや人事・組織面のコンサルティングを実施。
2015年より、株式会社シェイク代表取締役に就任。前年含め3年連続過去最高売上・最高益を達成。
2016年、若手からのリーダーシップを研究するLeadership Readiness Lab設立し、代表に就任。
2017年7月、「和×人材育成」をコンセプトにした和の大学株式会社を設立。
2017年9月、これからの働き方をリードすることを目的に、生産性向上やイノベーションなどを支援する株式会社NEWONEを設立。
米国CCE.Inc.認定 キャリアカウンセラー

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